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悪役と主人公

56話 白い本の黒いページ

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あれから時間は進んで、だいぶ暖かい季節になってきた
全てかき消しそうな雨音の中、僕は書庫に来ていた
本当なら剣の特訓をしてる時間だけど、流石にこの天気にする訳には行かない
って、周りに反対された
そういえば、ゲームでアイリスが処刑される時もこんな土砂降りだったっけ
時期的にも一致してるし、ゲーム通りに進行していたら…僕がゲームの知識を知らなかったら今日、この瞬間に死んでいたかもしれない
やっぱり雨は好きになれそうに無いな
ユグド元騎士団長が処刑されるキッカケになった襲撃の時も、血を洗い流して絶叫を掻き消すように酷い雨が降ってた

「…雨、止まないかな」

僕の小さな呟きも、外の轟音の中に消えた



ここはお城なだけあって色々な本がある
僕はここでひっそりと、城の外で生きてくための術を調べていた
稼ぎ方に家事炊事、知ってることと知らないことと知っていても無意味なことが混じっているから調べるのが少し難しい
流石にこの内容の本を部屋に持っていくのはダメだろうから、ここで少しでも覚えないと

とは言えここは僕以外の人ももちろん来る
あまり見過ぎても怪しまれるよね
人が増えてきてすぐに本をしまった
他の本も見てみようと少し歩いてみる
ふと、書庫の一番角、一番下段にあるタイトルの無い白い本が目に入った
手に取りページをめくってみると、最初に書かれている一言…恐らくタイトルだと思われるものが見えた

「…『神に選ばれしもの』?」

またページをめくってみると、そこには聖女に関わることが書かれていた

聖女
神より『再生』の力を授かりしもの
清らかなる精神を持ち、神々と同じ色を持ち、強い行動力を持つ乙女
聖女の『再生』の力は底知れず、祈るだけで天を泣かせるとも触れるだけで癒すとも言われている
戦争に悪用された例も有り、王宮と教会のいずれかでの保護が義務付けられた
始まりの聖女と呼ばれた1代目の聖女の偉業は数知れず………

ここから先は過去の聖女の経歴が長々と書かれている
途中まで読み、もういいかと本を閉じようとしたその時、最後の方のページが真っ黒な事に気付いた
そのページを開くとそこには
『伝説上の存在・神子について』
と書いてあった
興味本位で読んでみた

神子
その存在に関する情報は絶
御伽噺の存在として描かれていることがほとんどだが、教会の地下にある最古の神殿にて実在した情報有り
数千年前の神託の書にて『神子』に関する記述があり、その特徴も複数挙げられている
闇に飲まれることのない精神を持ち、最高神と同じ色を持ち、運命を覆すほどの力を持つ、神に最も近い存在
数千年前の神子もその力を持って滅びゆく世界を蘇生したと言われている
そしてその傍らには、神より使わされた……

僕は衝動的にここで本を閉じた
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