【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

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来てしまったゲームスタート

42話 惨めな悪女

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パーティーはまだまだ何時間も続く
とにかくこの場に居たくないという我儘をグラスのジュースと一緒に飲み干し、誰にも見えない位置でグドと手を繋いでいた
今一人になって仕舞えばどうなるか分からない
眩い光の元に立つ青薔薇ヒロインとおこぼれの光しか差さない影で震えるカメリア悪役
どっちの方が惨めかなんて一目瞭然だ


「レディ、宜しければお話ししませんか?」


そんな『惨めな悪女』に話しかけるのは一人の男性
服装から下級貴族だろう
本来であれば王太子妃に同じ目線で話しかけてはならない身分だ
彼は僕に新たなグラスを渡した
恐らく本物のワインが注がれたグラスを


「あら、私が誰かを知っての態度かしら?」
「失礼しました。あまりの美しさに気を取られてしまい……」
「見惚れて知能が下がるような殿方に興味ないの。散って頂戴」


傷心の少女なら簡単に漬け込めるとでも思ったのだろうか
でも『悪女』と呼ばれ主役の座を奪われて尚堂々としている人がただの少女な訳ないだろう
堂々となんて言っても気は立っているが


「やはりお前はお前か」
「っ!ハル……」
「『悪女』とはよく言ったものだ。少しは大人しくなったと思ったが、どうやら盛大な勘違いをしていたようだな」


このパーティーでほとんど関わらない筈のハルジオンが目の前にいた
左腕にしがみついているローズを連れて
僕は何故か流れるようにグラスの中身を口に流した
案の定ワインだったが、喉の渇きと同時に何かが満たされたような錯覚をした


「『お前はお前』?『少しは大人しくなった』?まるで私の事を知っているような口振りですね」
「何をふざけている」

「ふざけているのは貴方でしょう?」


確かに側から見れば僕の方がおかしいだろう
が、何も不思議な事を言ったとは思わない
だってこれは事実だから


「王太子殿下、貴方が私の何を見てきましたか?見たくもないと目を逸らしたのは誰でしたっけ。私を狂わしたのは、一体どこの誰なんでしょうかね」
「随分と大口を叩くな」
「この程度で大口?言いたい事はまだまだたくさん有りますよ。このパーティーだって、成婚記念パーティーでは無く聖女様のお披露目パーティーとして開催すれば良かったものを。まるで私が恥をかく為だけのパーティーじゃないですか」


酒の所為だろう
言葉が溢れて止まらなかった
今まで感じていたもの、言いたかった事
それだけでも言い切れない程にあるくせに、言葉は次から次へと作り出されてしまう
不敬だと言われても構わない
今はただ、普段言葉を交わす機会のないこのヒトに届くのであればと………
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