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7 ※エルフィングside

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「また……どうしたんだこれは?」


「お、お帰りなさいませエル様!こ、これには深い訳が……」

パタパタと急いで走って来たロレッタは息を切らしている。
邸の玄関前には彼女が作ったであろう物が沢山有った。

「エル~お帰りなさ~い!見て、見て!」

「母上……」


母上はロレッタが作ったであろう物を、これでもか!と身に付けていた。
ガシャン、ガシャンと歩いてくる母上にロレッタがオロオロと手伝いに行く。


「ぷっ、くくくくく」


今日有った嫌な事を全て忘れた。

その光景は私を癒し、笑いを込み上げさせる。
二人はいつの間にかとても仲良くなった様だ。
母上は明るい性格だが、個性が強めなのでロレッタの様な構いたくなるタイプの人間が合っているのだろう。

「あら、エルがそんなに笑うなんて久々に見るわ」

母上はキョトンとしているが、尚更可笑しくなってしまう。

「母上、戻りました。くくっ。
ロレッタ、大体の予想は付く。ただいま。
着替えて来るから後で聞かせてくれ」

「はい!お待ちしております」

広げられた道具達を侍女に持って行かせて、一度部屋に戻る。


近頃は散々だった。
追いかけ回される日々に解放されるかと思いきや、「嘘なのですよね?」やら「偽装結婚だとお聞きしています」やらを言ってくる御令嬢ばかりだった。
私は仕事をしているのに、だ。
身分が高めな御令嬢が多いので、他の者では追い返す事も出来ない。
短い時間の中、仕事をするこっちの身にもなって欲しい。


と、中々疲れて帰って来たのだが吹き飛んでしまった。
ロレッタと婚姻を結ぶ事にして良かった。

着替えが終わると食事の席に向かう。


「お待たせしました」

「えぇ。ねぇ、エル?聞いて?
ロレッタちゃんの発明品はどれも面白い物ばかりなのよ?何か新しい生物も生まれていたわ!」

「お、お恥ずかしいばかりです…。私の失敗ばかりの発明品をお義母様はとてもお上手に扱えるのです、驚きました」

「ふふふ。たとえ失敗だとしても、発想はどれも悪く無いわ」

「そうだったのか。母上ならば納得ですね。
ロレッタ、夫人教育の方はどうだった?」

「はい。ラン=デルフィニウム様の教えはとても分かりやすく、身が引き締まりました」

「ランも『久々に素直な生徒で嬉しい』と言っていたわ」

「成程。頑張ってくれて、有難う。
数日は休みにしたので、明日からは暫く一緒に居られる」

「え!そうなのですか?」

「あぁ。迎えに行く迄に終わらせたかったのだが、今日迄は行かなくてはいけなかった事を許して欲しい」

「いえいえ!お疲れ様です、お忙しいのに有難う御座います」

「はは。発明の事をもっと詳しく聞かせて欲しい」

「是非に」

「ふふふ♪楽しそうね、私は明日から少し忙しいから…また色々聞かせてね、ロレッタちゃん」

「はい、お義母様」


二人はニコニコと笑い合っている。

自分の妻になる人間像を全く持てなかった俺だが、ロレッタなら安心出来そうだ。
少々、家族の仲が良い家だからな…ゲイルの妻や、カレンの夫も例外では無いし。


休みをもぎ取って正解だったな。
明日から知る彼女の事が、とても楽しみだ。
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