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悪役と主人公
47話 不快な来客
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恐怖に震えながらも、もっと自分に力を付けなければと考えた僕はベッドから出て顔を洗った
先程部屋に来てくれたリージュにも心配をかけてしまったようだ
せめて自分のことは自分で何とか出来るようにならないと、この先もっとたくさんの人に迷惑をかけるだろう
完全に毒が消えたら心も体ももっと鍛えようと決心した
「お嬢様、少なくともあと2週間は絶対安静ですから」
「あ、はい……」
心の内を見透かされたようにジルに圧をかけられてしまった
とはいえ、2週間は僕にとって長い
ゲーム内でアイリスが処刑されるのはヒロインが来てから…つまりゲーム開始からたったの1ヶ月
それまでにやりたい事を全てするのは困難を極めるどころでは無い
1番の目標であった公爵への復讐も、一年でたったの一度もここに来ていないのだから最難関と言える
そして、僕と同じ元・プレイヤーと思われるヒロインを止める事も新たな目標となった
たった一度の顔合わせで理解った
ゲーム内のヒロインと違って、危ない存在だと
かなり積極的で自己中心的
周りの見えない者が未来の王族になどなってはならないだろう
それに、
「それが、僕に課せられた役目だったような………」
「お嬢様?」
「え、あ、ごめん独り言」
「左様ですか。ところで…かなり不快な来客のようですが」
低いトーンで、鋭い目付きで扉を睨むジル
その直後にドンドンと大きな音が聞こえた
随分と乱暴なノックだが、ジルが不快と感じる相手とは一体だれだろうか
ジルが渋々と扉に向かった
が、名乗りもせずに扉の向こうの客は勢いよく扉を開けて部屋へと入った
「失礼しまーす」
「なっ………貴女は!」
「不躾ながら聖女様、名乗りもせず、許可も得ていないにも関わらず勝手に入室するのは無礼では?」
ジルの注意を無視してズカズカとベッドの端に座る僕に近づいたのはヒロイン、ローズだ
鏡のように光を映す長い銀の髪を高い場所でふたつに束ねている
ゲームで見た、美しく愛らしくしおらしい姿とは随分と違って見える
「アイリス様以外はこの部屋から出てってくれる?2人でお話ししたいの」
「………いえ、ジルだけ部屋を出てください。グドは私の元に」
「かしこまりました」
ジルは疑問も持たずに部屋を後にした
グドは僕の言葉の意味を理解しているようだ
「あら、いいのですか?あなたにとっても聞かれたらマズいと思うのだけれど」
「ええ、大丈夫だからここに置いたのですよ」
ベッドから立ち上がり、まだ重い体をソファまで持って行った
極力関わりたく無い相手だが、避けて通る事は出来ないだろうとある程度覚悟はしていた
が、なかなかに面倒な事になりそうだ
まぁ…相手が馬鹿なら少しはこちらに理があるかも知れないけど
ここからの数分が、何時間とも錯覚する程に厄介ものだと今の僕は知らない
先程部屋に来てくれたリージュにも心配をかけてしまったようだ
せめて自分のことは自分で何とか出来るようにならないと、この先もっとたくさんの人に迷惑をかけるだろう
完全に毒が消えたら心も体ももっと鍛えようと決心した
「お嬢様、少なくともあと2週間は絶対安静ですから」
「あ、はい……」
心の内を見透かされたようにジルに圧をかけられてしまった
とはいえ、2週間は僕にとって長い
ゲーム内でアイリスが処刑されるのはヒロインが来てから…つまりゲーム開始からたったの1ヶ月
それまでにやりたい事を全てするのは困難を極めるどころでは無い
1番の目標であった公爵への復讐も、一年でたったの一度もここに来ていないのだから最難関と言える
そして、僕と同じ元・プレイヤーと思われるヒロインを止める事も新たな目標となった
たった一度の顔合わせで理解った
ゲーム内のヒロインと違って、危ない存在だと
かなり積極的で自己中心的
周りの見えない者が未来の王族になどなってはならないだろう
それに、
「それが、僕に課せられた役目だったような………」
「お嬢様?」
「え、あ、ごめん独り言」
「左様ですか。ところで…かなり不快な来客のようですが」
低いトーンで、鋭い目付きで扉を睨むジル
その直後にドンドンと大きな音が聞こえた
随分と乱暴なノックだが、ジルが不快と感じる相手とは一体だれだろうか
ジルが渋々と扉に向かった
が、名乗りもせずに扉の向こうの客は勢いよく扉を開けて部屋へと入った
「失礼しまーす」
「なっ………貴女は!」
「不躾ながら聖女様、名乗りもせず、許可も得ていないにも関わらず勝手に入室するのは無礼では?」
ジルの注意を無視してズカズカとベッドの端に座る僕に近づいたのはヒロイン、ローズだ
鏡のように光を映す長い銀の髪を高い場所でふたつに束ねている
ゲームで見た、美しく愛らしくしおらしい姿とは随分と違って見える
「アイリス様以外はこの部屋から出てってくれる?2人でお話ししたいの」
「………いえ、ジルだけ部屋を出てください。グドは私の元に」
「かしこまりました」
ジルは疑問も持たずに部屋を後にした
グドは僕の言葉の意味を理解しているようだ
「あら、いいのですか?あなたにとっても聞かれたらマズいと思うのだけれど」
「ええ、大丈夫だからここに置いたのですよ」
ベッドから立ち上がり、まだ重い体をソファまで持って行った
極力関わりたく無い相手だが、避けて通る事は出来ないだろうとある程度覚悟はしていた
が、なかなかに面倒な事になりそうだ
まぁ…相手が馬鹿なら少しはこちらに理があるかも知れないけど
ここからの数分が、何時間とも錯覚する程に厄介ものだと今の僕は知らない
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