85 / 187
第二章
2 【R18】
しおりを挟む
ルイスはアリシティアの両足を肩から下ろして掻き抱き、深くねっとりと口づける。歯列の裏をなで口蓋を刺激し、舌を絡め合う。
時折わずかに離れた彼女の口元からは、甘い吐息が漏れ出る。
アリシティアは細い腕をルイスの首に回し、ぎゅっと抱きしめた。
お互いの熱と齎される快楽に、思考も身体も溶けていく。互いの体液が混ざり合い、溢れだしてシーツに染みていった。
アリシティアの中に流れ込んだ二人の唾液が混ざりあい、彼女はそれを躊躇なく飲み込む。けれども飲みきれなかった唾液が口の端を伝って流れ出た。ルイスはそれを唇で受け止め、舌で舐め取る。
お互いの汗と唾液と蜜液で全身がどろどろになっているが、本来不快であるはずのその感覚さえもが快楽の一部にすり替わった。
激しい息遣いで肌を打ち付け、互いの快楽を貪っていく。
やがてアリシティアが悲鳴にも似た嬌声をもらして、彼の熱を包み込んだ彼女の内壁がきつく痙攣した。その急激な刺激に頭の中が真っ白になり、ルイスは強く抱きしめた身体の中に、実ることはない白濁を吐き出した。
◇◆◇
ぴちゃん…と、水音が浴室内に響く。
「本当に今更なんだけどね…」
湯の中に沈めたアリシティアの身体を後ろから抱きしめて、ルイスはぽつりと呟いた。
アリシティアの髪が濡れないように気を使いながら、ルイスは彼女の頭を自らの肩にもたれさせ、ため息を吐き出す。
湯面から出ている肩が冷えないように、手のひらですくった湯を彼女の肩にかけながら、静かすぎて出来の良い人形のようにすら見える彼女を見下ろした。
ルイスの身体の上に乗せるように抱きかかえた彼女は、時々うっすらと目を開くが、意識は朦朧としたままで、またすぐに眠ってしまう。しっかりと目覚めた時には間違いなく忘れている。
完全にいつものパターンだ。
毎回情交のあとでは意識を失うように眠った彼女を浴室に運び、ルイスがその体を洗っているが、彼女は全く覚えていないらしい。
過去に何度か、眠ってしまった彼女を起こそうとした事はある。しかし、ある一定時間眠らなければ、彼女は決して目を覚まさない。一体何がそこまで彼女を眠りに執着させるのか。甚だ疑問だ。
おかげで、どんなに悶々としていても、続けざまに彼女を抱けた事がない。
アリシティアは湯に入れられても身体を洗われても、眠ったままでいる。稀に目覚めても、ルイスの顔を見て安心したように再び眠ってしまう。それほどに、アリシティアは彼の事を信頼している。
にもかかわらず一切彼を頼ることの無い、外見だけは可愛すぎる婚約者に、ルイスはほんの少し苛つく。なんとなく、頬を軽くつねってみる。もちろん反応はなかった。
誰よりも何よりも愛しくて可愛い。だけど何度手の中に捕らえてもすぐにどこかに行ってしまう。最愛で最悪の婚約者。
彼女はどれほどルイスのことを愛していても、ほんの少しも彼の事を頼ろうとはしないし、必要とすらしていない。そのことを、今夜の事件でルイスは改めて思い知らされた。
アリシティアがベアトリーチェと呼ぶ、不愉快極まりない魔女に頼ったのなら、分かりたくはないけれどまだ分かる。
あのいけ好かない魔女が錬金術師の塔に来た当初から、アリシティアはあの魔女に絶対的な信頼をおいて懐いていた。
その理由を彼女に聞いた時、彼女はさも不思議そうに「だってベアトリーチェは抗生物質を作った人なんですよ?」と、意味不明な返答をして首をかしげた。
まるで、そんな事はこの世界の常識だとでも言わんばかりの口ぶりに、お得意の「閣下には関係のない事です」と言われるよりもイラッとして、廊下だというのに無理やりキスしてしまったのは、仕方のないことだと思う。
そんな彼女が、あの忌々しい魔女を頼るでもなく、よりにもよってレオナルド・ ベルトランド・デル・ オルシー二と、リカルド・アウトーリの2人を引き連れて、チューダー伯爵の仮面舞踏会に行った。ルイスは思い出しただけでもいらだたしかった。
アリシティアがあの2人と接点があった事すら、ルイスは知らなかった。
湿気を帯びた前髪をかきあげ、ルイスは小さくため息を吐いた。
