【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

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転生した意味

71話 不朽の悪意

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久しぶりの外
グドにつられてやってきた四季の園は、名前の通りにその場に四季が揃っていた
満開の桜と背の高い向日葵、香る金木犀に……

「あ、椿カメリア菖蒲アイリスだ」
「ここは歴代神子を象徴する花が咲く園なんだ。季節が見事にバラバラで『四季の園』なんて呼ばれてる」
「そうな……あれ、アイリスって………」

歴代神子の中にいたのか
それとも、姉であるアイリスも……

「あ、そうだ!なぁカメリア、不朽の園も見てみないか!?」
「不朽の園?」

グドに言われるがまま、すぐそこに見える温室に入った
温室にしては外の光が入らないようになっている不思議な部屋
入ってみると、真っ暗な中に無数の光が見えた
光っているのは…花?
地面いっぱいに咲いていて、道が無い

「綺麗なところだろ?ここは綺麗なワリに性格が悪い場所なんだ」
「性格が悪い?」
「そう、人間は必要な時に悪の道を進まないといけない。悪意に慣れていない人間は生き残れない。だから、この枯れない花が咲く部屋で、花を踏みつけて向こうの扉まで行くんだ。ここは覚悟と悪意を試す場所さ」

花を踏みつける…
それで悪意を持つことに慣れる?
確かに、こんなに美しい花を踏みつけるのは心苦しい
でも、もしその扉の先に大切な何かがあったら……
僕ならその時は、迷わずにここを通るだろう
結局は花と宝を天秤にかけること
……僕のこの答えは、いいものと言えるだろうか

「カメリア、花を踏む事は悪い事じゃ無い。むしろ躊躇するのは心が弱いことでもあり、優しいことでもある。花だって生きてるんだから、踏まれたら可愛そうだもんな」
「花を踏む事は、人を傷つけることと同じ。例えそれが、不死身かれないとしても……苦痛を与える事になる。でもそれが大切な何かを守るためなら?それを守るために、目的のためなら、人を殺す事だって今の僕は出来る」
「なら進め」

…僕は花を踏んで向こうの扉に向かった
一歩一歩が重かったけど、それでも僕はたどり着けた
罪悪感はある
後悔もある
でも、どれも過ぎたことのようだ

ドアノブに手をかけた
でも、開かない
鍵がかかってる訳じゃない…
まさか、この扉って……!

「ただの装飾だよ。だから言ったろ?性格が悪いって」
「グド!」
「怒らないでよ。今回は俺が先に知ってた。でも毎回そうとは限らないだろ?」

グドは躊躇いもなく真っ直ぐ僕のとこまで歩いた
足元も見ないで、真っ直ぐ僕だけを見て

「俺は、お前がいるとこなら死体の山だって歩いてやるさ。ってまぁ飛べるんだけどな」
「そこにいる僕が偽物だったらどうするんだ…」
「それでも行くよ。お前が自分を悪だと嘆くなら、俺はそれ以上に悪になるさ」

グドはそう言って僕にそっと口付けた
あぁ、そうだ
グドは僕の為に目を交換するような奴だった
僕に、自分を守るために人を殺せと剣をくれるような奴だった
は……狂ってる
そんな狂ってるグドに依存してる僕も、相当悪い奴だな

僕はゲームの悪女じゃないけど、悪者になってみるのも悪くはない
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