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悪役と主人公

55話 時間は進む

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部屋に戻り、入浴を済ませた
……?
なんだろう、いつも着ているパジャマなのに袖が突っ張る

「カメリア、毒で眠ってる間に魔力がブレて少しだけ体が成長しちゃったんだよねー」
「そう…なんだ。でも相変わらずグドと同じくらいの背丈だけど?」
「そりゃあ、おいらがカメリアに合わせてるもん」

なるほど、それで中高生くらいに見えるのか
あ、もしかして喉になにかつっかえてる感じがするのも…
多分、一瞬だけ声変わりがしたのかも
今はもう魔力が安定してるからその内なんとかなるかな

「言っとくけど!魔力の影響で体の変化がほとんど無いのは完全に止まってる訳じゃ無いからな!かなぁり遅くなってるだけで、ほっといても変声期は必ず来るからな」
「そ、そうなんだ。それじゃあ僕がずっとアイリスのフリをするのはどの道無理ってことなんだね」

だとしたら、これから先どうしよう…
僕はもう死ぬ気は無い
沢山の人に守られて来たからには、その想いを踏み躙るわけには行かないから
公爵や反王室派の悪行を暴いた後のことは何も考えていない
ローズがあれならゲーム進行を気にする必要は無いだろう
僕が……カメリアとして生きる選択肢は、もしかしたらどこかにあるのかな?
お城には居れなくても、どこかに逃げてひっそりと生きていくこともできるかもしれない……?

「グド、もし……全てがなんとかなったら、僕と一緒にどこか静かなところに行かない?」
「おいらはずっとカメリアのそばにいるけど、お前は本当にそれでいいのか?ここにはアズもリージュも、他にもお前の大切な人たちがいるだろ?」

僕もみんなから離れ難い
それでも僕は身分を偽ってここにいることになる
アイリスとしてしかここには居れないから仕方がないだろう

「それでも…生きていればどこかで会えるかもしれないから。ちゃんと僕の身は僕が守るから大丈夫なんだよ」

グドは他の誰でも無い、僕が傷つくことに人一倍敏感だ
ちゃんと自分を守ることがグドのためになるのなら、僕はそれに従う

「そっかぁ…。うん、わかったよ!きっといつか、一緒に逃げような!」

グドの心からの笑顔が落ち着く
活発で明るい、僕とは正反対な僕だけの妖精
きっと彼がいなかったら僕はこんなに未来を見えなかったかもしれない
まだ自分自身の目標は無いけど、次こそはちゃんと大人になりたい
前世の失った時間を、この世界で過ごせたら…
それが、幸せなものだったらいいな

あ、そうだ
ここから出てからの目標、見つけた

アイリスを探そう
生きてても死んでても誰よりも早く見つけたいな
もちろん生きてるのが一番かもしれない
けど、もし死んでたらお墓を作ってあげたい

僕の人生、これからどうなるんだろ
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