【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

文字の大きさ
上 下
50 / 161
悪役と主人公

50話 ずっとそばに

しおりを挟む
ユグド元騎士団長はハルジオンと同じくらいの年齢に見えて、グドは中学生程に見える
それ以外は完全一致だった

「ぐ、ど……?お前…ほん、と、に……」
「うん。隠しててごめんね?おいらね、ホントはいつだってそばにいたんだ。騎士になって、カメリアをそばで守り続けようって、おいらが生まれたその時から思ってたんだ」

ずっと僕のせいで死んでしまったと思っていた人物が目の前にいると言う事実を知り、涙が溢れてしまった
また会えた喜びか、膨大な苦痛を与えてしまった自分への怒りか、また別の何かかはわからないけど
グドは俯き涙する僕の涙をそっと拭った

「お前が剣を握って良かった。あの時、おいらからの贈り物を受け取ってくれて良かった。おいらがそばにいてやれなかった時も、お前を守れていたかな?」
「もちろん…。もちろんだよ……!」

僕と大差無い体格のグドを真正面から抱きしめた
僕はグドの肩に顔を埋めて泣いた
僕の背中をポンポンと叩くグドの手は温かく、ちゃんと今、ここに生きているのだと感じた


「なぁ、そのままでいいから聞いてくれ。おいらがお前に剣を教えようと思ったのも、お前に剣をあげたのも、お前に強くなって欲しいからじゃ無いんだ。お前にな、自分自身を守れる様になって欲しいからなんだ。どんなに苦しくても、生きる希望が無くても、お前が幸せになるまで生きていて欲しいから。もっと楽しい未来を望んで欲しいから。だからお前に生き残る術を与えたかったんだ」


『自分自身を守る為』
そんなこと、望んでなどいなかった
ただ、僕に優しくしてくれた人を守りたい一心で剣を振り続けていた
でもグドは違った
僕に幸せになって欲しいと
まだ、この温もりの中で生きたいと思っていいのだと感じた
本当はもう気が付いていたんだ
今の僕には死を受け入れることは出来ないのだと
少しずつ変わっていく自分自身を、ようやく受け入れる事ができ始めたのかな

「……ねぇ、グド」

僕の心が読めるグドは、僕が何を言おうとしているか分かっているだろう
それでもちゃんと言葉にして伝えたい言葉
いつも思っていることと、今ようやく思えたこと

「今までずっとありがとう。これからも僕のそばにいて欲しいな」
「もっちろん!そんな事当たり前なんだよなぁ!」
「うわっ!」

満面の笑みでグドは僕に飛び付いてきた
その勢いに負け、僕とグドはそのまま2人して倒れてしまった

「っ!あははっ!」
「ちょ、グド!僕は今安静にしなきゃなんだって!」

なんて言いながらも僕も無邪気に笑っていた
こんな風に笑う幸せな時間を過ごす事は、もう怖く無いんだと
心が軽くなっていた
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト

しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。 飛竜騎士団率いる悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治を目指すこと、そして敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。 前世の記憶『予知』のもと、目的達成のためグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後、少しずつ歴史は歪曲しグレイの予知からズレはじめる…… *主人公の股緩め、登場キャラ貞操観念低め、性癖尖り目、ピュア成分低めです。苦手な方はご注意ください。 *他サイト様にも投稿している作品です。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

処理中です...