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役目を果たす時

90話 1人だけ知らない

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全ての反王室派が裁かれ、今日集まっていた貴族は約半数が消えた
でも、これで終わりでは無い
ここからは別の罪人が裁かれる時だ


「これにて、反王室派の裁判を終了する!そして……ただ今より、神子殺害の裁判を開始する!」


陛下のこの言葉でまたざわつき始めた
それもその筈
神子がこの時代にいる事は明らかにされていなかったのだから
そう、本来であれば神子はそれなりの発表があった筈だ
しかし、神子が殺されたとなれば事態は一変する
神子の発表の前に、その殺害者を裁かなければならない
こんな形になるのは仕方ないけど、それにしたって性格が悪い
だって、殺した本人達は僕らが神子だって知らないんだから


「王太子ハルジオン、聖女ローズ、前へ!」
「なっ…!陛下!どういう事ですか!?」
「そ、そうですよ!私は神子なんて会ったことも……」

「話なら壇上で聞こう!分かったら2人とも前へ!」


……陛下が怖い
なんか、怒ってるように見える

2人とも気圧されて前に出た
けど、状況が分かってないようだ
さて……どうするんだろうね、2人とも


「ハルジオン…神子殺害に心当たりは無いか」
「ありません!」
「ローズ殿も無いか」
「あ、ありませんよ!」
「そうか、それも仕方がない。お前達が殺した相手が神子だと知らなかったとしても不思議ではないな」

まぁ、僕が殺された時は僕も神子の記憶がなかったからね
2人はただ、相手が悪かったってだけ

「それは、つまり……今まで殺した相手の中に神子が居たと?しかし、私が殺した人は罪人のみで……」
「本当にそうか?」
「え………?ま、さか……」

ハルジオンの顔が青ざめた
でも、ハルは僕を殺したと思ってる
……ねぇ、ハルが殺したのがエリーだって知ってたら、今のハルに罪悪感はあった?

「で、でも陛下、私はそもそも誰も殺したことありませんよ……?」
「はて、自覚が無いのか…それとも知らぬふりをしているのか。確かにハルジオンとローズ殿の目の前で亡くなっておったのだがな」
「私とハルの目の前で……っ!う、そ……!」

ローズは僕達の入れ替わりを知ってる
つまり……2人とも、思い浮かべている神子の正体は一致している

「「カメリアが神子……?」」

2人とも声に出した
おかしいね
本来であれば、カメリアとローズは会ったこと無いのに

「な、なぜローズがカメリアのことを!?」
「そ、れは…その……」
「おや、ローズ殿は知っていたようだな。城にいたアイリス殿が、本当はカメリア殿だと。逆に…お前は知らなかったようだな、ハルジオンよ」

ハルは真っ青な顔で黙り込んだ
これで気付いた筈だ
ローズだけで無く、専属魔法士として契約が成立していたアズも僕の入れ替わりを知っていたことを

今のハル、すっごく惨めだなぁ……
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