【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

文字の大きさ
上 下
35 / 161
崩れていく、何もかも

35話 明日は何の日

しおりを挟む
グドが剣の師匠になって数週間が経った
だいぶグドとの特訓が体に馴染んできた頃だ
このまま続ければどんどん強く慣れるだろうと、もっと頑張ろうと意気込んだ


「あるじー、明日は特訓休みだからな!」
「え?」


護衛騎士になってから僕を主と呼ぶようになったグド
意気込んだ瞬間に唐突の休み
僕は納得出来ないと言うことを表情に出した


「あのさぁ、明日が何の日かもしかしなくても忘れてなぁい?」
「え………?」


明日はハルジオンと結婚する1ヶ月前の………
あ、そう言えば……


「あるじの17の誕生日なのに、当人が忘れてどーすんのさ」
「そっか、誕生日か」


正直なところあまり誕生日は好きでは無い
何故なら、祝われるのは僕では無いから
去年の誕生日は盛大に行われた
この世界では女性の成人は16だからだ

沢山のプレゼント
沢山のご馳走
沢山の宝石
大人になる堺の日

それは全て、アイリスのものだ
僕のものは無い
男性の成人は18
僕はまだ子供なのだ


大人にはなれないだろう
その前にきっとこの世と別れを告げる
だから僕は成人に近づくと言うことを嫌でも知らせてくる誕生日が嫌いだ
祝うのであれば、アイリスだけでいい
本物のアイリスだけでいい、のに………

最愛の姉はもういない

何年も捜索を秘密裏に進めてきた公爵家
結局見つからず、消息は不明のまま
でも、もし生きているのであれば帰ってきてくれるだろう
魔法が得意なアイリスの事だ
何があっても場所を伝えるくらいは出来るはず
それでも何も見つからないなら望みは薄い

もう、この日に価値を感じなくなっていた


「………私の誕生日より、アズ様の誕生日の方を考えた方がいいと思いますよ。確か2週間後ですよね」
「そっか、あるじは生まれて来た事を後悔してるんだもんね?」
「っ五月蝿い!」


やはり心を読まれると言うのは厄介だ
アズの前でそれを言わないで欲しかったのに
近くで僕とグドに防御魔法を掛け続けるアズに、きっと今の会話は筒抜けだろう


「姉上、明日はお祝いしましょう」
「いりませ……」


アズは、もう一歩でぶつかってしまいそうな程に近くまで来た
そして誰にも聞こえないように、耳元でそっと囁いた

「私が祝いたいだけです。姉上では無く、カメリアとしての貴方を」

………一体、いつぶりだろうか
僕を、カメリアを祝おうとしてくれる人が現れるのは
亡くなった母とアイリスしか祝ってくれなかった僕の誕生日を

「あるじっ、おいらにも祝わせてくれ!おいらはあるじがいるから存在出来るんだからな!」

まだ僕が誕生日を楽しみに出来るとは思わなかった
ずっと呪い続けた自分の誕生の日をまだかまだかと思えるのは、きっと大切な人が出来たからだ
やっぱり、もっとみんなと居たいな……なんて
















「まだ、死ぬ気なんだな。翼樹」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト

しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。 飛竜騎士団率いる悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治を目指すこと、そして敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。 前世の記憶『予知』のもと、目的達成のためグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後、少しずつ歴史は歪曲しグレイの予知からズレはじめる…… *主人公の股緩め、登場キャラ貞操観念低め、性癖尖り目、ピュア成分低めです。苦手な方はご注意ください。 *他サイト様にも投稿している作品です。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

処理中です...