【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

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役目を果たす時

92話 正しいこととは

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ローズに僕を殺す気が無かったことは知ってる
だって、ローズに人を殺す度胸なんてないから
でも、実際に僕は一度死んだ
生きながらボロボロの内臓を、死んだ血液を確かに持つことになった
人を殺したことなんて、実感したく無いだろう
だって彼女の心は幼い
臆病で、脆い
だから、壊すのは驚くほど簡単だ

「ローズ、お前に殺す意思があったかどうかなんて関係無い。僕は、確かにお前が原因で一度死んだんだ」
「私のせいじゃない!」
「お前のせいだよ。毒を盛ったのも、僕を襲ったのもお前。僕はただ自分の身を守るために力を振り絞ったんだ。ねぇ……で、誰のせいだと思う?」


全部ローズが悪いわけでは無い
あんな状況で、反動が来ることくらい理解していた僕も無茶をした
でも、大きな要因はローズである事に変わりない
だから簡単に崩せる

「違う!私は人殺しじゃ無い!」
「……ローズ、なんで人殺しは悪なのかな?」
「え………?」
「ねぇ、お前より先に人殺しになった僕に教えてよ。駄目だって知識はあっても根拠が分からない」
「だ、だって誰かを殺すって事は誰かから大切な人を引き離すって事で……」

そうだね
僕はハルにエリーと引き離された
だからハルを恨んでる、憎んでる
殺したい程に

「確かにそうだけどさ、でも自分には無関係だよね?殺した相手を大切に思ってるどこかの誰かなんて、無関係だ」
「そ、れは……」
「お前だってそう。僕を自分の為だけに蹴落として踏み台にしようとした。そのせいで僕は死んで、僕は大切な人を悲しませた。何が違う?」
「そんなの、私は知らな………」


そこでローズは言葉を飲んだ
僕の意見を肯定するようなことを言いかけたから
そう、結局は他人のことなんて無関係
綺麗な言葉を並べながら、それとは正反対のことをしてるだけ
なんと言おうと自分が一番でしかない
むしろ、そうじゃない人の方が狂ってるだろうな
僕だって、自分の為に大切な人を守る
自分の為に人を殺す
目の前にいる愚者と同じで、僕もみんなも愚かだ


「ここでは人殺しも場合によっては正当化される。でも…お前のしたことはどう頑張っても正しくならないね」
「ち、が………違う!お前と一緒にするな!この異常者!殺人鬼!ホモ!」
「……なんとでも言えばいい。でも、言葉は選べよ阿呆が」

本当になんでこいつは前世から同性愛者を異常者扱いするんだろう
別に、受け入れて欲しい訳じゃない
理解出来なくても仕方ない
僕が異性愛を理解出来ないのと同じだから
でも、趣味嗜好が違うだけでなんで貶せるのかが分からない
自分が絶対に正しいと思ってる、間違いを間違いと認めないこいつが本当に苦手だ
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