91 / 97
第5章 第0騎士団
第7話 モンスタースタンビードの原因?
しおりを挟む
「ただいま戻りました。」
「お疲れさん。どうだった?」
報告書を片手にイザベルはルーズハルトを見下ろしていた。
そして軽く鼻で笑うと、そのままその報告書をガルガットに手渡す。
ガルガットはその報告書に目を通すと、顔をひどく顰めさせた。
それだけでルーズハルトにも状況が伝わっていた。
「思いのほか状況が悪いな。」
「はい、すでにいつ暴走してもおかしくない状況です。下手に刺激すればそれだけでスタンピードに発展します。やはり半月前の状況で対処できていなかったことが問題だったと考えられます。」
私見を述べたイザベルは再度ルーズハルトを見下ろし、鼻で笑う。
言外に「私は仕事をしている」アピールをされている気分にルーズハルトは顔を顰める。
それに満足したのか、うっすらと笑みを浮かべルーズハルトの後ろに移動するイザベル。
そのやり取りを見て、ガルガットは自分の人選が間違いで無かった事を確信していた。
「バラック、至急ギルドにこのことを報告。冒険者を問題地点に近づかせないようにしてくれ。それと騎士団にも出撃命令を発令。第0騎士団はそのフォローにあたる。」
「敢えて騎士団に?あぁ、なるほど、わかりました。」
ガルガットの意図を察したのか、バラックはニヤリと笑って執務室を後にする。
その笑みは見るものを瞬時に凍り付かせるかのようだ。
「では私は任務に戻ります。」
「ご苦労。あぁそれと、再調査を頼むと思うから、君の部隊にもそのように伝えてくれ。」
イザベルはガルガットに黙礼をすると、そのまま執務室を後にする。
その際ルーズハルトには目もくれずに。
ルーズハルトもイザベルの態度は面白くはなかったが、別段それを気にするつもりはなかった。
それよりも依頼をどうするかというほうに意識が向いていた。
「さすがに俺一人でスタンピードを止めてこいなんて馬鹿なことは言わないだろう?」
「俺だってそこまで鬼じゃない。ただこれは恐らくだが……間違いなくスタンピードは発生する。しかも人為的に……」
一瞬にしてガルガットの表情が険しくなる。
ルーズハルトは今まで聞かされてきた機密情報を思い返してみるも、差し当たってスタンピードを人為的に起こそうとする動きは感じられなかった。
つまり、ルーズハルトが知らされていない情報をガルガットは保有しているということ以外ありえない。
「止められないのか?」
「止められるなら最初から止めてる。だが、まさかギルドにまで手が回っているとは思わなかった。だからこそ、ギルドは黙認してきたんだろうな。」
これでやっと疑問が確信に変わったルーズハルト。
言外に貴族のかな……というよりは騎士団の中にスタンピードを起こそうと画策していた者がいるのだろうと。
「そいつをとっちめて終わりってわけにはいかないってことか。」
「そうだな。これほど大きなスタンビードが自然発生するのは考えられない。そうなれば何か別の要因だろうな。」
調査報告書を再度読み始めたガルガット。
何かを考え込むように、俯いては天を仰ぎ、何を口の中で反芻する。
それを何度も繰り返すうちに、何かの事象にたどり着いたようだった。
「〝魔王〟?いや、しかし……」
「今〝魔王〟って言ったか?」
ガルガットの言葉にピクリと反応するルーズハルト。
ルーズハルトの頭にそれと反するように〝勇者〟という言葉がよぎる。
〝魔王〟と〝勇者〟
物語上相反する立ち位置の二つの存在。
事前に創造神【エルネス】より聞かされていたとは言え、半ば半信半疑だった。
だがここにきてその片鱗がわずかに見え隠れしてくる。
それを意識した途端、ルーズハルトの心にゾクリとした悪寒が首をもたげた。
「どうしたルーズハルト。」
「いや、なんでもない。とりあえず俺は何をしたらいいんだ?」
先ほどの悪寒を一旦思考の隅に置きソファーに深く座りなおすルーズハルト。
ルーズハルトの問いに、ガルガットは資料の一部をルーズハルトに手渡した。
そこに記載されていた内容は、〝教団〟と呼ばれる組織について。
一般的に〝教会〟と言われれば、万人がティセアルス教を思い描く。
これは惑星【イグニスタ】全域に布教活動を行った教国【ティセアルス】の努力の賜物と言える。
だが、〝教団〟と言うものはこれまでのルーズハルトの生の中で聞き及んだことは無かった。
「この〝教団〟ってのはいったい……」
「おそらく〝魔王〟復活を企む組織……と目されてる者たちだ。」
ガルガットの言葉から、第0騎士団ではすでに〝教団〟についての情報をつかんでおり、上層部では秘密裏に調査を行っていたことがうかがい知れた。
だが、確証が無くいまだ疑いの段階だった推測できた。
「つまりそいつらが陰でこそこそしてやがるわけだ。その討伐が今回の依頼の本筋か?」
「そう言う事だ。それと〝教団〟については他言無用だ。バラックが上手い事騎士団内に餌を撒く。ルーズハルトはいつでもスタンビードを鎮圧できるように準備を進めてくれ。それと、現時刻をもって第5騎士団第1大隊第8中隊第1小隊隊長として行動をするように。第5騎士団にはこれを渡してくれ。」
ルーズハルトはガルガットから一通の〝黒い封筒〟を受け取る。
それは国王と同等の権限を与えられた者のみが所持を許される封筒である。
そのことからもこれがナンバーズとしての依頼であることが容易に想像できた。
封筒を受け取ったルーズハルトは、深いため息とともに、執務室を後にしたのであった。
「お疲れさん。どうだった?」
