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第4章 学園生活
第41話 〝纏い・神威〟
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「如何でしたでしょうか?」
「如何も何も……もう少しやりようはあっただろう。」
呆れと畏怖の念が入り混じり、なんとも言えない表情となっていたウェルズ。
自分でも久方ぶりに感じた〝恐れ〟に驚きを覚えていた。
「初めて実戦で試したので、正直加減がわかりませんでした。結果的には……やり過ぎですね。」
そう言うと苦笑いを浮かべるルーズハルトだった。
〝纏い・神威〟
そう名付けた技は、ルーズハルト自身の想像を超える力を秘めていた。
まさかこれほどの火力になるとは夢にも思わなかったのだ。
「我々の騎士団でもこれほどの威力を出せるのは……おそらく数字持ちくらいでしょうね。」
「第0大隊クラスか……」
ウェルズの言う〝第0大隊〟。
正式名称〝王家直轄第0騎士団第0大隊〟。
その存在は噂されるものの、その正体全てにおいて極秘とされる部隊である。
その活動は多岐にわたり、高ランクの魔物討伐を始め、諜報活動に戦時強襲要因、国外工作要因等。
その活動によって大隊が編成されている。
そして〝第0大隊〟は、特に戦闘に特化した戦いのエキスパートたちの集まりであった。
「ルーズハルトよ。まずは戦闘お疲れ様。戦ってみた感想はどうだ?」
「そうですね……意外ともろい……でしょうか。威力が強すぎました。今度はもっと抑えないと、周りへの被害が大きすぎます。」
ルーズハルトはウェルズの問いにそう答えると、再度魔力循環を開始した。
先ほどよりも急速に行われた魔力循環に、ウェルズやカイエルが舌を巻いまいた。
そんな二人をよそに、ルーズハルトはさらに魔力を加速させていく。
「集え、サラマンドラ……〝炎剣〟!!」
使用したのは同じ〝炎剣〟。
だが、この後起った現象は、決して同じものとは思えないものであった。
威力が抑えられた〝炎剣〟は、近くにある木を切り倒して見せた。
しかし、その切り口は焦げ跡一つつくことはなかった。
ただ、ゆっくりとずれていき、最後は大きな衝撃音を残して地面に倒れることなく突き刺さったのだった。
最初からその木がそうであったかのように。
「すさまじい切れ味だな。それでいて焦げ跡もない……普通はありえんだろうこんなこと。」
「そうですね。火属性魔法で似たことをすれば必ず燃えるか焦げるかが発生します。つまり既存の魔法とは違った物。そう考えるのが妥当でしょうか。」
ルーズハルトが起こした現象に頭を悩ませるウェルズ。
だが、これ以上考えても仕方がないのではないかと思えてきた。
何せルーズハルトは〝神の使徒〟なのだからと。
そう考えればこの異常な状況も納得のいくものであった。
実際には〝神の使徒〟だからと言うわけではなく、この世界の理とは違う理の中にルーズハルトがいる為に起こりえた〝バグ〟なのだが、それはこの世界の人間には知りえないことでもあった。
「では陛下。魔物の片付けもあらかた終わりましたので、再度出発いたします。」
「分かった。ではルーズハルトよ、馬車に戻るとするか。」
そう言ってウェルズは元居た馬車に乗り込んでいった。
ルーズハルトも支持されるがまま乗り込んだが、チラリと周りを見ると魔物との戦闘の痕跡を見ることが出来た。
そこには血だまりがいくつもできており、それが魔物の血なのか騎士の血なのかは分からなかった。
ただ自分の戦闘跡とは全く違っていることに、違和感を覚えたのであった。
そのあとは魔物も現れることはなく、順調に旅の工程をこなすことが出来た。
そして馬車の車列は王都へと帰還したのであった。
