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第5章 第0騎士団
第3話 結果として〝駄女神〟
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「というわけで、君たちにはコンビとして動いてもらう。もちろんイザベル君には表向き中隊長という肩書きで第5騎士団第13大隊第8中隊に所属してもらう。こちらもメインは諜報と工作になる。それと、第0騎士団においては第8大隊大隊長という肩書になる。で、問題は君だ、ルーズハルト君。」
そう言うとガルガットは一通の封筒をルーズハルトに差し出す。
そこには封蝋が施され、その文様にルーズハルトは目を丸くしていた。
「すみません……俺の勘違いでなければこの印は……王家?」
「間違っていない。陛下からの手紙だ。もちろん私は読んでいない。」
ガルガットはそう言うとスッとペーパーナイフを差し出した。
今ここで開封しろと暗に示していた。
ルーズハルトはそれを受け取ると封筒を開封する。
中には一通の手紙とともに、カードが同封されていた。
「ん?身分証?」
手紙よりも先に気になったカードを見ていると、ルーズハルトは慌てたように手紙に目を通した。
「そうか、陛下はこう来たか。通りで編成について待ったがかかったわけだな。」
なにか感づいたガルガットであったが、敢えてルーズハルトが手紙を読み終えるのを待つことにしたようだった。
「マジか……」
一言そう呟いたルーズハルトは改めてカードに目をやった。
黒のカードの中心には王国紋が施されており、その背面に数字の記載があった。
13と……
「ネームナンバー13……」
「そう、それが今日から君の名前だ。そしてこの時を持ってルーズハルトという人物とは別人となったわけだ。」
それは重く重くのしかかる王国からの鎖。
全てにおいて縛られることはない身分の保証。
その代償は王国への忠誠。
ガルガットはソファーから立ち上がると、騎士の礼を取った。
「ナンバー13に敬意を!!」
つまるところ、この場において最上位権限者にルーズハルトがなったことを意味していた。
困惑しているルーズハルトをよそにイタズラでも成功したとばかりにニヤリと笑うガルガット。
そこで初めて自分はからかわれたと理解したルーズハルトであった。
「だが実際問題君は最上位権限を手に入れた事は間違いない。もし君がそのカードをみせ私に戦闘行為を指示した場合、私はその命令を拒むことはできない。ま、その場合全力で拒否させてもらうがね。」
その説明を聞きこのカードが占める意味を強く感じたルーズハルト。
「つまり陛下の手足……だからこその絶対権限……というわけですか。」
「そういう事だ。」
うなだれるルーズハルトをよそにイザベルはどうしたものかと困惑していた。
ルーズハルトが絶対権限を手にし、自分はのそ相方を指示されている。
これはどう考えてもイザベルにとって面倒事でしか無いからだ。
「それとこんな事が書かれていました。」
ルーズハルトは力なくガルガットに手紙を差し出した。
本来は読んていいものではなかったが、興味を惹かれたガルガットは差の手紙に手を通した。
そしてそこに書かれていたのは、ナンバー13への任命の他にもう一つ、登城命名であった。
拒否すれば不敬罪となり、下手をすれば連座制で両親やエミリアまで咎が及ぶ可能性を含んでいた。
「全力で逃げたい……」
「諦めるしかあるまいな。」
がくりと項垂れたルーズハルトは、ゆっくりとイザベルに視線を移す。
その目にはありありと〝お前も道連れだ〟という念が込められていた。
イザベルはその視線に気がついたのか、珍しく表情を歪めた。
「二人共、これから王城に向かうように。おそらく近衛騎士団の隊舎の一室を借りられるだろうから、寝床は心配いらん。むしろ陛下に粗相のないように。」
「はい……」
ルーズハルトは騎士団員としての最低限の礼を取ると、項垂れたままガルガットの部屋をあとにしたのだった。
そして話は一時間前の廊下へと戻るのであった。
「ほんと、なんでこうなったかな……」
「さぁ、主神様のお導き……とでも言ってほしいですか?」
大きな溜息をつき、未だテンションがガタ落ちのルーズハルト。
いつもは余所行きの仮面を被り、〝良きシスター〟〝良き隊員〟を演じていたイザベルだったが、この時ばかりは感情を表に表していた。
ルーズハルトに対して嫌味でも言っていないとやってられないという感情が見て取れるほど、嫌そうな表情を浮かべていたのだ。
イザベルとしては自分を地上への追放に追い込んだ……と言ってもイザベルの自業自得だが……ルーズハルトの困った状況を見ていられればそれで良かったのだ。
しかし現状は其れに巻き込まれ、自分自身すら困った状況に追い込まれていた。
正直なところ神力自体は封印されているものの、魔力操作等はそのままだったため〝チートをもらった異世界人〟と何ら遜色はない能力を秘めていた。
だがさすが女神をやっていただけあり、〝異世界人の末路〟についての知識を持ち合わせていた。
それすなわち〝世界の意志により使い潰される〟。
イザベルは自身の能力を6割台にまで抑え込み、〝普通〟を演じてきたのだが。
そこは元女神。
元の性能が違いすぎ、6割に抑えてもなおこの世界の上位の能力を発揮してしまったのだ。
