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役目を果たす時

88話 汚れた世界

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謁見室から離れ、案内された部屋で5人で待機していた
その内2人は姿は見えないけど

僕たちが陛下と話している間に別のことをしてたらしいケイ様は、どこか疲れて見える
リース神殿の大神官様と話していたらしい

この国の神殿はだいぶ汚れている
神官の多くが、国を治めるのは神殿だと主張しているらしい
反王室派は信仰深い家柄がほとんどだ
プラント公爵家もそう
人を堕とし神を崇める、やばさで言ったら上位の家系だと言える
記憶が戻る前は僕も信仰して神様に感謝を伝えたものだ
そんな神様が、僕と話したことがある
僕達と取引をして、ある意味対等に近い存在になっている
………不思議な感覚
僕がプラント公爵家の一員としてその意思に応えていれば、神子でありながら神を冒涜する事になる
記憶が早く戻って良かった
神様が神子を必要とするのは、人間の手で世界を動かしていかなければならない、と言う考えから
だから何か問題が起きても神様は何もしない
でも、きっとそれは正しいと思う
神を崇めて支配される人生なんて価値を感じない
だから僕は神様を対等な取引相手だと思ってる


どれだけ神殿が汚れていても、どういう訳か大神官様はまともでい続けた
リース神殿の大神官様と幼少期に会ったことがある
大神官様は、神の声を届けるだけで直接干渉はしない主義だった
そのせいか他の神官からは舐められて、神殿が汚れる始末だ
信仰心の無い大神官を持った神殿なんて異質だろう
それでも淡々と役目をこなしてきた
それが本当の、神の崇拝で支配かも知れない
神の意思に従いながらも自分を持つケイ様と馬が合わないのも頷ける


「私、やっぱあの神は嫌いだな」
「どうして?」
「神のくせに人間臭いから。だってそう思わないか?私たちみたいな、世界単位で見ればちっぽけな人間に命令しなかった。対等な取引?本当にお前は神か?って思ってさ。ちっさい人間の方が態度がでかいってどうなんだろって」
「なるほど、僕はあの神様が人間みたいで良かったと思うな。だって、人間が想像するような神は………大っ嫌いだからね」

エリーの意見も分かる
神様があんなに誠実だと、傲慢な人間が気持ち悪いって感じるから
どんなに小さな存在でも対等に接する器を持った神
同族を見下す人間
……アズに会ったばかりの時に口を滑らせた「滅んでしまえば」が勢いだけの言葉ならいいけど
このままだと、それも本心になりかねない
そうはなりたく無いな
だから、早く正さないと
汚れた人達を、世界を消したくなる前に

………まぁ、たかが神子に世界を消す力なんてないけどさ
出来ても壊す程度だろうか
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