時折わずかに離れた彼女の口元からは、甘い吐息が漏れ出る。
アリシティアは細い腕をルイスの首に回し、ぎゅっと抱きしめた。
お互いの熱と齎される快楽に、思考も身体も溶けていく。互いの体液が混ざり合い、溢れだしてシーツに染みていった。
アリシティアの中に流れ込んだ二人の唾液が混ざりあい、彼女はそれを躊躇なく飲み込む。けれども飲みきれなかった唾液が口の端を伝って流れ出た。ルイスはそれを唇で受け止め、舌で舐め取る。
お互いの汗と唾液と蜜液で全身がどろどろになっているが、本来不快であるはずのその感覚さえもが快楽の一部にすり替わった。
激しい息遣いで肌を打ち付け、互いの快楽を貪っていく。
やがてアリシティアが悲鳴にも似た嬌声をもらして、彼の熱を包み込んだ彼女の内壁がきつく痙攣した。その急激な刺激に頭の中が真っ白になり、ルイスは強く抱きしめた身体の中に、実ることはない白濁を吐き出した。
◇◆◇
ぴちゃん…と、水音が浴室内に響く。
「本当に今更なんだけどね…」
湯の中に沈めたアリシティアの身体を後ろから抱きしめて、ルイスはぽつりと呟いた。
アリシティアの髪が濡れないように気を使いながら、ルイスは彼女の頭を自らの肩にもたれさせ、ため息を吐き出す。
湯面から出ている肩が冷えないように、手のひらですくった湯を彼女の肩にかけながら、静かすぎて出来の良い人形のようにすら見える彼女を見下ろした。
ルイスの身体の上に乗せるように抱きかかえた彼女は、時々うっすらと目を開くが、意識は朦朧としたままで、またすぐに眠ってしまう。しっかりと目覚めた時には間違いなく忘れている。
完全にいつものパターンだ。
毎回情交のあとでは意識を失うように眠った彼女を浴室に運び、ルイスがその体を洗っているが、彼女は全く覚えていないらしい。
過去に何度か、眠ってしまった彼女を起こそうとした事はある。しかし、ある一定時間眠らなければ、彼女は決して目を覚まさない。一体何がそこまで彼女を眠りに執着させるのか。甚だ疑問だ。
おかげで、どんなに悶々としていても、続けざまに彼女を抱けた事がない。
アリシティアは湯に入れられても身体を洗われても、眠ったままでいる。稀に目覚めても、ルイスの顔を見て安心したように再び眠ってしまう。それほどに、アリシティアは彼の事を信頼している。
にもかかわらず一切彼を頼ることの無い、外見だけは可愛すぎる婚約者に、ルイスはほんの少し苛つく。なんとなく、頬を軽くつねってみる。もちろん反応はなかった。
誰よりも何よりも愛しくて可愛い。だけど何度手の中に捕らえてもすぐにどこかに行ってしまう。最愛で最悪の婚約者。
彼女はどれほどルイスのことを愛していても、ほんの少しも彼の事を頼ろうとはしないし、必要とすらしていない。そのことを、今夜の事件でルイスは改めて思い知らされた。
アリシティアがベアトリーチェと呼ぶ、不愉快極まりない魔女に頼ったのなら、分かりたくはないけれどまだ分かる。
あのいけ好かない魔女が錬金術師の塔に来た当初から、アリシティアはあの魔女に絶対的な信頼をおいて懐いていた。
その理由を彼女に聞いた時、彼女はさも不思議そうに「だってベアトリーチェは抗生物質を作った人なんですよ?」と、意味不明な返答をして首をかしげた。
まるで、そんな事はこの世界の常識だとでも言わんばかりの口ぶりに、お得意の「閣下には関係のない事です」と言われるよりもイラッとして、廊下だというのに無理やりキスしてしまったのは、仕方のないことだと思う。
そんな彼女が、あの忌々しい魔女を頼るでもなく、よりにもよってレオナルド・ ベルトランド・デル・ オルシー二と、リカルド・アウトーリの2人を引き連れて、チューダー伯爵の仮面舞踏会に行った。ルイスは思い出しただけでもいらだたしかった。
アリシティアがあの2人と接点があった事すら、ルイスは知らなかった。
湿気を帯びた前髪をかきあげ、ルイスは小さくため息を吐いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,521
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。