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「私」の秘密を
5話 わるいのはぜんぶ、ぼくだから
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僕は前世から同性愛者だった
高校生の頃に好きになった先輩が男性だった
その時に初めて気付き、その気持ちが周りにバレてしまった
先輩は周りに囃し立てられ、進学を諦めて中退した
先輩に好意を寄せている女性も沢山いたが、その人達は全て僕の所為だと言い、露骨に暴力を振るってきた
それは家族やバイト先にまで伝わってしまい、沢山の人に迷惑を掛けた
結果的に、僕は高校を辞めた
そもそも高校受験を受けていなかった姉と夜にネットで軽く稼ぐ生活
なかなか癒えない体と心の傷も、姉と居れば痛みは感じなかった
「世の中は酷いよな。私達はただ同性が好きってだけなのに」
僕の気持ちを分かってくれるのは、同じ同性愛者の姉だけだった
結局それからは、死ぬまで外で他の人の顔を見る事すら怖くなっていた
「は?まさかまだ兄上を本当に愛してるとでも?」
「なにか、ダメですか?」
「普通に考えておかしいだろう。何で男が男に…」
「おかしい…?普通って…?そんな事知らない。知りたくも無いっ!!」
突然叫んだ僕に、アズは驚いていた
それもそうだろう
それでも僕は止まらなかった
「何で愛する人まで制限されなければいけない!?想うことですら許されないの!?僕にとって『異性愛が普通』なんて、ただ子孫を残す為の勝手なルールに過ぎない!だったらいっその事、人間なんて滅んでしまえば………!」
言ってはいけない事を言おうとしたと気付いた時には、遅かった
全ての人間を敵に回すような発言
人々の為に動いているアズにとっては最悪な言葉だろう
「お前…今、なんて言おうとした?」
「ぼ、く…いま……?あ、れ?ゔ、っっ」
急激なストレスのせいか、座り込みその場で吐いてしまった
涙で何も見えなくなった
「ゴホッ、はぁ…はぁ…、ご、め…なさ…。ごめん、なさっ、はっ、ちが、やだ…な、で?ご、めんなさ、ごめんなさい、ごめ、なさい。嫌だ、嫌だ嫌だ、こん、な…」
「え……?おい、一体どうし……」
「ぼ…くが、僕が、全部悪い、から。わかってるから、も、痛いのやだ……!」
反射的に壁側に避け、三角座りで蹲っていた
前世と違う体なのに傷の痛みが蘇るような感覚
僕の感情一つで周りに迷惑をかけてしまうという、前世で覚えてしまった負の感情に押し潰されそうになった
「おい、しっかりしろ!」
「っ!」
気付いたらアズが目の前にいた
片膝を着き、目線を合わせて僕の両肩を掴んでいる
目に溜まっていた涙が落ち、アズの顔がようやくハッキリと見えた
その表情は怒っていると言うより焦っているようだった
「私はお前に危害を加えない。だから落ち着け」
信用ならない言葉のはずだった
それでも僕は涙が枯れないまま、震えながら頷いた
「吐き気は」
「まだ、気持ち悪い…」
「なら全部吐いた方がいいな」
僕はアズが用意してくれたゴミ箱にしがみついた
「ゲホッゴホッ。っは…」
「髪、汚れるといけないから持っておこう」
長い髪を持ち上げ背中をさすってくれている
先ほどまでと態度がかなり違う
滑稽で弱そうに映ったのだろうか
なんて事を考えながらも、僕は背中に触れる暖かい手に安心していた
高校生の頃に好きになった先輩が男性だった
その時に初めて気付き、その気持ちが周りにバレてしまった
先輩は周りに囃し立てられ、進学を諦めて中退した
先輩に好意を寄せている女性も沢山いたが、その人達は全て僕の所為だと言い、露骨に暴力を振るってきた
それは家族やバイト先にまで伝わってしまい、沢山の人に迷惑を掛けた
結果的に、僕は高校を辞めた
そもそも高校受験を受けていなかった姉と夜にネットで軽く稼ぐ生活
なかなか癒えない体と心の傷も、姉と居れば痛みは感じなかった
「世の中は酷いよな。私達はただ同性が好きってだけなのに」
僕の気持ちを分かってくれるのは、同じ同性愛者の姉だけだった
結局それからは、死ぬまで外で他の人の顔を見る事すら怖くなっていた
「は?まさかまだ兄上を本当に愛してるとでも?」
「なにか、ダメですか?」
「普通に考えておかしいだろう。何で男が男に…」
「おかしい…?普通って…?そんな事知らない。知りたくも無いっ!!」
突然叫んだ僕に、アズは驚いていた
それもそうだろう
それでも僕は止まらなかった
「何で愛する人まで制限されなければいけない!?想うことですら許されないの!?僕にとって『異性愛が普通』なんて、ただ子孫を残す為の勝手なルールに過ぎない!だったらいっその事、人間なんて滅んでしまえば………!」
言ってはいけない事を言おうとしたと気付いた時には、遅かった
全ての人間を敵に回すような発言
人々の為に動いているアズにとっては最悪な言葉だろう
「お前…今、なんて言おうとした?」
「ぼ、く…いま……?あ、れ?ゔ、っっ」
急激なストレスのせいか、座り込みその場で吐いてしまった
涙で何も見えなくなった
「ゴホッ、はぁ…はぁ…、ご、め…なさ…。ごめん、なさっ、はっ、ちが、やだ…な、で?ご、めんなさ、ごめんなさい、ごめ、なさい。嫌だ、嫌だ嫌だ、こん、な…」
「え……?おい、一体どうし……」
「ぼ…くが、僕が、全部悪い、から。わかってるから、も、痛いのやだ……!」
反射的に壁側に避け、三角座りで蹲っていた
前世と違う体なのに傷の痛みが蘇るような感覚
僕の感情一つで周りに迷惑をかけてしまうという、前世で覚えてしまった負の感情に押し潰されそうになった
「おい、しっかりしろ!」
「っ!」
気付いたらアズが目の前にいた
片膝を着き、目線を合わせて僕の両肩を掴んでいる
目に溜まっていた涙が落ち、アズの顔がようやくハッキリと見えた
その表情は怒っていると言うより焦っているようだった
「私はお前に危害を加えない。だから落ち着け」
信用ならない言葉のはずだった
それでも僕は涙が枯れないまま、震えながら頷いた
「吐き気は」
「まだ、気持ち悪い…」
「なら全部吐いた方がいいな」
僕はアズが用意してくれたゴミ箱にしがみついた
「ゲホッゴホッ。っは…」
「髪、汚れるといけないから持っておこう」
長い髪を持ち上げ背中をさすってくれている
先ほどまでと態度がかなり違う
滑稽で弱そうに映ったのだろうか
なんて事を考えながらも、僕は背中に触れる暖かい手に安心していた
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