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第十五話 アムステリア帝国魔力大会2

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「お疲れ様イツキ! 私、今日は長くなると思って、サンドウィッチを持ってきたの。どう、かな??」

リリーのほうを見ると、かわいらしい茶色い入れ物をもっている。何も持ってきていない俺に対しリリーはいつも用意がいい。おなかも空いたことだし、リリーの手作りサンドウィッチを食べない理由はない。

「ありがとう!! いただくよ!」そういうと

「実は私も腹が減るだろうと思ってな。弁当を作ってきたのだが、どうだ、食べないか?」

イリアは戦闘以外に無関心だと思っていたが、意外にも用意がいいらしい。部屋も綺麗に片付いているしギャップがあり少しドキッとする。そんなイリアを見るとそこには美味しそうな色とりどりのおかずが入っていた。とても美味しそうだ。これも食べないわけにはいかない。

俺はイリアの弁当も手に取り、食べていると、ユニ先生の姿がどこにも見当たらないことに気づいた。またどこかで油を売っているのだろうか。そう思いながら弁当を食べていると

「そういえば、イツキ。さっきユニ先生が言ってたのだけど、次の相手のミラニド学院は新設の学校だけど、とても手ごわいらしいわ。なんでも、ラムース大陸の優れた生徒と先生を編入させているらしいの」
「ラムース大陸の有力生徒か。どれほど強いかわからないが全力でがんばるよ!」

そういうとリリーは嬉しそうに微笑む。ラムース大陸の優れた生徒。実力は未知数だが、おそらくこの学院のA組ほどの実力だろう。だとすれば、今の俺の実力だと到底勝てるわけがない。なぜかリリーとイリアは俺の事を過大評価しているが、俺は強くはない。そのまま戦えば勝てないかもしれない。後で、D組の皆と作戦会議をしなければ。




俺はリリーとイリアと楽しく昼食を取り終えた後、作戦を立てるためにD組の皆を呼び集めた。

「聞いてくれ! 次に当たるアミニド学院は新設の学校だが、名門クラスの生徒が混じっているらしい。だから、少しでも確率を上げるために作戦をたてよう!」

俺がそういうと、頷いている生徒や疑っている生徒もいる。やはり、誰も俺の言葉など信じてくれないのかもしれないと思っていると

「もしそれが真実だとして、『らしい』ってその情報はどこから聞いたものなの」

俺の言葉を信じてくれているようだ。情報発信源がきになるらしいが、ここでユニ先生が情報源だと言ったら、ただでさえラムースの人間で信用がないのにややこしいことになってしまう。これを言うわけにはいかないだろう。

「それは言えないが――」
「それを言ったのはあたしだよ」

どこから現れたのだろうか。それとも元々ここにいたのか。一切気配を感じさせないユニ先生は俺の隣にいた。

「あたしはラムースの人間だから知っているんだ。ミラニド学院は皆も知っている通りミラニド信仰を持つ学校で、ラムースの民が絡んでいる。んで、ラムースの優れた学生を送り込んでいるわけ!!」

ユニ先生がそう明るくいう。だけど、ユニ先生の言葉を信じられない学生が大半なのか怪訝な表情をしている。A組の生徒以外、ユニ先生の素顔を知っている生徒は少ないないから無理もない。

作戦なしで戦うしかないのかと思っていると

「その情報が嘘か本当かどっちにしてもよぉ、作戦を立てないで戦うより立てたほうが勝つわけだろぉ。やる価値はあるぜぇ」

少しだるそうに、ポケットに手を突っ込ませながらナッツゥが言っていた。

ナッツゥは意外にも頭が切れるらしい。ナッツゥの言う通り、ここで作戦も立てず1 vs 1を行うよりずっと勝率が上がる。そう思って周りを見渡すと周りの生徒も頷いている。今がリリー達と考えた作戦を言うチャンスだろう。

「ナッツゥの言うとおりだ。作戦だが、2班に分けようと思っている。一班はラムースの生徒に、もう一つの班は他の生徒に」
「でもよぉ、人数配分はどうするんだぁ? ラムースの生徒がどれだけ混じっているかわからないだろぉ?」

さすがナッツゥだ。ナッツゥの言う通りラムースの生徒がどれほど混じっているか未知数だ。

「それについては、初めに俺が前に出て強者の衣マジカルアーマー を発動させ敵を扇動させ攻撃を俺に向けさせる。そうすれば、実力者がわかるはずだ。あとは、実力者に応じて分配しよう」
「なるほどよぉ。じゃあ、その作戦で行くことにしようぜぇ」

