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みずいろの章 水樹
未来のために愛を誓う
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俺と桃子は、結婚の約束をした。
自分たちの意思と都合だけでは結婚できないことは理解している。親の離婚と再婚を経験している桃子なら、よく知っているだろう。
数々の問題をひとつひとつクリアしていかなければ、結婚というゴールにたどり着けない。自分たちの思いだけを貫こうとするのではなく、時間をかけて周囲を説得し、理解してもらう必要がある。そのためにはまず、何を言われてもじっと耐えて周囲の話を聞き入れること。そして共に生きたいという思いは本気なのだと認めてもらう。
今後どうすべきか、親が子に諭すように、桃子は丁寧に話してくれた。話すうちに桃子の表情がみるみる明るくなっていくのがわかった。普段の元気な彼女に戻っていってる。結婚という未来への希望を抱けたことで、生きる気力が湧いてきたのかもしれない。思いきってプロポーズして本当に良かったと思う。
「うん、こんなところかな。これから大変だと思うけど、一緒に頑張ろうね。水樹は一時の感情に流されやすいところがあるから、特に気をつけて」
「お、おう」
弱々しく泣く桃子を守りたくて、結婚を申し込んたはずだ。それなのに、いつのまにか立場が逆転しているような気持ちになるのは気のせいだろうか?
「なんだか私、はずかしいぐらい、はりきってるね。水樹が結婚しようって言ってくれたら嬉しくて、急に力が湧わいてきちゃったんだもん。上から目線でごめんね、水樹。許してくれる?」
頬を赤く染め、いたずらっぽく笑う彼女はたまらなく可愛かった。ああ、俺は桃子が大好きだ。
気づけば彼女をもう一度抱き寄せ、少し強引に唇を重ねていた。
彼女が欲しい、もっと俺だけのものにしたい。
口づけながら、ゆっくりと彼女を床に押し倒した。
「水樹……?」
少し不安そうに、俺を見上げている。はずかしそうな表情が、いじらしくてたまらない。
「桃子、おまえのこと絶対幸せにするから。だから、俺だけのものになれよ……」
小柄な体を押しつぶしてしまわないように慎重に体を重ね、ゆっくりと彼女の胸元にキスをしようとした時だった。
「はい、ここまで!」
両手をぐいっと俺の顔に押し付けながら、桃子は猛然と体を起こした。
「も、桃子……?」
「もりあがってるところ悪いけど、今はキスまでね。それ以上は結婚してからにしましょう!」
なんと彼女はここに来て、きっぱりと俺を拒絶したのだ。
「今はダメ。雰囲気に流されて次のステップまでいっちゃうと、水樹の性格から考えて周囲のことが見えなくなっちゃうでしょ?」
「う、それは……」
否定はできなかった。桃子と深く結ばれれば、その幸せにどっぷりはまってしまいそうだった。俺って人間は、一時の感情に流されやすいヤツだから。
「周囲に理解してもらって、結婚できてからにしましょう。そのほうが水樹はどんな困難にもめげずに頑張れるでしょ? コンテストの時みたいに」
そうだった。桃子からのキスというごほうびがあったから、ひたすら頑張れたし、目標を見つけることができたのだ。
どうやら彼女は俺自身より、俺のことを理解しているようだ。
「ちぇ……結婚するまで、おあずけかよ。待て! って命令されてる犬みたいじゃねぇか」
「ふてくされないの。私だって、心の準備ってものがあるのよ? こんな成り行きで関係が深まるのは嫌なの。だから、結婚できてからにしましょう。理解してくれる?」
手を合わせ、少し申し訳なさそうにお願いしてくる。赤らんだ頬のまま、上目遣いで見つめてくる彼女は、憎らしいほど可愛かった。
「ちきしょう、わかったよ! 頭冷やしたいから、シャワー借りるからな!」
「ありがとう、水樹。あなたならわかってくれるって思った。タオルはお風呂場にあるから、好きなの使ってね!」
ああ、俺はどうしてこんなにも桃子に弱いのだろう? 自分でも呆れるほどだ。
でも結婚すれば、彼女とずっと一緒にいられるんだ。共に暮らせることを考えると、身震いするほど幸せな気がする。きっと桃子も、同じ気持ちなのだ。
その幸せを思えば、どんな困難が待っていようと頑張っていける。改めて決意を固めながら、火照った体に冷たいシャワーを浴びせた。
自分たちの意思と都合だけでは結婚できないことは理解している。親の離婚と再婚を経験している桃子なら、よく知っているだろう。
数々の問題をひとつひとつクリアしていかなければ、結婚というゴールにたどり着けない。自分たちの思いだけを貫こうとするのではなく、時間をかけて周囲を説得し、理解してもらう必要がある。そのためにはまず、何を言われてもじっと耐えて周囲の話を聞き入れること。そして共に生きたいという思いは本気なのだと認めてもらう。
今後どうすべきか、親が子に諭すように、桃子は丁寧に話してくれた。話すうちに桃子の表情がみるみる明るくなっていくのがわかった。普段の元気な彼女に戻っていってる。結婚という未来への希望を抱けたことで、生きる気力が湧いてきたのかもしれない。思いきってプロポーズして本当に良かったと思う。
「うん、こんなところかな。これから大変だと思うけど、一緒に頑張ろうね。水樹は一時の感情に流されやすいところがあるから、特に気をつけて」
「お、おう」
弱々しく泣く桃子を守りたくて、結婚を申し込んたはずだ。それなのに、いつのまにか立場が逆転しているような気持ちになるのは気のせいだろうか?
