【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

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変化とはあまりにも速い

17話 本気の実戦

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アズに防護魔法を付けてもらった
相手の騎士団長はある程度の装備は付けている
それに、僕の思考はバレている

こうなってしまった以上は腹を括るしかないのだろう
案の定、リージュは僕が本気を出していないと聞いて驚いていたが、『優しさ』と勝手に解釈してくれたおかげで特に何ともない
緊張感が漂う中、僕は木刀を握る力を強めた



「いいですか、アイリス様。その手に持っている剣は真剣で、私は貴女が殺したくて仕方ない敵です。そう思って戦ってください」
「私が、殺したくて仕方ない敵……?」


脳裏に浮かんだのは実父である公爵だ
僕とアイリスをただの利益を産む人形としか思っていないあの男
まだ殺すには早いが、今少しでも奴に抗えるのなら…
本人で無いにしろ気持ち的にも物理的にもこの激情をぶつけられるのなら………!



「それでは始めましょうか」
「えぇ…私もいつでも行けますよ」



そして始まった騎士団長との実戦訓練
最初に動いたのは僕だった
開始と同時に動くという、相手の様子も見ずにと指摘されそうな行動だ
しかし一瞬で間合いを詰めた僕は、出来る限り剣を大きく振らずにひたすら細かく打ち続けた
騎士団長は驚いているようで、後退りながら防御に徹していた


なんとか体制を整えて上手く対応しようとしたのだろう
大きく後ろへと下がっていた

そのタイミングを僕は待っていた

大きく一歩下がると同時に剣を下から上へと大きく振った
しかし、剣は相手に触れることは無かった
そして動きを間違えたように少し離れると、相手は今だと僕の元へ来た
剣が当たる直前に僕は体制を低くした
足を伸ばし相手の背後に滑り込ませ、相手が振り返って下を向く直前に僕は高く飛んだ


この世界では基本的な運動神経もやりようによっては超人のようになる
魔力を循環させ続けたことにより、身体能力の一部分を集中的に強化できるようになっていた


脚にのみ魔力を大量に流し込み、相手の身長を軽々超えるほどに飛んだ僕は、僕を見失い動揺している騎士団長の背後に回り


首筋に剣をそっと当てた


「っはぁ、はぁ、私の…勝ちです」
「そ、うですね……」



驚きを隠せずにいる騎士団長
僕もまさか勝てるとは思わなかった
かなり運任せな箇所もあったし、正直上手く行くと思えない戦い方をした
相手の行動、自分の力量・技術
上手くいったのはきっとまぐれだろう
それでも、少しは強くなれたと思ってもいいだろうか


「正直驚きました。剣を握って間もないレディーに負けるとは……アイリス様?アイリス様!?」
「っ……?何か?」
「顔面蒼白ではないですか!何故ここまで無理をしたのですか!?」


あぁ、いつものことか
恐らく今回は魔力を無理矢理動かしたからだろう
普段はゆっくりと巡らせていた魔力を、今回の実戦で音速で移動させたのだから反動は来て当然だろう
周りの提案で、僕は今日は休むことになった
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