【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

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来てしまったゲームスタート

45話 新たな恐怖

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グドが部屋を出て、僕の周りは静かになった
広い部屋にたった一人で横わる
それがここまで寂しくなるなんて、僕も変わったものだ
少し前までは一人が当たり前だったのに

数分経って、足音が聞こえてきた
静かな二人の足音
早歩きか小走りか、早いテンポで鳴っている

慌しく開いた扉から入って来たのはアズだ
グドも後を続いて戻ってきた


「アズ様?そんなに慌ててどう………」
「った……。良かった……!」


焦りを隠さずに僕を抱きしめたアズの肩と声は震えていた
ゲームで見た印象的な冷静さは一片も無く、また、それほどまでに僕を心配してくれたんだという実感に大きな安心感があった
それに、どこかくすぐったいような………
アズはそっと離れると、息を整えてから静かに事の説明を始めた


「……正直に言います。今回は色々な事が重なって助かった、言わば奇跡です。ワインを飲んだ量、私が掛けた防護魔法、それとグドに聞いた事ですけど…」
「カメリアには特殊な加護が付けられてたんだ。たぶん、それが無ければたったの一口でも直ぐに倒れていたよ」
「そう………」


確かに僕は死にかけたんだ
それも人為的に
狙いが本当に僕かも、誰がこんな事をしたのかも分からないままだ
……ハルジオンは違う
グドに教えられた魔法の根源であるハルジオン
僕はまだ彼の方を信じていた

そう、信じて

どこかで考えが揺らいだ
確かに彼は優しい
昔から僕に優しくしてくれた
でも、僕は知らない
ハルがアイリスに優しくしているところを見た事が無い
………そうだ
なんで僕は分からなかったんだろう
理由がなんであれ、ハルは一度だって僕よりアイリスを優先した事なんて無いんだ
2人の間に何かあったのであれば、ハルがアイリスを殺したい理由があるのなら有り得てしまうのだ

まるで蓋をされていたかのように思い浮かびすらしなかった思考が、脳内を光の速度で走った
僕の、ハルジオンに対するこの思いすらもゲームの仕様だったのだろうか


「カメリア?顔色が良くありませんが…。まだ毒が抜け切っていないのでしょうか?」
「違う、大丈夫。ただ、怖いだけだから…」
「っ…。直ぐにこの件は解決させます。だから安心してください」


震えが止まらない僕に優しくしてくれるアズ
でも、本当に怖いのは死にかけた事ではない

『知らず知らずの間に、僕の思考すらもゲームに乗っ取られてしまっていたのかも知れない』

出てしまったその可能性が、現状何よりも僕の恐怖心を煽っている
もし本当にだとしたら…
本当の僕は一体、なんなのだろうか


あれ…?
僕は一体、この世界の何……?
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