「なんだか私、はずかしいぐらい、はりきってるね。水樹が結婚しようって言ってくれたら嬉しくて、急に力が湧わいてきちゃったんだもん。上から目線でごめんね、水樹。許してくれる?」
頬を赤く染め、いたずらっぽく笑う彼女はたまらなく可愛かった。ああ、俺は桃子が大好きだ。
気づけば彼女をもう一度抱き寄せ、少し強引に唇を重ねていた。
彼女が欲しい、もっと俺だけのものにしたい。
口づけながら、ゆっくりと彼女を床に押し倒した。
「水樹……?」
少し不安そうに、俺を見上げている。はずかしそうな表情が、いじらしくてたまらない。
「桃子、おまえのこと絶対幸せにするから。だから、俺だけのものになれよ……」
小柄な体を押しつぶしてしまわないように慎重に体を重ね、ゆっくりと彼女の胸元にキスをしようとした時だった。
「はい、ここまで!」
両手をぐいっと俺の顔に押し付けながら、桃子は猛然と体を起こした。
「も、桃子……?」
「もりあがってるところ悪いけど、今はキスまでね。それ以上は結婚してからにしましょう!」
なんと彼女はここに来て、きっぱりと俺を拒絶したのだ。
「今はダメ。雰囲気に流されて次のステップまでいっちゃうと、水樹の性格から考えて周囲のことが見えなくなっちゃうでしょ?」
「う、それは……」
否定はできなかった。桃子と深く結ばれれば、その幸せにどっぷりはまってしまいそうだった。俺って人間は、一時の感情に流されやすいヤツだから。
「周囲に理解してもらって、結婚できてからにしましょう。そのほうが水樹はどんな困難にもめげずに頑張れるでしょ? コンテストの時みたいに」
そうだった。桃子からのキスというごほうびがあったから、ひたすら頑張れたし、目標を見つけることができたのだ。
どうやら彼女は俺自身より、俺のことを理解しているようだ。
「ちぇ……結婚するまで、おあずけかよ。待て! って命令されてる犬みたいじゃねぇか」
「ふてくされないの。私だって、心の準備ってものがあるのよ? こんな成り行きで関係が深まるのは嫌なの。だから、結婚できてからにしましょう。理解してくれる?」
手を合わせ、少し申し訳なさそうにお願いしてくる。赤らんだ頬のまま、上目遣いで見つめてくる彼女は、憎らしいほど可愛かった。
「ちきしょう、わかったよ! 頭冷やしたいから、シャワー借りるからな!」
「ありがとう、水樹。あなたならわかってくれるって思った。タオルはお風呂場にあるから、好きなの使ってね!」
ああ、俺はどうしてこんなにも桃子に弱いのだろう? 自分でも呆れるほどだ。
でも結婚すれば、彼女とずっと一緒にいられるんだ。共に暮らせることを考えると、身震いするほど幸せな気がする。きっと桃子も、同じ気持ちなのだ。
その幸せを思えば、どんな困難が待っていようと頑張っていける。改めて決意を固めながら、火照った体に冷たいシャワーを浴びせた。
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