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崩れていく、何もかも
27話 見ないうちの大きな成長
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騎士団長の死から2ヶ月
ようやく僕はリージュの顔が見れるらしい
アズと共にリージュの部屋へと向かった
僕は初めて行く為、場所は知っていてもどの様な場所かは知らない
アズの部屋は濃い魔力と薬草の匂いが漂い、様々な器具や書類が並べられている白と水色を基調とした部屋だった
爽やかさと透明感のあるアズに合った部屋
リージュの部屋の前に着いた
恐る恐る扉を叩くと、向こう側から明るい返事が聞こえた
その声は僕の知っているけど知らない声だった
「アズ兄様と姉様?どうぞ入ってください」
その呼び方は間違いなくリージュだ
しかし、高く幼い声ではなく声変わり後の低い声
ゲームで既に聞いた事はあったが、こうやって声の変化を聞くのはまた不思議な感覚だ
部屋の中に入ると、白と薄い黄色を基調とした空間に僕の弟が立っていた
成長しても若干大きな瞳はこちらをしっかりと見ると細まった
僕の背丈を完全に越しているリージュは、優しい顔で微笑んでいる
「お待たせして申し訳ありません、姉様」
「………いえ、少し見ない間にまた成長していますね。もう見上げないと目を合わせる事も出来ない」
ついこの間まで小さな少年だったのに
近寄れば寄るほどその差はハッキリと分かる
もちろん急激な成長である程度体に影響は出るだろう
「えへへ、きっと兄様を抜くのもそう遠くない未来かも知れませんね」
「そうかも知れませんね」
「うっ…それは私が嫌ですよ」
ま、リージュは170ちょっとで止まるかもなんだけどね
アズは180とちょっと、ハルジオンは180後半と全体的に高身長だ
さすがは乙女ゲームの世界と言ったところか
それに比べて僕は160前半
今はそうで無いと困るが、普通に生きていたなら僕も170は欲しかった
とは言えまだ16歳、きっとこれから少しは伸びる…と、思う
170超える前に十中八九この世にいないだろうけど
「それにしても、元気そうで良かったです」
「会うのが遅くなってすみません。あまり弱々しいところを見せたくなくて……」
今は見た感じ大丈夫だが、やはりやつれたりしていたのだろうか
それ程までに今回の件は大きかった
本当は、僕はいない方が良かったのだろう
僕がいなければハルジオンが望まない結婚をする事も、アズを縛る事も、騎士団長が冤罪で死ぬ事も無かった
結局復讐もまともに出来ていない
なんの情報も得られないどころか、全く会っていないのだから
いっそのこと、もう終わらせてしまおうか
なんて考えが浮かんでしまってもまだ生にしがみついているのは、きっと生きたいからじゃ無い
僕は死ぬのが怖いんだ
大切なものを失うことと同じくらい怖いんだ
だから僕は復讐なんてものに縋って生きている
本当に無様で、笑ってしまいそうだ
ようやく僕はリージュの顔が見れるらしい
アズと共にリージュの部屋へと向かった
僕は初めて行く為、場所は知っていてもどの様な場所かは知らない
アズの部屋は濃い魔力と薬草の匂いが漂い、様々な器具や書類が並べられている白と水色を基調とした部屋だった
爽やかさと透明感のあるアズに合った部屋
リージュの部屋の前に着いた
恐る恐る扉を叩くと、向こう側から明るい返事が聞こえた
その声は僕の知っているけど知らない声だった
「アズ兄様と姉様?どうぞ入ってください」
その呼び方は間違いなくリージュだ
しかし、高く幼い声ではなく声変わり後の低い声
ゲームで既に聞いた事はあったが、こうやって声の変化を聞くのはまた不思議な感覚だ
部屋の中に入ると、白と薄い黄色を基調とした空間に僕の弟が立っていた
成長しても若干大きな瞳はこちらをしっかりと見ると細まった
僕の背丈を完全に越しているリージュは、優しい顔で微笑んでいる
「お待たせして申し訳ありません、姉様」
「………いえ、少し見ない間にまた成長していますね。もう見上げないと目を合わせる事も出来ない」
ついこの間まで小さな少年だったのに
近寄れば寄るほどその差はハッキリと分かる
もちろん急激な成長である程度体に影響は出るだろう
「えへへ、きっと兄様を抜くのもそう遠くない未来かも知れませんね」
「そうかも知れませんね」
「うっ…それは私が嫌ですよ」
ま、リージュは170ちょっとで止まるかもなんだけどね
アズは180とちょっと、ハルジオンは180後半と全体的に高身長だ
さすがは乙女ゲームの世界と言ったところか
それに比べて僕は160前半
今はそうで無いと困るが、普通に生きていたなら僕も170は欲しかった
とは言えまだ16歳、きっとこれから少しは伸びる…と、思う
170超える前に十中八九この世にいないだろうけど
「それにしても、元気そうで良かったです」
「会うのが遅くなってすみません。あまり弱々しいところを見せたくなくて……」
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それ程までに今回の件は大きかった
本当は、僕はいない方が良かったのだろう
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結局復讐もまともに出来ていない
なんの情報も得られないどころか、全く会っていないのだから
いっそのこと、もう終わらせてしまおうか
なんて考えが浮かんでしまってもまだ生にしがみついているのは、きっと生きたいからじゃ無い
僕は死ぬのが怖いんだ
大切なものを失うことと同じくらい怖いんだ
だから僕は復讐なんてものに縋って生きている
本当に無様で、笑ってしまいそうだ
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