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転生した意味
73話 神の場
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急に停止した目の前の車
急ブレーキの音と、硬い何かを破壊する音
急な山道で煽り運転を食らった父の車は、ガードレールを突き破って崖から落ちていく
「え…?」
「彩芽!」
落ちていく車の中で僕は、シートベルトを外して彩芽を正面から抱きしめた
彩芽を助けるため、僕が下敷きになる様に
猛スピードで落ちてく車の中で、僕はすぐに気を失った
……でも、何故か体の感覚がある
ちょっとした浮遊感を感じた僕は、目が開けられることに気付いた
でも、目の前の光景はあまりにも異常だった
目が眩むほど眩しい、天も地も無い空間
目の前に唯一あるのは現実離れした大きさの大樹
銀の幹と枝、そして青々とした葉
その根本には、床に着くほど長い銀髪と異様なまでに大きな緑の光る瞳の美しく恐ろしい誰かがいた
人にしか見えないけど、本能が『あれは人では無い』と判断する
“来たか、人の子らよ”
『人の子ら』
その誰かは複数人を呼んだ
僕以外にも誰かいるのかと見渡そうとすると、すぐ隣に彩芽がいた
“其方らは既に死んだ身、故に我が此処に呼んだ”
「じゃあつまり、私たちはあの世的な場所に連れてこられたって訳ですか?」
“否、ここは死者の場では無い。ここは神の場である”
僕たちは死んだ
僕は彩芽を守れなかったみたいだ
でも冷静になったら分かる事だ
車があんなとこから落ちて、潰れるだけな訳が無い
爆発でもしたんだろうな
“其方らの望みを、我は知る。そして我は其れを叶え得る”
僕たちの望み…
そんなもの、キリがない程に沢山ある
でも僕の一番の望みは……
「私の望みは、生まれ変わっても翼樹のそばにいる事です。あなたはそれを叶えられるんですか?」
彩芽が迷う事なく告げた望み
それは僕が望むことと一致していた
“可能だ。と言うよりかは、それが我の望むことと一致している、と言えるだろう”
「僕たちに、何かして欲しい事があっての取引…みたいなものですか」
“ああ、だが簡単な事では無い。其方らには拒否権がある事を理解した上で、我の望みに応えて貰いたい”
拒否することも出来る程に難しいこと
でもそれを聞けば僕たちは生まれ変わっても一緒にいられる
条件によってはこれ以上ない恩恵かもしれない
“我に代わり、我の手の者として、役割を果たすのであれば、其れを叶えよう”
「何を…すればいいんですか?」
“神界の裏切り者、妖精ドライアドの始末。そして、その者によって不正渡界する者の処分である”
………
『始末』に『処分』
それは殺せと言う意味だ
明言しなくても、今まで感じることの無かった殺気で理解した
“無論、役目を果たすその時まで、誓いを破らぬよう呪いをかける”
「呪い…?」
“不死の呪いだ。相手はとても手強い。故に死の苦痛を味わいながらも戦うこととなる。そしてもう一つ、神の場に呼んだ時点で生前の記憶は継承される事が確定している”
つまり、死の苦痛を味わいながら彩芽と一緒にいるか
あるいは彩芽のいない世界で前世の記憶を持ったまま生きるか
僕の答えはすぐに決まった
そしてそれは彩芽も同じようだ
“成程、それを選んで頂けるか。ではよろしい、其方らは新たなる『神子』として次の生を歩むといい。そして我からの贈り物にこの神木の枝をやろう”
神子として
その言葉で分かった
この人は神様なんだ
この神様の代理として、裏切り者を処さないといけないのだと
神様は大樹…御神木から枝分かれしている枝を折り、それを人の形にした
“此れらは妖精『ユグドラシル』。其方らに仕え、力となる物だ。さぁ、それでは新たなる器へと行くが良い。其方らの働きに期待しているぞ”