あれほど牙をむいていたナッツゥも今では俺の言うことを聞いてくれる。俺もどうやらD組の皆と仲良くなれたようだ。

「うんうん!! いい作戦じゃねーか!! さすがはイツキといったところか!! じゃあ、その作戦で決まりだな!」

俺たちは皆頷くとユニ先生は真剣な顔で

「もし危険って感じたらすぐに降参するんだ」

これほどまでに真剣な表情をしているユニ先生を俺は見たことがない。きっと優れた生徒はとてつもなく強いのだろう。気を抜いてかかったら、きっと大怪我を負うことになる。

俺たちは気を引き締めて、競技場に向かった。



「続いての試合は!! 名門アムステリア学院 vs 謎の新設校、ミラニド学院です!! 準備はいいですね! では、スタート!!」

司会者がそういうと、観客席からは大ブーイングが巻き起こっている。どうやら、アムステリアの人達はアミニド教が大嫌いらしい。そんなことを考えている場合ではなかった。俺はすぐさま強者の衣マジカルアーマー を発動させると扇動すべく皆より、前に出る。

前をみるとミラニド学院の生徒はこちら側に向かって走ってきていた。

「きけ!! ミラニド学院の生徒共!! お前らなんて名門アムステリア学院の俺一人で十分だ。さあ、皆まとめてかかってこい!!」

俺がそういうと、顔を赤くしながら走ってくるもの、冷静に俺に向かってくる者。反応は違うが俺を先につぶそうと詠唱しながら向かってくる。

これならば、ラムースの人間が炙りだせるだろう。そう思っていた。

いつの間にだろう。俺は空中を舞っていることに気づいた。青い髪をした男の黒い炎の技はなんだったのだろうか。魔力も高いが、見たこともない技だ。強者の衣マジカルアーマー はあれに耐えることができなかった。肩とふとももに激しい痛みを感じる。みると、血が流れているが、致命傷ではない。まだ戦えそうだ。

「名門って言ってたから、どれほど強い奴が相手なのかびくびくしてたけど、この程度かよ。呆れるぜ。これなら、逆に俺一人で大丈夫そうだな。全員でこいよ!! まとめて相手してやるよ」

そう青い髪をした短髪のツンツンヘアーの男が言っていた。まだ体は痛むがこれは好都合だ。青髪は強いが、他にここまで強い相手はいない。作戦通り動けばまだ勝機はある。俺はそう考えると、D組の皆に「ナッツゥと他3人はこっちに来てくれ!! 残りは他の生徒を頼む!」と伝えると、迅速にD組の皆は行動しいる。

「でよぉ、Aクラスほどの化け物はどうやって倒すんだぁ?」

確かにこの短髪はA組程の実力があるだろう。だが、1 vs 5なら勝機はある。

「俺とナッツゥが前衛をし、相手の攻撃を防ぐ。その間残りの3人はフリーで攻撃をしてくれ」

俺がそういうと、皆は頷きそれぞれの持ち場に向かっていた。

「話はおわったかー、じゃあ行くぜ! ニドの神々よ、俺に力を与えたまえ 闇刀!!ダークブレード 、身体強化!!」

短髪はそういうと、サミーのように柄から禍々しい闇が覆う刀が出現しとてつもない速度でこちらに向かってくる。俺とナッツゥは青髪の攻撃を避けようとしたが、攻撃を喰らっていた。ナッツゥを見ると、直撃したらしい。これ以上戦えないだろう。

「この攻撃を受けても無傷とはなかなかやるじゃないか! 俺はミドの神々の加護を受けた、ニールだ。お前の名前はなんていうんだ?」
「イツキだ」

会話をしている間に後方の攻撃部隊がスピア30本、矢100本、砲撃20をニールに飛ばすが、ニールはそれをいとも簡単に盾を出現させガードしていた。

「せっかく、ちょっとはやる奴の名前を聞いていたのに、不意打ちとはね。ちょっくら、やっちゃいますか。 闇矢!ダークアロー 

ニールがそう詠唱すると、見たところ1000を超える黒い矢が後方の3人に直撃していた。なんという魔力と練度だろうか。

「もっと楽しみたかったが、時間もないからイツキもやっつけちゃうよ。ニドの神々よ、俺に力を与えたまえ! 闇光線!!ダークレイ 

ニールの周囲にある闇魔素が前方に集まっていき、巨大な禍々しいミラーの様になっていた。これが直撃すればまず間違いなく重症だ。だが、止める手段が今の俺にはない。

考えているうちに俺は直撃していた。全身が鉛のように重い。俺の体は傷だらけになっていた。立ち上がるだけで精一杯だ。これからどうするか考えたが、解はいくら探してもない。

いや、前に一度だけ天使が現れたことがある。あいつをもう一度出現させることができれば勝てるかもしれない。俺は目を瞑り全意識を光の魔素に集中させる。だが、いくら待ってもやつは現れる様子はない。

「くそ、ダメか!!」

「光よ!俺に力をかしてくれ! 光球!!ライトボール 」俺は光球を駄目で元々で詠唱する。光魔素が周囲に集まり球となっていく。が、まだこれでは十分な大きさはない。まだだ。もっと大きく。

「ほぉ、まだやるのか。潜在能力は一流だな。だが、終わりにして――」

意識が遠のく。突然周囲が光魔素に包まれたのは覚えているが、目の前にいる倒れた男は誰だ。ここはどこだろうか。
ああ、ダメだ。落ちる...... 俺は意識を失ってた。
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