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しおりを挟む「う~~ん…………」
私は今、朝だと云うのにスケッチブックと睨めっこをしている。
今日はお休みという事もあり、新しく何かを作ろうと開いてみたのだが中々これが進まない。
「そんな時はっ」
私は机の引き出しから鍵付きの箱を取り出しす。これは魔道具だ、ちょっとやそっとでは開けられない。
いつも付けているネックレスを取り出し魔力を送る。
「(出ておいで)」
そう願うと鍵が出て来る。このネックレスは私の魔力にしか反応しない収納式制約魔道具だ。
勿論、私が作った物では無い。魔道具は専門外です。
箱を開け、中身を取り出す。
そこにはこの間エル様に見せたお爺様の秘伝書が入っている。
「お爺様、お知恵お借り致します」
ペラリ、ペラリと捲ると現れる、膨大な数の道具達。その内の何個かはお爺様自らが発明した物も有るが、十分の一にも満たない。それだけここには夢と希望が詰まっているのだ。
「ここだわ」
私は一つのページで止まると、吟味を始める。
そのページには【筆記用具】と書かれている。
万年筆、マジック、鉛筆、消しゴム、はさみ…、絵と利点と難点の簡単な説明が書かれたそれは本当に魔法では出来ない夢の道具だ。
内務はほぼほぼ書類仕事だ。出来るならやはり、こういう物を作りたい。
ヒントを得る為に穴があくほど真剣に見る。
「ボールペン……」
ふと、一つの筆記用具に目がいった。
それは筒の中にインクが入っており、ペン先の小さいボールが回転する事でインクが出て文字が書けるという物だ。
現在、この世界に有るペンというのはペンをインクに浸してそれをペンが吸い上げて文字を書くという物。
ペンとインクを絶対にセットで使わなくてはいけないし、インク飛びで汚れてしまう事も有る。
それに比べると、この【ボールペン】という物はペンだけを持ち歩けば良いしインクを飛ばしたり、零したりする心配も無い。
見付けた瞬間にコレだ、と思った。
簡単な説明だけなので構造は自分で考えなくてはいけない。
私は、お爺様の秘伝書を丁寧に直してもう一度スケッチブックと向き合う。
そして、サラサラとイメージ書きを始めた。
「まずは、インクを貯めておける所が必要ね。ここを筒状にして…、そこにインクを入れる。
問題はペン先からどうやって均一に出し続けられるかね…」
【ボールペン】とやらはペン先に小さいボールが入っているという。
私の魔力で金属のボールを作る事は出来るが、ペン先に入る程の小さな小さなボールを作るのは今の現状では難しそうだ。
「ボールに拘らなくても良いかな、均一にインクが出せれば…」
ずっと出続けたらインクは直ぐに無くなってしまうし…、防波堤の様な物が必要だ。
力を入れると開く様な物にすれば良いのかしら。複雑になればなるほど、コストが凄く掛かりそう…。
思い付いた事は全部スケッチブックへと書き殴る。
頭を捻りながら、うんうん唸っているが一向に良い案が出て来ない。
とりあえず、形だけでも【ボールペン】に似た物を作ってみようと今有る各種材料の在庫を確認する。
「あら、金属類の在庫が殆ど無いわ」
実家から持って来た大きな木箱の中には種類事に分けられた材料が有り、そこの金属類が殆ど消えている。
最近、張り切って色々作り過ぎていたのだろう。
「どうしましょう…」
いつもはお父様の外交の際について行っては、弟を遠乗りへ連れ出して山々へ繰り出しそこで適当に調達するのだ。弟は頭の良い子なので道を覚えてくれるからね。
今はまだ婚約者とはいえ、既に家を出てしまったので出るにはエル様の許可がいるだろう。
コンコン
「はい」
『ロレッタ様、エルフィング様からお茶のお誘いを仰せつかりました。どうなさいますか?』
「畏まりました。参ります」
タイミング良く、エル様がお茶に誘って下さったのでエル様に一度家に帰れないか聞いてみよう。
あぁ、早く作りたいな。
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