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『カレン、マリーお茶にしないか?』
「ゲイル?今行くわ」
泣き腫らしたカレンの目に侍女さんにお願いして冷たいタオルを乗せ、フェイスマッサージをしていたらゲイルの声がした。
少し目の腫れが引いていたので、鏡を見せる。
「マリー、私外に出て大丈夫な顔かしら?」
「ん~、良く見なければ気付かれないとは思うよ」
「良かった…、では行きましょう」
部屋の外に出るとゲイルが居てカレンの頭を撫でる。
きっと、バレているのだろうが何も言わずに歩き出している。
部屋に着くとファミーユ様が既にお茶をしていた。
「カレン、落ち着いたかしら?」
「はい、お母様。ご心配をお掛けしました」
「良かったわ、また一つ大人になった顔をしているわね」
「ありがとうございます。季節が明ければ私は16になります、婚約者選定の件進めて下さい」
「…良いのね。分かったわ。
さ、皆立って無いで。座って?」
ファミーユ様が声を掛けてくれたので各自椅子に座ると、ケーキと紅茶が並べられる。
「ゲイル、これは…」
出てきたのは爽やかなレモンのアイシングがされているケーキだった。
カレンはケーキを目の前にしてとても驚いた顔をしている。
「カレンが1番好きだったと記憶しているが、違ったか?」
「えぇ、1番大好きよ。覚えていてくれたの?」
「お口に合うか分からないが」
「手作り!?」
「マリー、そんなにびっくりする事か?」
「あ、ごめん。売り物みたいに綺麗だったから…」
「それは、光栄だな」
まさかの手作りにカレンもファミーユ様も驚いている。
そして、そのケーキを一口頬張る。
「あら、とても美味しいわ。ゲイルにこんな才能があったなんて」
「本当…、私が好きな味よ。凄いわ」
「美味し~い!ゲイル、教師も良いけどパティシエにもなれるよ!」
「パティシエが何か分からないが…皆、ありがとう」
口々に賛辞を述べているとゲイルが花が綻ぶように微笑んだ。
その笑顔にファミーユ様はとてもびっくりしている。
カレンは1度見ているのでニコニコ嬉しそうだ。
「驚いたわ、ゲイル。教師になりたいと言って来た事も驚いたけれど、貴方とても良い顔をしているわ。マリーちゃんとの婚約は正解だったわね」
ファミーユ様は優しく目を細め、ゲイルを見つめた。
ゲイルは良い顔とは?と疑問符を沢山浮かべているが、私は理解してしまったので真っ赤っ赤である。
そんな私達を見てファミーユ様とカレンは目を合わせてクスクス笑っている。
似た者親子だ。
「マリー。マリーはゲイルと上手くいってね」
コソッとカレンが耳打ちしてくる。
追い討ちは止めて欲しい。
どうなるか分からないでは無いか、そんな嬉しそうに言わないで。
その後も、和やかなお茶会が続き
ファミーユ様には全身マッサージを施し、
カレンには作っておいたバスソルトを手渡す。
そして、カレンと何日か後に図書館に行く約束をした。
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