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変化とはあまりにも速い
20話 遠く感じる背中
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ずっと剣を差し出し跪く名前も知らない騎士団長
やめてくれ
お願いだから
僕は…僕にだけは気を許さないでくれ
もう何も失いたく無い
何も得たくない
それが剣の一本でも、信用でも同じだ
そんなものを得るくらいなら、軽蔑された方がマシだ!
僕は剣を奪い取り、迷う事なく抜いた
その刃を騎士団長の首筋に当てる
今度は木刀じゃない
簡単に命を奪うことが出来る真剣だ
「いい加減にして…貴方の願望と変な憶測で私を決めつけないで!私は誰が何と言おうとも悪女で、貴方が信用を置いていい人間じゃ無いって事くらい分かって!」
お願いだから、このまま失望して剣を取り返して消えて
それだけでいいんだ
もう、僕に関与しないで
「……ようやく、剣を受け取って下さいましたね」
「……え?」
失望も呆れもしていない
それどころか優しく微笑んでいる…?
なんで?
騎士団長はそっと剣の向きを逸らすと、立ち上がり一礼した
「私はアイリス様に剣を渡しに来ただけですので、ここで失礼致します」
「……んで、何でこんなことを…」
「言葉にしないと分かりませんか?」
分からない
分かるわけが無い
こんな、敵に塩を贈るようなこと
僕はこの結婚で騎士に命を狙われる覚悟までしたのに
なのに今はその団長に剣を貰っている
こんな状況、僕に理解できるわけが無いだろう
「とても簡単なことですよ。私が貴女を尊敬しているからです。その実力も、優しさも、心の強さも……」
「っバカみたい、私はそんなお綺麗な人間じゃないのに」
「それは貴女から見た貴女であって、私から見たアイリス様は先程言った通りに見えているんです。私は貴女から、痛い程の何かを感じました。だからこそ、どんな形であれ貴女の助けに慣れればと……」
焦りと動揺は一瞬で恐怖に変わった
だめだ
この人と一緒にいては
アズみたいに僕のことがバレる訳にはいかない
ここまで鋭いのならいつか気付くだろう
また、アズのようになるとは思えない
今は変に話を長引かせないで早く離れよう
冷静になれ
他人と出来る限り関わらない事が自分を守る事だ
「わかりました、この剣はありがたく頂きます。ですが今後一切このような事が無いよう、お願いしますね」
「………はい、承知致しました」
騎士団長は悲しそうな表情を浮かべてその場を立ち去った
何故だろうか
彼の姿が見えなくなるまで、僕は息が出来なかった
胸が締め付けられるような息苦しさ
今になって罪悪感が出たのだろうか
その背中がやけに遠くに感じた
その感情の正体を知るまでに時間はそう掛からなかった
やめてくれ
お願いだから
僕は…僕にだけは気を許さないでくれ
もう何も失いたく無い
何も得たくない
それが剣の一本でも、信用でも同じだ
そんなものを得るくらいなら、軽蔑された方がマシだ!
僕は剣を奪い取り、迷う事なく抜いた
その刃を騎士団長の首筋に当てる
今度は木刀じゃない
簡単に命を奪うことが出来る真剣だ
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お願いだから、このまま失望して剣を取り返して消えて
それだけでいいんだ
もう、僕に関与しないで
「……ようやく、剣を受け取って下さいましたね」
「……え?」
失望も呆れもしていない
それどころか優しく微笑んでいる…?
なんで?
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「言葉にしないと分かりませんか?」
分からない
分かるわけが無い
こんな、敵に塩を贈るようなこと
僕はこの結婚で騎士に命を狙われる覚悟までしたのに
なのに今はその団長に剣を貰っている
こんな状況、僕に理解できるわけが無いだろう
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「っバカみたい、私はそんなお綺麗な人間じゃないのに」
「それは貴女から見た貴女であって、私から見たアイリス様は先程言った通りに見えているんです。私は貴女から、痛い程の何かを感じました。だからこそ、どんな形であれ貴女の助けに慣れればと……」
焦りと動揺は一瞬で恐怖に変わった
だめだ
この人と一緒にいては
アズみたいに僕のことがバレる訳にはいかない
ここまで鋭いのならいつか気付くだろう
また、アズのようになるとは思えない
今は変に話を長引かせないで早く離れよう
冷静になれ
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「わかりました、この剣はありがたく頂きます。ですが今後一切このような事が無いよう、お願いしますね」
「………はい、承知致しました」
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何故だろうか
彼の姿が見えなくなるまで、僕は息が出来なかった
胸が締め付けられるような息苦しさ
今になって罪悪感が出たのだろうか
その背中がやけに遠くに感じた
その感情の正体を知るまでに時間はそう掛からなかった
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