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「これこれ!懐かしいよ!」

私は、あのパラパラ漫画をライラックに手渡す。

ライラックはそれをパラパラ捲って、何故か直ぐに閉じ悶絶し始めた。



「「「?」」」


よく分からずその奇行を皆で見つめていると、真っ赤な顔をしたライラックが口元を抑えながらモゴモゴと喋り出す。

「…コレ、【ライラック】が俺になった時に書いたやつや……」

「えぇ!?」


まさかの作者がここに居た。



「ちょっと待って…めっちゃ恥ずかしいねんけど…、何でコレこんなとこにあるんや!!」

「師匠から普通に買ったが?」

「売ってる!?待って、待って!作者にジェニー来てませんけど!?」

「そうなのか?」

「誰や………あ!!!!あんの、ババア!」

「ババア??」

「ゲイル、それ聞いちゃダメ」

「こんな事すんの、アイツしか考えられへん!」

がぁーーーー!!とライラックは頭を掻きむしっている。



「あいつとは?」

「あ~、アンバート嬢よぉ聞いてくれた。ラン=デルフィニウム、知ってる?
結構有名な人らしい。俺が先生なる時に若干世話になった人なんやけどな。【ライラック】が俺になった時に偶然会ってコレ見せた事が有るんや。物知りやからな、こういうの見た事無いかって聞く為に描いてんけど…。

こういう物は無い、売るつもりは無いかって聞かれたわ。
利き腕ちゃうからまだ慣れてなくて、ヘッタクソやったから恥ずかしくてな。
サクッと描いたパラパラ漫画やし上手くなったらお願いします、言うてん。
本人はめっちゃ気に入ってくれて欲しい言うから、あげたんや。

そ、れ、を!!!売ってる!!!」

叫びながらライラックはピーという音で修正されるような事を言っている。
脳みそは吸われたくないな。
紳士、淑女の2人は蔑んだ目で見ている。

「え、じゃあこの【リラ】ってライラックさんの事?」

「あぁ、そうや。
漫画の登場人物で名前に困るとするやろ?そしたら、花の名前とか花言葉とかも調べたりするねん。
ライラックは花や、別名が【リラ】…。
やからリラや…、って何でペンネームの由来まで…恥ず過ぎやん」

恥ずかし過ぎて項垂れてしまった。
ライラックとはかけ離れ過ぎた彼。

「じゃあ、貴方はリラね」

カレンがサラッと答えを出してくれた。
私も転生者の彼はライラックにはどうしても思えない。だが、見た目はどう見てもライラックなのだ。
それは、あべこべでとても脆く感じる。
彼自身もそれは感じていたのだろう、カレンの言葉に驚愕し
そして破顔した。


「…それも、そうか。俺は、リラやな」

「貴方の事、リラって呼んでも良いのかしら?」

「ええよ、なんか俺もその方が気が楽や。転生者やからかな?他の事は思い出せても前の名前は覚えてないねん」


ライラック改め、"リラ"は何だか憑き物が落ちたかのように笑った。
目がキラッと光った気がしたが、皆見ていないふりをした。


「よしっ。【ライラック】も、ええって言ってるから皆は俺の事【リラ】って呼んで?敬語も要らんで?その代わりやけど…、皆の前では素のままの自分でおってもええかな?」

リラはライラックに確認をして、皆は各自了解の返事をする。
仲間がまた1人増えた気がして、何だか嬉しい。
ライラックとは友達になれるか分からないけど、リラとは友達になれそうだ。

「そうだ、リラ。言うタイミングが無かったが、デルフィニウム夫人は俺も師事している」

「え、マジ?ゲイル、先生志望なん??」

「あぁ」

「へぇ~!似合う!めっちゃ向いてそう!」

「…ありがとう」

「俺、こうなってからボロ出そうやし元々国の情けでなった職業やったからライラックがめっちゃ嫌がっててな。闇属性教えるだけやったし、闇属性少な過ぎるやん?まず、教える人本間居らんねんけども。古傷が~言うてこっち来て正解やったわ」

「それで逃げ惑っていたのね…」

「そやった!アンバート嬢、教え子やったか。ライラックは極端な人嫌いやしな~。真面目で勤勉、そして将来有望なアンバート嬢は僻みの対象やったみたいで、ちょっとでも邪魔したろうと思ってたらしいわ。あ、余計な事言うなってめっちゃ怒られる。
俺から謝るわ、ごめんな?」

「気にしないで。私も、カレンで良いわ」

「カレン嬢、良い奴やな♪」


「カレンは天使だから。あ、女神様?」


「ちょっとマリー、何言ってるの」

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