【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

文字の大きさ
上 下
31 / 161
崩れていく、何もかも

31話 グドとカメリア

しおりを挟む
暫く僕は夢の中だと思っていた
いくらファンタジーの世界と言えどここでは妖精は御伽の存在
きっと疲れているのだろう
だからこんな夢を見ている
そう思った僕は、グドの情報量に追いつけずに強制的に眠った

きっと次目が覚めたらいないだろう
ちゃんと寝直さないと、夢を見るとは眠りが浅いと言うこと
こんなリアルな夢を見て深く眠れているはずもないだろうと

結果から言うと、夢では無かった
目が覚めると目の前をふわふわと飛ぶグドがいた
ずっとニヤけた顔で見てくる


“あははっ!ねぇ夢だと思った?思ったでしょ!ざぁんねん、おいらは夢じゃないよ!”
「………騒がしいな」


色々と諦めた


そう言えば、僕はグドと初めて話した時はソファに座っていた
にも関わらず目覚めたのはベッドだ
その事に疑問を持っていると、僕の思考を読み取ったのかグドが答えた


“感謝して欲しいな、おいらが翼樹を運んだんだぞー”
「そう…だったんだ。ありがとうグド」
“ゔっ…実際言われてみると照れ臭いものだなぁ……”


ちょっとだけ顔が赤くなっている
露骨に僕から視線を逸らし、頬を人差し指でぽりぽりと掻くその姿は人間とあまり変わらなかった
それにしても、妖精なら小さくても人1人運ぶ事は出来るんだな
身長差は倍なんてものじゃないのに


“別に、浮かせて運んだ訳じゃないぞ。そんなことしたら人間の体に負担が掛かるからな”
「え?ならどうやって……」
“おいらが人間サイズになって運んだんだ!”


そんな事も出来るんだ
グドは他にはどんな事が出来るのだろうか
色々と聞いてみることにした


「グドは他の人に見えるの?」
“この姿の時はどっちでも出来るぜっ!ただ、人間サイズの時はどーしても見えるっぽいけどなー”


見られたことでもあるのだろうか
まぁ、人間サイズなら恐らく妖精だとは思われないだろうけど
小さな体と奇抜な服装以外は普通の人間と同じだ


“なー翼樹、そんなにおいらのこと知りたい?”
「………グド、僕の思考が読めるなら何が言いたいか分かるよね?」
“はいはい、ほんっとにカメリアは細かいなぁ!”


過去と決別した僕にとって、ずっと昔の名前で呼ばれるのはあまり良い気分では無い
今の僕はカメリアだ
アイリスの双子の弟で、プラント家の跡継ぎとして生まれ、今は亡きアイリスとして生きる『カメリア』だ
アズが僕と契約した時に、僕はアイリスを名乗っても『カメリア』なんだと思った
どう頑張ったって本物のアイリスになれないし、カメリアと言う名前も立場も存在も自分の中から捨てきれない
なら僕は『カメリア』なんだ
せめて、僕のことを知っている人には僕の名で呼んでほしい
アズには頼めないけど
彼はそれに気付かせてくれただけで十分だから
僕はアズの姉だから

そう思ったら、何故か少しだけ息苦しく感じた
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト

しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。 飛竜騎士団率いる悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治を目指すこと、そして敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。 前世の記憶『予知』のもと、目的達成のためグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後、少しずつ歴史は歪曲しグレイの予知からズレはじめる…… *主人公の股緩め、登場キャラ貞操観念低め、性癖尖り目、ピュア成分低めです。苦手な方はご注意ください。 *他サイト様にも投稿している作品です。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

処理中です...