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第二章

3 【R18】※

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 熱で満ちた双眸がアリシティアを捉える。口内に容赦なく舌が入り込んできて、アリシティアは小さな悲鳴を喉の奥で漏らした。

 長い指が後頭部を掴み、口中へと滑り込んだ舌先が強引にアリシティアの舌に絡まる。アリシティアが咄嗟に舌を引くと、ルイスは簡単に捉えていた獲物を解放した。
 代わりに歯列の裏側をなぶる。舌先が口蓋へとうつり、くすぐる様に転がされた。


 淫靡な水音が、室内に響く。口内を弄る舌が快楽を生み、次第に意識が朦朧とする。下腹に疼きを齎し、甘い息が零れた。





 そんなアリシティアの反応に、ルイスは唇を離して、妖艶な微笑みを浮かべた。

 ルイスの手が優しく胸に触れ、アリシティアの体がびくりと震える。
ドレスの胸元をさげられ、胸の膨らみが弾き出されそうになった。

 ルイスは手のひら全体で胸をもみあげ、指先で硬くなった突起を布越しに刺激する。アリシティアの下腹部が熱を帯びる。
ルイスは胸の谷間に唇を這わせ、ドレスの布を押し下げ、赤い跡をつけながら頂きへと唇を滑らせた。

 熱い舌が頂きをなぶり、蠢く度に、アリシティアの背筋にザワザワとしたものが走り上がる。
その感覚に、短い嬌声をあげた。


 そんなアリシティアの胸から唇を離して見下ろしてくる顔は、相変わらず見惚れてしまうほどに、艶っぽくて綺麗だった。




 アリシティアが主導権を握って、メロメロにしてやるはずが、完全に主導権を奪われたと自覚した時には、既に遅かった。

ソファーに押し倒されて、上に乗られる。そのまま足の間にルイスの膝が差し込まれた。
膝をぐっと押し付けて、こねるように足の間を刺激される。快楽が、一瞬にして背筋を駆け抜けた。



「んん──── っ!!」



 アリシティアは子供のように顔を横に振り、全身で誘惑してくるフェロモン男から逃れようとする。だが、必死に抗うくぐもったうめき声が室内に響くだけだった。

 さんざん口の中を弄ばれたのち、ようやく唇が離され、口の端から溢れた唾液が舌先で舐め上げられた。

ルイスが楽しげにくすりと笑う。

「ねぇ、どうしたの?これで終わり?僕を誘惑して話を有耶無耶にしたいんでしょ?のってあげるから、もっと僕を楽しませてよ」

 
 瞬間。アリシティアの頭の中でプツンと何かが切れた。

 ルイスからすれば、単なる揶揄かもしれない。けれどアリシティアにとっては、勝負を挑まれた気分だった。





 質問を誤魔化すようにキスしてきたのは、ルイスの方だ。
 それに乗ってあげただけだというのに、なぜこんな生まれて18年しかたっていないお子様に主導権を奪われねばならないのか。アリシティアの中に、あまりにも方向違いの怒りが湧きだした。




 前世、アリシティアは国民総オタク気質とも言える国で、18年生きてきた。

 18歳+17歳で、心の中では自称35歳。
精神年齢が肉体年齢に引きずられたとはいえ、前世の記憶があり、経験値は加算されている。多分。
 35歳で、18歳の子供に手を出すなど、ダメな大人の烙印を押されそうなものだが、見かけは17歳の美少女だから問題ない。……と、アリシティアは思っている。
そもそも基本的には、手を出されている方だし。



 そんなアリシティアは女性雑誌の恋愛特集も、SEX特集も、とことん読み込んだ。


 愛読書はロマンス小説と推理小説。大好きなタイプは芸術的な犯罪を犯すサイコパスか、全てを思い通りに影から動かす眼鏡をかけたクールな策士。

 現実にいると、決して近くには寄りたくないのだが、そこは置いておく。






 それはともかく、人を楽しませるSEXの情報を提供する事にかけては、多分異世界を合わせても最高位に位置するであろう大国日本。そんな国に生まれ育ったという、他人から見ればめちゃくちゃどうでも良いとしか思えない矜持が、アリシティアにはある。


 無修正ならエロかろうと言わんばかりの、局部丸出しで突っ込んでひたすら腰を振って、なんの捻りもなく終わってしまう。そんなSEX動画を垂れ流す某国と、この国のセックス事情は対して変わらないと聞く。
だとすればこの国しか知らない人間ルイスに負けるのは、元日本人の矜持が許さない。


 人を喜ばせ、部分的な快楽だけではなく五感の全てを魅了するようなSEXだって、知識だけなら高級娼婦のお姉様方にだって負けはしない。



──── この世界しか知らないあんたなんて、蛸でエロスを感じさせる世界があるなんて、想像もつかないでしょう!!




「いいわ。受けてたつから。鉄棒ぬらぬら先生の名にかけて」

「え?それ誰?」


 先程までの陰鬱な思考など消し飛ばしたアリシティアは、全く意味のない使命感に燃えていた。




 とはいえ、この押し倒され、しかも両腕を頭上で拘束された状態では、どんな知識も役に立たないと気づく。この状態を覆さなければ、決して主導権を握る事はできない。
 だったら……。


 アリシティアはその透明な鈴を転がすような声を、砂糖漬にしたかのような甘さを加えてささやいた。

「…ねぇ、エル」

 瞬間ルイスが目を見開き、完全に動きを止めた。両手首を掴んでいた手から力が抜けた。

「お願い、私にさせて?」

 自由になった指先で、ルイスの唇をなぞる。そして目を見開いたまま固まっているルイスの耳に唇を寄せる。

「……エル、私にさわられるのは嫌?」

 体に籠った熱を吐き出すような吐息と共に甘く囁く。耳たぶにキスして、外輪を舌先で舐め上げ、再びルイスの顔を覗きこんだ。





──────────────── 

鉄棒ぬらぬら先生
元祖触手、蛸と海女を描いた時の浮世絵師、葛飾北斎のペンネーム(最終的には画狂老人卍)

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