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だから言ったのに…R18

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「くっ…」

 目を開けると、殿下は眉間に皺を寄せて、何かに耐えるような表情をしている。彼のこめかみからつっーと汗が流れて、ぽとりと私の頬に落ち、曲線を描いて流れていった。

 呼吸が荒い。もしかして殿下も同じくらい痛いのだろうか。

「……大丈夫ですか?」

 必死に言葉を絞り出す。殿下は頭を横に振った。

「あまり…大丈夫じゃない。中…すごく熱い。気持ち良すぎて、少しでも動いたら持っていかれそうだ…」

 大丈夫ではないらしい。持っていかれるの意味はわからないけれど、動かないでいてくれるのはありがたい。時間がたつにつれて、本当に僅かにではあるが、身体を引き裂かれるような痛みが薄れていく。


 婚姻を結んだ女性達は、みなこの激痛に耐えなければならないのだと思うと、愛が無ければ無理だと思った。

 愛のない政略結婚を望んでいたけれど、そうなると好きでもなんでもない男とこんな行為をして、これ程の痛みに耐えなければならなかったのだ。そう考えると、少しだけ過去の自分の意見を改めたくなる。

 この痛みに耐えられるのは、いや、耐えたいと思えるのは、愛しているし、愛されているから。そう思うと涙が自然と溢れてきた。ぽろりと涙が溢れ落ちていく。



「……レティ…。大丈夫か? そんなに痛い?」

 ほんの一瞬、目を見開いた殿下は、私の目から溢れた涙を吸い取るように、目尻に口付けた。その仕草に、何故か切なさに胸が締め付けられ、同時に中がきゅっと締まった。

「つっ!!」

 殿下のものが、私の中でびくりと脈打つ。私の身体を引き裂くように入ってきた物の、大きさと硬さをまざまざとかんじる。私の耳元で殿下が熱い吐息を漏らした。

「レティシア…、レティシア…」

 殿下は荒い息の下で私をぎゅっと抱きしめて、何度も何度も私の名前を口にする。

「レティ…」

 甘くん切ない声で何度も名前を呼ばれて、情欲の篭った目で見つめられると、鋭い痛みの中に、甘い疼きが湧き上がった。

 気づくと、殿下に縋りついていた手を離し、彼の頬に両手を添えかすめるようなキスをした。

「愛してます。もう何年も前から」

瞬間、私の中に差し入れられた熱の塊が、ずくんと振動して、その大きさが増した。

「ああっ…」

体内を蹂躙して圧迫する熱杭にもたらされた衝撃に、私は喉をのけぞらせた。



「はっ。今のは…君が悪い。俺の、なけなしの理性が、飛ばされる」

 そう言った瞬間、殿下の唇が私の喉に押し当てられて、甘く噛まれる。痛みではない、痺れるような快楽が全身を駆け抜けて、私は彼からもたらされる感覚に酔っていく。

 吐息が顔にかかって、また唇が重なった。再び激しく口内を犯される。舌を絡めて吸い取られて、擦り付けられた。深いキスをかわしながら、彼がゆるゆると腰を動かし始める。再び焼けるような痛みに襲われ、必死に痛みから意識を逸らすように、私はただ、殿下の唇を貪った。

 彼を受け入れている下腹部が疼き、もっと違う何かがほしくてほしくて、ねだるように私の内壁は彼の熱を、私の中のさらに奥へと深く誘い込むように締め付けていく。



「くっ、ごめんレティ…。止まらない…」

 僅かに唇が離れた隙に、殿下が謝罪してきて、返事をする前に再び唇が塞がれた。

 室内に響く、お互いの荒い息と殿下の腰が動くたびにもれる水音が混じりあう。私の喉の奥からは声が絶えず溢れ続けた。

「あっ、あぁっ…」

「レティシア…もう少しだけ我慢して。レディ…」

 余裕を無くした彼の声が荒い息と共に耳に届き、きゅうっと内側が収縮して、私の中を擦り上げる熱の杭の動きに合わせるように彼の熱を締め付けた。

 瞬間、それまで私の様子を見ていた彼の動きが、明らかに別のものに変わった。ぐちゅぐちゅと淫猥な音を立てながら、緩急を付けた動きで、私を翻弄する、私はただひたすら彼の動きに身を任せた。

 私を揺さぶる彼の額に汗が滲じむ。その表情はあまりにも色っぽくて、扇情的で、私の中の情欲をかきたてるには充分すぎる程だった。私はただ、彼からもたらされる感覚の全てを受け入れた。



「はっ、んあっ…。ああっ」

 意味のない声が溢れ出て、必死に彼の背中に腕を回してぐっと抱きつく。酸素を求めて離れた口から、悲鳴にも似た嬌声がもれた。

「ああっ!!」

「レティ、…受け止めて」

 ふるりと彼の身体が震え、私の身体の中の塊が何度もビクビクと脈打つ。痛みでよくわからないが、彼が中で精を吐き出した事は予想できた。
 熱い白濁で内側が満たされたのが感じられる。私たちの交わった部分から溢れ出た白濁には、僅かにピンク色になった血が混ざっていた。







 殆ど出ないと殿下が言っていた筈の破瓜の血がシーツについているのを眺めながら、私は未だに何かが入っているようなジクジクと痛む身体で考えた。

 とても少ない確率で、私の破れた処女膜から出血したのか、殿下が下手くそなせいで、粘膜が傷ついて出血したのか。





 殿下から渡された、ピンクの小粒の避妊薬を飲んだあと、無表情でじっとシーツを眺める。私を後ろから抱きしめた殿下は、私の首筋に肩にと、何度もキスを落としていた。だが、振り返った私が殿下の目をじっと見つめると、殿下はとても気まずそうに、顔をそらせた。





 ちなみに、後日医学講師に聞いたところ、殿下の話は嘘ではなかったと言う事だけは判明した。

 だから私は結論付けた。ならば、私が出血した理由は、単に殿下が下手くそだったのだろうと。だって殿下がそう言ったのだから。


 あと、過去の女性遍歴を問い詰めた私に、バツが悪そうに殿下はつぶやいた。

「レティシアを好きだと自覚する前に、何度か、女性と付き合った。でも、女性を抱いたのは閨教育の時だけで、あれは授業だから…」と。言い訳を繰り返した。



へぇ? 授業ねぇ?

 今回のことでわかった事は、私は何故かこの平凡な王子様が思っていたよりも何倍も大好きで、あと、私の心は過去の女性にも嫉妬するほどに,とてつもなく狭いらしいということだった。

 だけど、ちょっと凹んでいるエリアス殿下も可愛くて、思わず全てを許してしまいたくなった事は殿下には内緒だ。
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