近接魔導騎士の異世界無双~幼馴染の賢者と聖女を護る為、勇者を陰から支えます!!~

華音 楓

文字の大きさ
上 下
92 / 97
第5章 第0騎士団

第8話 討伐準備

しおりを挟む
 執務室を後にしたルーズハルトは、自室に戻るとすぐに対応を開始する。
 とはいうものの持っていく荷物はさほど多くはなく、隊として動くことにはさほど支障はなかった。

「それにしても冒険者ギルドもやってくれたよ……」
「仕方がありません。当時の事を調べましたが、さほど脅威だとは思わなかったようですね。」

 ルーズハルトはただぼやいたつもりだったが、それをイザベルが拾い起こす。
 その返答にあまり満足が行っていない様子のルーズハルトに、イザベルからため息が漏れた。

「それにその当時対処していたとしても、結果は変わらなかったと思います。」
「どういうことだ?」

 訝しがりながらイザベルに問うルーズハルト。
 イザベルも詳しく答える気はなかったようで、ルーズハルトの執務机に置いた資料を指さした。
 そこに記載されていたのは各地で目撃されていたモンスターの集団行動に付いての報告書。
 以前から上層部から情報は降りてきていたが、ナンバーズが対応する案件ではないと判断され、こうして資料のみが渡されていた。
 ルーズハルトもそれほど気にしてはいなく、冒険者ギルドが動けば問題ないだろうと判断していた。
 だが蓋を開けてると冒険者ギルドは動いておらず、モンスタースタンピード目前まで差し迫った状況に陥っていた。

「だからと言って変わらなかったって話にはならないだろう?」
「それだけの数が自然発生したとでもお思いですか?それならあなたは相当のお花畑の持ち主だということですね。」

 何やら普段に増して棘の多い答えに、一瞬たじろいだルーズハルト。
 若干の悔しさを滲ませつつも咳ばらいをして話の先を急がせる。

「離れた距離での観測でしたが、魔力の歪みが確認されました。おそらく転移ゲートが設置されている可能性が高いでしょう。」
「転移ゲートって……魔導具……いや、アーティファクトクラスか……そりゃ騎士団を動かすわけだな。」

 納得の表情を浮かべるルーズハルトに、またしてもため息をつくイザベル。
 どうやらイザベルとしてはその答えに納得がいっていない様子だった。
 ルーズハルトはイザベルの態度に苛立ちを隠せないでいた。

「それだけではありません。騎士団が動けばナンバーズが動く口実が出来るでしょう。そして動いたとしても周囲にばれない。つまりあなたが動きやすくなるってことです。それすら分からないのならば今すぐその命を絶ってください。そして私に神力を返しなさい。」

 言いたい放題のイザベルに、ルーズハルトは若干の怒りを覚えたが、ここでこれ以上突っかかっても仕方がないと半ばあきらめて矛を収めた。
 イザベルはルーズハルトの見せた表情が気に入ったのか、軽く鼻で笑う。
 ルーズハルトはより一層悔しさを滲ませていた。

「で、部隊の準備は大丈夫か?」
「当然できています。第13騎士団所属を経由して、第5騎士団に出向。そこから第3騎士団に応援として出動します。その際は第5騎士団第1大隊第8中隊第1小隊隊長として行動してもらいます。」

 まためんどくさいなと感じつつも、隊のバッチをガサゴソと机から探し出すルーズハルト。
 その引き出しにはいくつものバッチが収まっており、目当てのバッチがなかなか見つからないことに苛立ちを見せる。

「あったあった。第13と第5の騎士団バッチ……それと小隊長徽章と……この隊服にバッチが増えるのどうにかしてもらいたいな。」
「規則です。」

 ツンとした態度を崩さないイザベルに辟易するルーズハルト。
 あらかた執務室での準備を完了させたので、第13騎士団の隊舎へ移動することにした。

 第13騎士団の隊舎は第0騎士団の隊舎の近くにある。
 その騎士団の特性も特殊で、基本的には遊撃部隊に近い物があった。
 基本的指揮系統はある物の、中隊単位で独立した指揮権が与えられていた。
 それは各騎士団の大隊長に意見し、大隊長もそれを無下には出来ない程の権限。
 第1から第12騎士団は総団長及び元帥の指揮下にある。
 しかし第13騎士団だけは国王直下の管轄となるからだ。
 その為各大隊長からは煙鷹がられる存在でもあった。
 しかしその実力は折り紙付きで、切り札とも言える。
 
 今回は調査補給を主任務とした第5騎士団所属として配置されるルーズハルト。
 理由として上がれられたのは第3騎士団の存在だった。
 彼らはどちらかと言えば貴族派が大多数を占める騎士団で、騎士団長は公爵家の当主でもある。
 しかもこの騎士団長は数代前の王弟を先祖としており、今代に至ってもその遺恨を残したままとなっていた。
 数代前の王弟が簒奪を企てるも事前にその目をつぶされ、ほぼ権力を持たない公爵家として半ば追放される形となった。
 これも当時の国王の最後の情けともいえるもので、殺されるよりはましだろうと考えての事だった。
 しかし当時の王弟はそれを逆恨みし、現代にいたっているというわけだった。

「それにしても面倒以外に他ならないな。さっさと終わらせて返ってきたいものだよ。」
「愚痴をこぼしたところで何も変わりません。今度こそは問題を起こさず、速やかに事態解決に励んでください。」

 イザベルの棘のある言葉に、ルームメイトは軽く手を振ってこたえる。
 理解しているのか不安に駆られるイザベル。

 こうして二人はかの戦場へ赴くことになったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...