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悪役と主人公

54話 新たな兵器

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ローズが部屋を出てから、僕はアズに紙袋を渡した
ずっしりと重たい袋の中身は、公爵から貰った毒の瓶だ
小瓶が何本か入った紙袋
僕は全ての小瓶を渡した
複数ある内の一つでも違う物だとなかなかに厄介だからだ

アズは昨日、僕に毒瓶を全て渡すよう要求してきた
毒の種類と効果を特定することが目的だ
公爵が毒を入手した時の商人との取引書に、名称は書かれていなかった
その代わりに暗号のようなマークが書いてあり、僕たちには全く分からない
オーダーメイドやオリジナルであれば余計に分からないだろう
しかし、アズは魔法だけで無く薬品にも詳しい
成分を調べれば効果は大体わかるそうだ


アズが紙袋を持って部屋を後にした
ようやくシャワーを浴びることが出来る
本当は入浴を早く済ませて、アズを待つつもりだった
が、ローズのせいで予定が狂ってしまった
やっぱり出来るだけ関わりたく無いな……



あっという間に日は暮れ、夕食時になった
ストレスのせいだろうか
今はあまり食事が喉を通りそうにない
決して食欲が無いわけではないのだが、何故だろうか

食事の席に付き、周りの人達に悟られない様なんとか飲み込む
気温が変わりやすい季節だから風邪をひいたのかもしれない
後でジルに診てもらおう


食事を終え、片付け始めた時
アズが真剣な面持ちで話し始めた

「姉上、先程の物の特定に時間がかかりそうです」

先程の物、というのは毒の事だろう

「そうですか」
「恐らく中身は全て同じだと思われます。が、色々な方法で調べてみても、全てに反応してしまいました」
「複数が混ざっている、と?」
「………そこが問題です」

アズは眉間にシワを寄せ、手で口元を隠した
問題というのはなんだろうか
毒性のある物がいくつも混ざっていれば、それは大きな脅威だ
それと同時に、強大な兵器ともなり得る
可能性はあるだろう

「問題とは?」
「本来であれば互いの効果を打ち消すはずの物が同時に入っていました。どちらも単体でも強い効果があるのに、何故…?」

中和する物同士が入っている?
それじゃあ、ある意味は無いのでは?

「それに…反応があったと言うことはどちらも機能していると言うこと。中和されるものがされずに残る調合方法がある筈です。これからはそれを重点的に調べていくつもりです」

この世界にとっても未知の出来事が起こっている
変わり過ぎたこの世界はどうなるのだろうか
全く知らない未来に行くのか、ゲームのようにメンテナンスでバグ修正が行われるのか
後者は困る
今までの頑張り全てを、勝手に変えられたくは無い
また、新たなバグを思いながら、ゆっくりと部屋に戻るしかなかった
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