その言葉を最後に、全ての感覚を失った
そして僕はカメリアに、彩芽はアイリスに転生した
急ブレーキの音と、硬い何かを破壊する音
急な山道で煽り運転を食らった父の車は、ガードレールを突き破って崖から落ちていく
「え…?」
「彩芽!」
落ちていく車の中で僕は、シートベルトを外して彩芽を正面から抱きしめた
彩芽を助けるため、僕が下敷きになる様に
猛スピードで落ちてく車の中で、僕はすぐに気を失った
……でも、何故か体の感覚がある
ちょっとした浮遊感を感じた僕は、目が開けられることに気付いた
でも、目の前の光景はあまりにも異常だった
目が眩むほど眩しい、天も地も無い空間
目の前に唯一あるのは現実離れした大きさの大樹
銀の幹と枝、そして青々とした葉
その根本には、床に着くほど長い銀髪と異様なまでに大きな緑の光る瞳の美しく恐ろしい誰かがいた
人にしか見えないけど、本能が『あれは人では無い』と判断する
“来たか、人の子らよ”
『人の子ら』
その誰かは複数人を呼んだ
僕以外にも誰かいるのかと見渡そうとすると、すぐ隣に彩芽がいた
“其方らは既に死んだ身、故に我が此処に呼んだ”
「じゃあつまり、私たちはあの世的な場所に連れてこられたって訳ですか?」
“否、ここは死者の場では無い。ここは神の場である”
僕たちは死んだ
僕は彩芽を守れなかったみたいだ
でも冷静になったら分かる事だ
車があんなとこから落ちて、潰れるだけな訳が無い
爆発でもしたんだろうな
“其方らの望みを、我は知る。そして我は其れを叶え得る”
僕たちの望み…
そんなもの、キリがない程に沢山ある
でも僕の一番の望みは……
「私の望みは、生まれ変わっても翼樹のそばにいる事です。あなたはそれを叶えられるんですか?」
彩芽が迷う事なく告げた望み
それは僕が望むことと一致していた
“可能だ。と言うよりかは、それが我の望むことと一致している、と言えるだろう”
「僕たちに、何かして欲しい事があっての取引…みたいなものですか」
“ああ、だが簡単な事では無い。其方らには拒否権がある事を理解した上で、我の望みに応えて貰いたい”
拒否することも出来る程に難しいこと
でもそれを聞けば僕たちは生まれ変わっても一緒にいられる
条件によってはこれ以上ない恩恵かもしれない
“我に代わり、我の手の者として、役割を果たすのであれば、其れを叶えよう”
「何を…すればいいんですか?」
“神界の裏切り者、妖精ドライアドの始末。そして、その者によって不正渡界する者の処分である”
………
『始末』に『処分』
それは殺せと言う意味だ
明言しなくても、今まで感じることの無かった殺気で理解した
“無論、役目を果たすその時まで、誓いを破らぬよう呪いをかける”
「呪い…?」
“不死の呪いだ。相手はとても手強い。故に死の苦痛を味わいながらも戦うこととなる。そしてもう一つ、神の場に呼んだ時点で生前の記憶は継承される事が確定している”
つまり、死の苦痛を味わいながら彩芽と一緒にいるか
あるいは彩芽のいない世界で前世の記憶を持ったまま生きるか
僕の答えはすぐに決まった
そしてそれは彩芽も同じようだ
“成程、それを選んで頂けるか。ではよろしい、其方らは新たなる『神子』として次の生を歩むといい。そして我からの贈り物にこの神木の枝をやろう”
神子として
その言葉で分かった
この人は神様なんだ
この神様の代理として、裏切り者を処さないといけないのだと
神様は大樹…御神木から枝分かれしている枝を折り、それを人の形にした
“此れらは妖精『ユグドラシル』。其方らに仕え、力となる物だ。さぁ、それでは新たなる器へと行くが良い。其方らの働きに期待しているぞ”
その言葉を最後に、全ての感覚を失った
そして僕はカメリアに、彩芽はアイリスに転生した
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