これについてはイザベルも想定外で、気が付いた時には既に遅くこうしてルーズハルトの補佐に当てられることとなってしまったのだ。
つまるところ、やはりルーズハルトの評価通りの〝駄女神〟だったわけである。
だからこそのルーズハルトへの八つ当たりが今表立って現れてきた状況であった。
そう言うとガルガットは一通の封筒をルーズハルトに差し出す。
そこには封蝋が施され、その文様にルーズハルトは目を丸くしていた。
「すみません……俺の勘違いでなければこの印は……王家?」
「間違っていない。陛下からの手紙だ。もちろん私は読んでいない。」
ガルガットはそう言うとスッとペーパーナイフを差し出した。
今ここで開封しろと暗に示していた。
ルーズハルトはそれを受け取ると封筒を開封する。
中には一通の手紙とともに、カードが同封されていた。
「ん?身分証?」
手紙よりも先に気になったカードを見ていると、ルーズハルトは慌てたように手紙に目を通した。
「そうか、陛下はこう来たか。通りで編成について待ったがかかったわけだな。」
なにか感づいたガルガットであったが、敢えてルーズハルトが手紙を読み終えるのを待つことにしたようだった。
「マジか……」
一言そう呟いたルーズハルトは改めてカードに目をやった。
黒のカードの中心には王国紋が施されており、その背面に数字の記載があった。
13と……
「ネームナンバー13……」
「そう、それが今日から君の名前だ。そしてこの時を持ってルーズハルトという人物とは別人となったわけだ。」
それは重く重くのしかかる王国からの鎖。
全てにおいて縛られることはない身分の保証。
その代償は王国への忠誠。
ガルガットはソファーから立ち上がると、騎士の礼を取った。
「ナンバー13に敬意を!!」
つまるところ、この場において最上位権限者にルーズハルトがなったことを意味していた。
困惑しているルーズハルトをよそにイタズラでも成功したとばかりにニヤリと笑うガルガット。
そこで初めて自分はからかわれたと理解したルーズハルトであった。
「だが実際問題君は最上位権限を手に入れた事は間違いない。もし君がそのカードをみせ私に戦闘行為を指示した場合、私はその命令を拒むことはできない。ま、その場合全力で拒否させてもらうがね。」
その説明を聞きこのカードが占める意味を強く感じたルーズハルト。
「つまり陛下の手足……だからこその絶対権限……というわけですか。」
「そういう事だ。」
うなだれるルーズハルトをよそにイザベルはどうしたものかと困惑していた。
ルーズハルトが絶対権限を手にし、自分はのそ相方を指示されている。
これはどう考えてもイザベルにとって面倒事でしか無いからだ。
「それとこんな事が書かれていました。」
ルーズハルトは力なくガルガットに手紙を差し出した。
本来は読んていいものではなかったが、興味を惹かれたガルガットは差の手紙に手を通した。
そしてそこに書かれていたのは、ナンバー13への任命の他にもう一つ、登城命名であった。
拒否すれば不敬罪となり、下手をすれば連座制で両親やエミリアまで咎が及ぶ可能性を含んでいた。
「全力で逃げたい……」
「諦めるしかあるまいな。」
がくりと項垂れたルーズハルトは、ゆっくりとイザベルに視線を移す。
その目にはありありと〝お前も道連れだ〟という念が込められていた。
イザベルはその視線に気がついたのか、珍しく表情を歪めた。
「二人共、これから王城に向かうように。おそらく近衛騎士団の隊舎の一室を借りられるだろうから、寝床は心配いらん。むしろ陛下に粗相のないように。」
「はい……」
ルーズハルトは騎士団員としての最低限の礼を取ると、項垂れたままガルガットの部屋をあとにしたのだった。
そして話は一時間前の廊下へと戻るのであった。
「ほんと、なんでこうなったかな……」
「さぁ、主神様のお導き……とでも言ってほしいですか?」
大きな溜息をつき、未だテンションがガタ落ちのルーズハルト。
いつもは余所行きの仮面を被り、〝良きシスター〟〝良き隊員〟を演じていたイザベルだったが、この時ばかりは感情を表に表していた。
ルーズハルトに対して嫌味でも言っていないとやってられないという感情が見て取れるほど、嫌そうな表情を浮かべていたのだ。
イザベルとしては自分を地上への追放に追い込んだ……と言ってもイザベルの自業自得だが……ルーズハルトの困った状況を見ていられればそれで良かったのだ。
しかし現状は其れに巻き込まれ、自分自身すら困った状況に追い込まれていた。
正直なところ神力自体は封印されているものの、魔力操作等はそのままだったため〝チートをもらった異世界人〟と何ら遜色はない能力を秘めていた。
だがさすが女神をやっていただけあり、〝異世界人の末路〟についての知識を持ち合わせていた。
それすなわち〝世界の意志により使い潰される〟。
イザベルは自身の能力を6割台にまで抑え込み、〝普通〟を演じてきたのだが。
そこは元女神。
元の性能が違いすぎ、6割に抑えてもなおこの世界の上位の能力を発揮してしまったのだ。
これについてはイザベルも想定外で、気が付いた時には既に遅くこうしてルーズハルトの補佐に当てられることとなってしまったのだ。
つまるところ、やはりルーズハルトの評価通りの〝駄女神〟だったわけである。
だからこそのルーズハルトへの八つ当たりが今表立って現れてきた状況であった。
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