【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

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悪役と主人公

58話 パジャマパーティーの始まり

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夜遅く、満月が雲の隙間から覗いている
そんな日に僕は、薄紅のパジャマでローズの部屋に来ている
フリルで肩幅を誤魔化し、コルセットが無い分ウエストを大きなリボンで締めている
柔らかい生地や派手な装飾がない事を除けばあまりパジャマっぽくはない

「アイリスもやっぱり敵ながら可愛いわ…」
「流石にローズ様には負けますよ」

顔はアイリスとそっくりだとしても、ちゃんと男ではあるし
『可愛い』なんて言葉は線の細い小柄で人形みたいなローズの方が似合うだろう
中身は別として
ローズはスカートの裾と手首と二の腕辺りを絞った白に近い水色のパジャマを着ている
髪の毛を下ろしてシンプルな服装をしているとゲームの中のヒロインそのままだ

「様なんてつけなくていいの。ローズって呼び捨てにして?」
「わ、わかりました。ローズさ……ローズ」

……対等な関係だったら気さくで関わりやすかったのかな
ちゃんとルールを守り、必要以上に周りから愛されようとしなければ普通の少女だ
それがゲームの中のローズとの違い
なんで、それに気付かないんだろうか

「それで、ゲームの続編のことだっけ?いいよ!教えたげる!……あ、でも…ネタバレは避けた方がいいかな?」
「気にしないで、全て教えてください」
「いいの!?ふふっ、じゃあ全部教えるね?あ、あとお茶とお菓子も自由に食べてね」

ベッドの上に飲み物とお菓子なんて、本当にするとは思わなかった
この世界にはペットボトルなんてものは無いしどうやってベッドでお茶を飲むんだと思ったら、コの字になってる台でベッドをクリップで挟むように設置するなんて
流石にお城のベッドは大き過ぎで病院のデスク付きベッドみたいにはできない
けど、こんな無理矢理平な場所を作るのはもはや天才では?
なんて思った

横になった台の上には甘いホットミルクとマドレーヌ、それとココアクッキーが並べられていた
勧められるままクッキーを一枚食べてみた
ソフトクッキーみたいに軽やかで、ホットミルクやマドレーヌと違ってほろ苦い
甘すぎるラインナップかと思ったけどなかなかに丁度いいかも知れない

「美味しい…」
「でしょ!?それ、私の自信作なの!」
「え、もしかしてローズが作ったんですか?」
「えへへ」

マドレーヌはシェフと作り、クッキーは完全1人で作ったらしい
ホットミルクも自身の魔法で冷めにくくしてるとか
なんでこんなところで高い技術と凄い発想が出てくるんだか
そしてお菓子をつまみながら、ローズは楽しげに続編のあらすじを語り始めた
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