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悪役と主人公

57話 交換条件

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本を戻し、何も無かったかのようにその場を離れた
だけど、正直焦りと動揺が隠せない
それは一つの可能性のせい
有り得なくはない可能性

このゲームは続編の告知が出ていた
僕はそれが実装される前に死んだから「続編がある」という情報を知っているだけに過ぎない
その内容までは知らないけど、この物語に続きがあるのならそれは……


「あれ?アイリスじゃない!」
「っ聖女様…ここでは静かにしてください」

そうだ、彼女ならゲームの続きを知ってるかも知れない
どうにか聞き出せないだろうか
最悪な可能性を潰すためにも

「ねぇアイリス、少し話したいことがあるの。私の部屋に来てくれる?」
「分かりました。私もちょうど聞きたいことがあったので」


グドと共にローズの部屋まで来た
向かい合うようにソファに腰掛け、頭の中を整理する
そして僕が最初に話題を出した

「聖女様…、貴女はこのゲームの続きを知っていますか?」
「ええ、もちろん!何周もしたゲームだもの!でもそれがどうしたの?」
「その内容を教えてもらうことは出来ますか?私は実装アプデ前に死んだので全く知らないんです」
「えぇ…もったいないわ。続編の内容を知らないなんて!」

煽るような表情と物言い
タダでは教えてくれなさそうだ
「ふーん」「へーえ」「そーお」と見下した反応を見せ続けてる

「ま、いいわ!教えたげる!そのかわり…」
「そのかわり?」
「パジャマパーティーをしたいわ!私、大きなベッドの上で可愛いパジャマ着てでオタク話しをするのに憧れてたの!だから、その時にお話ししましょ?」

思ってたものとは違う要求
もっと本編に関わることかと思っていたが、だいぶ気の抜けた要求をされた
まぁ、それくらいなら大丈夫かな

「わ、分かりました。」
「やったぁ!それじゃあ今夜、可愛いパジャマでこの部屋に来てね!あ、そこの目隠しさんは連れてきちゃだめよ?連れてくるなら女の子じゃなきゃだめ、いいわね?」

つまりは女子会…
そこに僕が…男がいる
バレた時の申し訳なさが今から込み上げてくるけど、今回は仕方ないよね
単独行動は避けるべきとは言えゲームに無関係のジルを連れては来れない
今回はグドもいない
僕がなんとかしないと

「そういえば聖女様も何か話があるのでは?」
「あー、それも後で話すわ。それじゃあ今からお茶とスイーツの準備をしたいからいったんバイバイ!」


慌しく部屋を追い出された
何か裏があるかもしれないし、何もないかもしれない
少なくとも僕が楽しめる時間にならないことは確かだ
敵のところに無防備な格好パジャマで単身行くなんて、不安しか無い
とりあえずこの旨をジルに伝え、適当な服を選んで貰った
「何をしてるんですか…」と呆れていたけどそれもそうだろう
ごめん、ジル
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