【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

転生した意味

64話 姉を殺した『危険性』

濡れた服を着替え、部屋の中にある数少ない家具である椅子に座り、今はグドが僕の髪の毛を切ってくれている
もうアイリスとして過ごすことは無いだろうし、思い切って短くすることにした
眠ってる間に体の成長は進んで、流石にもう女装は出来ないししてもバレるだろう

「そういえば、僕はどれくらい眠ってたの？」
「半年以上！その間にハルジオンとローズが婚約して、即位の準備も進んでる。王様がハルジオンの即位を先延ばしにしてるからまだ詳しいことは分かんないけどさ」

は、半年……
そんなに長い間眠ってたんだ……

それに、ハルとローズが婚約したんだ
正直、一番疑うべき相手になったハルに対しての想いは既に無くなってる
僕がもう死んだことになってるなら、アイリス・リー・プラントとして生きることが無いのなら、ラディクス王国がどうなろうと関係は無い
気になるとしたら弟達と使用人達
アズ、リージュ、ジル、ガーベラ、リンドー、ロック
僕に優しくしてくれた人や僕を助けてくれた人達の安否が気になる
特にジル
彼女は僕の唯一の侍女だから、何かしら巻き込んでてもおかしくない
アズとリージュは僕に関わっていたとはいえ王子
大丈夫だとは思うけど………

「なぁカメリア、お前はもうハルジオンのことが好きじゃ無いよな？」
「そうだよ」
「……ならもう、教えていいかもな」

グドは悲しいような、悔しいような表情の後に真剣な面持ちになった
僕がハルを好きだと出来ない話
一体何なんだろう

「お前も気になってたよな、ハルジオンとアイリスのこと」
「それって…！」
「なんであいつがアイリスを毛嫌いしてるか。俺はまだお前達が幼い頃から騎士としてあいつの近くにいたからな、俺はよく知ってるんだ」

ハルがアイリスを嫌う理由
アイリスが悪女と呼ばれる前から、ハルはずっと……
何回も考えたけど僕には分からなかったことをグドは知ってる

「なんで…ハルはアイリスが嫌いなの？」
「………アイリスが、お前とあいつを遠ざけようとしてたからだ」
「ハルと僕を？なんで………」

グドは所々言葉に詰まってる
本当は言いたく無いのかも知れない
それでも、僕は知りたい
知らないといけない

「アイリスは、ハルジオンの危険性に気付いてたみたい。目的の為なら手段を選ばない、そんな危険性に。結果的にその危険に殺されたのがアイリスなんだけどさ」
「だから、僕をハルから守ろうとしたってこと？でもハルの危険性に殺されたって何？アイリスはあの事故で…………まさか、違うよね？」

グドの言葉の意味
アイリスはハルジオンの危険性に殺された
その言葉が意味することは……

「カメリア、落ち着いて聞いて。アイリスが死んだ事故は、馬車の転落は仕組まれた事だったんだ。……ハルジオンが仕組んだ、事だったんだ」