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来てしまったゲームスタート

41話 最も嫌なバグ

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成婚記念パーティーはゲーム通り始まった
たった一人で登場した王太子妃
遅れて登場した王太子と、その隣にいる謎の女性
王太子は王太子妃では無く謎の女性とお揃いの衣装を纏っている


「この度、この国に聖女が来たことを宣言する!」


そして奪われた主役の座
最初からわかっていたことだ
ゲームの中の悪女は宣言の直後にハルジオンに問い掛ける
が、どれだけ叫べど返事は無く、返されたのは興味すらないという冷め切った瞳
僕はそんな事しない
そんな無駄な事で精神も体力も消費したくない
だから僕は会場の隅で密かに微笑んでいた
「苦しくなどない」と自分に言い聞かせて


飲んだ事のないアルコールは控えようと、真っ赤な葡萄ジュースを片手に会場を静かに見渡した
煌びやかな会場と香ばしい香りを漂わせる料理
金管楽器や弦楽器の演奏が鳴り響き、それぞれが友人に会ったりとパーティーを楽しんでいる
意味の無い成婚記念パーティー
古くからあるというだけで廃止しないパーティーはとても無駄なものだ
これも、ゲームでヒロインを立てる為の無理矢理な設定だ

白銀の髪を高いところでふたつに縛り、白と青のドレスにはスパンコールと青薔薇が散りばめられている
初めての社交の場で戸惑うヒロイン、ローズはハルジオンの腕にしがみついている
……あれ?

ゲームのヒロインと違う……?

ゲーム内のローズの初登場は違った筈だ
確か、「今までと真逆の光景に戸惑い、唯一頼ることが出来る王太子の袖を軽く摘んだ」みたいに表記されていた
しかし目の前のローズは明らかにハルジオンの腕に遠慮無くしがみついている
まさか…ローズもバグ?

だとしたら…余計に僕の立場は無くなってしまう

だって、本当にローズが プレイヤー側バグなら奪い方を知っているから
正しいルートを知っているのなら、どうすれば攻略対象を攻略出来るのかもわかる筈だ
これはやばい
何で僕は考えなかった?
何で僕は僕と言うバグがあるにも関わらず他のバグの可能性を見なかった?
何でこの世界のバグが既に多発してるにも関わらず僕はもう無いと思って……


「あるじ、顔色が良くないよ?」
「っ!グド……」


僕以外のバグであるグド
今は護衛騎士としてパーティーに参加している
……グドは、失わないよね?
攻略対象外のグドは、僕の元を離れないよね?
そんな事が脳裏をよぎった
パーティーの前にグドには心を読まないように言ってある
もし読めていたらきっと嫌われてしまう
今更になって、何も失いたく無いなど
自分の命を失うことすら怖いなど、そんなのはもう僕では無い
僕は、こんなにも弱くなってしまったんだ
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