報告書を片手にイザベルはルーズハルトを見下ろしていた。
そして軽く鼻で笑うと、そのままその報告書をガルガットに手渡す。
ガルガットはその報告書に目を通すと、顔をひどく顰めさせた。
それだけでルーズハルトにも状況が伝わっていた。
「思いのほか状況が悪いな。」
「はい、すでにいつ暴走してもおかしくない状況です。下手に刺激すればそれだけでスタンピードに発展します。やはり半月前の状況で対処できていなかったことが問題だったと考えられます。」
私見を述べたイザベルは再度ルーズハルトを見下ろし、鼻で笑う。
言外に「私は仕事をしている」アピールをされている気分にルーズハルトは顔を顰める。
それに満足したのか、うっすらと笑みを浮かべルーズハルトの後ろに移動するイザベル。
そのやり取りを見て、ガルガットは自分の人選が間違いで無かった事を確信していた。
「バラック、至急ギルドにこのことを報告。冒険者を問題地点に近づかせないようにしてくれ。それと騎士団にも出撃命令を発令。第0騎士団はそのフォローにあたる。」
「敢えて騎士団に?あぁ、なるほど、わかりました。」
ガルガットの意図を察したのか、バラックはニヤリと笑って執務室を後にする。
その笑みは見るものを瞬時に凍り付かせるかのようだ。
「では私は任務に戻ります。」
「ご苦労。あぁそれと、再調査を頼むと思うから、君の部隊にもそのように伝えてくれ。」
イザベルはガルガットに黙礼をすると、そのまま執務室を後にする。
その際ルーズハルトには目もくれずに。
ルーズハルトもイザベルの態度は面白くはなかったが、別段それを気にするつもりはなかった。
それよりも依頼をどうするかというほうに意識が向いていた。
「さすがに俺一人でスタンピードを止めてこいなんて馬鹿なことは言わないだろう?」
「俺だってそこまで鬼じゃない。ただこれは恐らくだが……間違いなくスタンピードは発生する。しかも人為的に……」
一瞬にしてガルガットの表情が険しくなる。
ルーズハルトは今まで聞かされてきた機密情報を思い返してみるも、差し当たってスタンピードを人為的に起こそうとする動きは感じられなかった。
つまり、ルーズハルトが知らされていない情報をガルガットは保有しているということ以外ありえない。
「止められないのか?」
「止められるなら最初から止めてる。だが、まさかギルドにまで手が回っているとは思わなかった。だからこそ、ギルドは黙認してきたんだろうな。」
これでやっと疑問が確信に変わったルーズハルト。
言外に貴族のかな……というよりは騎士団の中にスタンピードを起こそうと画策していた者がいるのだろうと。
「そいつをとっちめて終わりってわけにはいかないってことか。」
「そうだな。これほど大きなスタンビードが自然発生するのは考えられない。そうなれば何か別の要因だろうな。」
調査報告書を再度読み始めたガルガット。
何かを考え込むように、俯いては天を仰ぎ、何を口の中で反芻する。
それを何度も繰り返すうちに、何かの事象にたどり着いたようだった。
「〝魔王〟?いや、しかし……」
「今〝魔王〟って言ったか?」
ガルガットの言葉にピクリと反応するルーズハルト。
ルーズハルトの頭にそれと反するように〝勇者〟という言葉がよぎる。
〝魔王〟と〝勇者〟
物語上相反する立ち位置の二つの存在。
事前に創造神【エルネス】より聞かされていたとは言え、半ば半信半疑だった。
だがここにきてその片鱗がわずかに見え隠れしてくる。
それを意識した途端、ルーズハルトの心にゾクリとした悪寒が首をもたげた。
「どうしたルーズハルト。」
「いや、なんでもない。とりあえず俺は何をしたらいいんだ?」
先ほどの悪寒を一旦思考の隅に置きソファーに深く座りなおすルーズハルト。
ルーズハルトの問いに、ガルガットは資料の一部をルーズハルトに手渡した。
そこに記載されていた内容は、〝教団〟と呼ばれる組織について。
一般的に〝教会〟と言われれば、万人がティセアルス教を思い描く。
これは惑星【イグニスタ】全域に布教活動を行った教国【ティセアルス】の努力の賜物と言える。
だが、〝教団〟と言うものはこれまでのルーズハルトの生の中で聞き及んだことは無かった。
「この〝教団〟ってのはいったい……」
「おそらく〝魔王〟復活を企む組織……と目されてる者たちだ。」
ガルガットの言葉から、第0騎士団ではすでに〝教団〟についての情報をつかんでおり、上層部では秘密裏に調査を行っていたことがうかがい知れた。
だが、確証が無くいまだ疑いの段階だった推測できた。
「つまりそいつらが陰でこそこそしてやがるわけだ。その討伐が今回の依頼の本筋か?」
「そう言う事だ。それと〝教団〟については他言無用だ。バラックが上手い事騎士団内に餌を撒く。ルーズハルトはいつでもスタンビードを鎮圧できるように準備を進めてくれ。それと、現時刻をもって第5騎士団第1大隊第8中隊第1小隊隊長として行動をするように。第5騎士団にはこれを渡してくれ。」
ルーズハルトはガルガットから一通の〝黒い封筒〟を受け取る。
それは国王と同等の権限を与えられた者のみが所持を許される封筒である。
そのことからもこれがナンバーズとしての依頼であることが容易に想像できた。
封筒を受け取ったルーズハルトは、深いため息とともに、執務室を後にしたのであった。
47
お気に入りに追加
308
あなたにおすすめの小説
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる