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第5章 第0騎士団
第6話 モンスタースタンビードの予兆
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「失礼します!!」
「開いてるよ~」
ライガーが訪れたのは第0騎士団兵舎内に設けられたルーズハルトの執務室。
普段であればイザベルがつなぎ役となるのだが、今回はイザベルが別任務で動いているため、こうしてライガーが訪れたのだ。
下水道の討伐依頼からすでに4年経過し、ライガーはルーズハルトの実力そのものは認めていた。
しかしそのやる気の無さについては思うところがあった。
そしてこの返事……
怒りではないが、呆れを通り越して何やらおかしな感情が芽生えそうであったが、引き攣りかけた表情をマッサージし、入室したのだった。
ライガーが入室してすぐに目に付いたのは、執務机でだらけているルーズハルトの姿だった。
執務机に並べられた書類を気怠そうにチラ見しては、深くため息をつく。
そして何やらさらさらとかいては、書類箱へ。
それを繰り返している態度は、まさにめんどくさいの一言であった。
入ってきた人物がやっと目に入ったのか、ルーズハルトは身体は突っ伏したまま、頭をもたげたのだ。
「今日はライガーさんなんだね。イザベルは……って、表の任務か。大変だね君たちも。」
「いえ、本来の任務ですので問題ありません。」
部屋に入るなり、ビシッと気を付けの姿勢を取るライガー。
その姿にルーズハルトは苦笑いを浮かべていた。
ルーズハルトとしてはそれなりの時間、同じ任務をこなしてきているので信頼関係は結ばれているとは思っていた。
だがいまだライガーの態度は固く、少しだけ寂しさを感じていた。
「で、今日の用事は何?」
「はっ!!団長がお呼びです!!」
大隊長が呼んでると聞きルーズハルトはものすごく嫌そうな顔をしていた。
それもそのはずで、〝大隊長の呼び出し=めんどくさい任務〟が確定しているからであった。
執務机に突っ伏したままで動かないルーズハルトに苛立ちを感じるライガー。
根っからの軍人であるライガーからすれば、ルーズハルトの態度は許容しがたい物があるのだ。
微妙な空気が漂う中、時計の針の音だけが部屋から聞こえてくる。
「わかったよぉ~行きますって……」
ライガーから向けられる視線と沈黙に耐えられなくなったルーズハルトが遂に音を上げた。
ライガーの表情が一瞬ニヤリと綻ぶも、ルーズハルトには見えてはいなかった。
「で、用事ってなんですか団長殿?」
「そう不貞腐れるなルーズハルト。」
ルーズハルトと向かい合うように応接室のソファーに腰掛けている男性。
初老と言うにはまだその若さが際立っていた。
飄々とした態度とは裏腹に滲み出るような威圧感とも緊張感とも取れる空気が部屋に充満していく。
ルーズハルトはいきなりの招集命令に憮然とした態度を崩すことは無かった。
ただこれはあくまでもスタンスであり、そこまで嫌がっているつもりはなかった。
「ナンバー0……流石に此処でそれはないんじゃないですか?これから無理難題ふっかけるんです、少しは労ってあげたらどうです?」
「いや、お前のそれもどうかと思うぞ、バラック。」
気が付くとそこに居た……
正にその言葉がピッタリの男性がいつの間にかルーズハルトの背後に姿を現していた。
一切ルーズハルトに悟られることなく。
ルーズハルトは、背中にヒヤリとしたものを感じていた。
「しまえバラック。」
「すみません……つい……」
バラックと呼ばれた男性は何食わぬ顔で謝辞を述べ、手にしたナイフを懐に仕舞い直した。
そしてバラックは何食わぬ顔でガルガットの隣に腰かける。
それに対してルーズハルトは警戒心を露わにしていた。
「すまんな。悪い奴じゃないんだが……気が早いのが欠点でな。」
「あなたが危機感がなさすぎるからです。」
バラックはそう言うと白い眼をガルガットに向けていた。
わずかな時間執務室になんとも言えない空気が漂っていた。
その視線と空気感に少しだけバツの悪い表情を浮かべたガルガットだったが、軽い咳払いのあとすぐに真剣は表情に戻っていた。
「呼んだのはほかでもない。ルーズハルトに頼みたい依頼があるんだが……」
そう言うと言い淀んだガルガット。
それを見たルーズハルトはさらに気を引き締めていた。
ルーズハルトはこれ以上自分にめんどくさい案件を振られるのは勘弁願いたいと考えていた。
だが現実問題ナンバーズとしての依頼の大半は面倒な案件しかなかった。
「これを見てくれ。」
ガルガットから1枚の紙を見せられたルーズハルト。
その表情は一気に険しい物になっていた。
テーブルに置かれた1枚の依頼書。
それはすでに半月が経過していた。
それよりも問題なのが、これが冒険者ギルドにあてられたものだったからだ。
それがなぜここにあるのか……
ルーズハルトのほほに汗が流れていく。
「つまり、これのこなして来いと……」
「そうなるな。」
なぜガルガットが言い淀んなのか……
それはその内容が大問題だったのだ。
モンスタースタンピードの発生調査と対応について。
それが半月も放置されている状況だったのだ。
依頼自体その発生場所と思われる場所の近くに住む村人からのものだった。
だが、狩場からほど近くにモンスターの群れを確認し、その報告を冒険者ギルドに行っていた。
ギルドとしては早急に調査すべきところだったが、何かの手違いで半月も放置されてしまったようだった。
もし仮にこれが本当にスタンピードの兆候だった場合、すでに初動が遅れているに他ならなかった。
「なるほどね、それでイザベルが調査に向かっていたってわけか。」
「そう言う事です。」
入り口付近から聞こえたのは、モンスタースタンピードの調査に向かっていたイザベルの声だった。
「開いてるよ~」
ライガーが訪れたのは第0騎士団兵舎内に設けられたルーズハルトの執務室。
普段であればイザベルがつなぎ役となるのだが、今回はイザベルが別任務で動いているため、こうしてライガーが訪れたのだ。
下水道の討伐依頼からすでに4年経過し、ライガーはルーズハルトの実力そのものは認めていた。
しかしそのやる気の無さについては思うところがあった。
そしてこの返事……
怒りではないが、呆れを通り越して何やらおかしな感情が芽生えそうであったが、引き攣りかけた表情をマッサージし、入室したのだった。
ライガーが入室してすぐに目に付いたのは、執務机でだらけているルーズハルトの姿だった。
執務机に並べられた書類を気怠そうにチラ見しては、深くため息をつく。
そして何やらさらさらとかいては、書類箱へ。
それを繰り返している態度は、まさにめんどくさいの一言であった。
入ってきた人物がやっと目に入ったのか、ルーズハルトは身体は突っ伏したまま、頭をもたげたのだ。
「今日はライガーさんなんだね。イザベルは……って、表の任務か。大変だね君たちも。」
「いえ、本来の任務ですので問題ありません。」
部屋に入るなり、ビシッと気を付けの姿勢を取るライガー。
その姿にルーズハルトは苦笑いを浮かべていた。
ルーズハルトとしてはそれなりの時間、同じ任務をこなしてきているので信頼関係は結ばれているとは思っていた。
だがいまだライガーの態度は固く、少しだけ寂しさを感じていた。
「で、今日の用事は何?」
「はっ!!団長がお呼びです!!」
大隊長が呼んでると聞きルーズハルトはものすごく嫌そうな顔をしていた。
それもそのはずで、〝大隊長の呼び出し=めんどくさい任務〟が確定しているからであった。
執務机に突っ伏したままで動かないルーズハルトに苛立ちを感じるライガー。
根っからの軍人であるライガーからすれば、ルーズハルトの態度は許容しがたい物があるのだ。
微妙な空気が漂う中、時計の針の音だけが部屋から聞こえてくる。
「わかったよぉ~行きますって……」
ライガーから向けられる視線と沈黙に耐えられなくなったルーズハルトが遂に音を上げた。
ライガーの表情が一瞬ニヤリと綻ぶも、ルーズハルトには見えてはいなかった。
「で、用事ってなんですか団長殿?」
「そう不貞腐れるなルーズハルト。」
ルーズハルトと向かい合うように応接室のソファーに腰掛けている男性。
初老と言うにはまだその若さが際立っていた。
飄々とした態度とは裏腹に滲み出るような威圧感とも緊張感とも取れる空気が部屋に充満していく。
ルーズハルトはいきなりの招集命令に憮然とした態度を崩すことは無かった。
ただこれはあくまでもスタンスであり、そこまで嫌がっているつもりはなかった。
「ナンバー0……流石に此処でそれはないんじゃないですか?これから無理難題ふっかけるんです、少しは労ってあげたらどうです?」
「いや、お前のそれもどうかと思うぞ、バラック。」
気が付くとそこに居た……
正にその言葉がピッタリの男性がいつの間にかルーズハルトの背後に姿を現していた。
一切ルーズハルトに悟られることなく。
ルーズハルトは、背中にヒヤリとしたものを感じていた。
「しまえバラック。」
「すみません……つい……」
バラックと呼ばれた男性は何食わぬ顔で謝辞を述べ、手にしたナイフを懐に仕舞い直した。
そしてバラックは何食わぬ顔でガルガットの隣に腰かける。
それに対してルーズハルトは警戒心を露わにしていた。
「すまんな。悪い奴じゃないんだが……気が早いのが欠点でな。」
「あなたが危機感がなさすぎるからです。」
バラックはそう言うと白い眼をガルガットに向けていた。
わずかな時間執務室になんとも言えない空気が漂っていた。
その視線と空気感に少しだけバツの悪い表情を浮かべたガルガットだったが、軽い咳払いのあとすぐに真剣は表情に戻っていた。
「呼んだのはほかでもない。ルーズハルトに頼みたい依頼があるんだが……」
そう言うと言い淀んだガルガット。
それを見たルーズハルトはさらに気を引き締めていた。
ルーズハルトはこれ以上自分にめんどくさい案件を振られるのは勘弁願いたいと考えていた。
だが現実問題ナンバーズとしての依頼の大半は面倒な案件しかなかった。
「これを見てくれ。」
ガルガットから1枚の紙を見せられたルーズハルト。
その表情は一気に険しい物になっていた。
テーブルに置かれた1枚の依頼書。
それはすでに半月が経過していた。
それよりも問題なのが、これが冒険者ギルドにあてられたものだったからだ。
それがなぜここにあるのか……
ルーズハルトのほほに汗が流れていく。
「つまり、これのこなして来いと……」
「そうなるな。」
なぜガルガットが言い淀んなのか……
それはその内容が大問題だったのだ。
モンスタースタンピードの発生調査と対応について。
それが半月も放置されている状況だったのだ。
依頼自体その発生場所と思われる場所の近くに住む村人からのものだった。
だが、狩場からほど近くにモンスターの群れを確認し、その報告を冒険者ギルドに行っていた。
ギルドとしては早急に調査すべきところだったが、何かの手違いで半月も放置されてしまったようだった。
もし仮にこれが本当にスタンピードの兆候だった場合、すでに初動が遅れているに他ならなかった。
「なるほどね、それでイザベルが調査に向かっていたってわけか。」
「そう言う事です。」
入り口付近から聞こえたのは、モンスタースタンピードの調査に向かっていたイザベルの声だった。
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