「ではルーズハルトよ、また会えるのを楽しみにしているぞ?」
「はい、その時はよろしくお願いします。」
ルーズハルトは魔法学園のそばの大通りで馬車から降り、ウェルズたちに別れを告げた。
その際に手渡された学園長への手紙。
どちらにせよ挨拶にはいかなければならないので、特に気にすることもなく学園長室へ向かったのだった。
コンコンコン
「学園長、ルーズハルト君が来ました。」
「うむ、入りなさい。」
学園長に会うために声をかけた秘書官に連れられ、学園長室にやってきたルーズハルト。
すでに来ることが伝わっていたのか、問答する間もなく入室の許可が下りた。
「失礼します。」
「待って居ったぞ。で、どうであった?」
学園長のサイファはそう言うと、ルーズハルトに手でソファーに座るよう促す。
そしてサイファも対面のソファーに腰を下ろした。
ルーズハルトはその前にとウェルズから託された手紙をサイファに手渡した。
その手紙の封蝋を見るなり、一瞬動揺を見せたサイファだったがその動揺がどういった意味だったのかまではルーズハルトは読み取ることが出来なかった。
サイファは嫌な予感がしていた。
学園始まって以来、最速での騎士団への入団。
それは学園にとって誇らしいことであった。
その為、ルーズハルトの両親から入団の許可が下りることを心待ちにしていたのだ。
だがしかし、ここにきてウェルズからの手紙。
何か良からぬことが書かれているのではないかと訝しんでいたのだ。
人間は時として直感が最善の結果をもたらすことがある。
しかし、この時ばかりはサイファの意に反した結果となってしまったのであった。
———
王立魔導学園【アグニス】学園長、サイファ・グルーラント殿。
此度は貴殿の推薦した少年について感謝する。
我が国始まって以来の逸材になるやもしれぬ事を喜ばしく思う。
しかしながら少年の行く末を鑑み、少年・ルーズハルトの素性を隠匿するものとした。
したがって下記にあるように取り計らってほしい。
①学園を自主退学したこととする。
②自主退学後実家に戻り地方の冒険者として登録したこととする。
以上、よろしく頼む。
———
「如何も何も……もう少しやりようはあっただろう。」
呆れと畏怖の念が入り混じり、なんとも言えない表情となっていたウェルズ。
自分でも久方ぶりに感じた〝恐れ〟に驚きを覚えていた。
「初めて実戦で試したので、正直加減がわかりませんでした。結果的には……やり過ぎですね。」
そう言うと苦笑いを浮かべるルーズハルトだった。
〝纏い・神威〟
そう名付けた技は、ルーズハルト自身の想像を超える力を秘めていた。
まさかこれほどの火力になるとは夢にも思わなかったのだ。
「我々の騎士団でもこれほどの威力を出せるのは……おそらく数字持ちくらいでしょうね。」
「第0大隊クラスか……」
ウェルズの言う〝第0大隊〟。
正式名称〝王家直轄第0騎士団第0大隊〟。
その存在は噂されるものの、その正体全てにおいて極秘とされる部隊である。
その活動は多岐にわたり、高ランクの魔物討伐を始め、諜報活動に戦時強襲要因、国外工作要因等。
その活動によって大隊が編成されている。
そして〝第0大隊〟は、特に戦闘に特化した戦いのエキスパートたちの集まりであった。
「ルーズハルトよ。まずは戦闘お疲れ様。戦ってみた感想はどうだ?」
「そうですね……意外ともろい……でしょうか。威力が強すぎました。今度はもっと抑えないと、周りへの被害が大きすぎます。」
ルーズハルトはウェルズの問いにそう答えると、再度魔力循環を開始した。
先ほどよりも急速に行われた魔力循環に、ウェルズやカイエルが舌を巻いまいた。
そんな二人をよそに、ルーズハルトはさらに魔力を加速させていく。
「集え、サラマンドラ……〝炎剣〟!!」
使用したのは同じ〝炎剣〟。
だが、この後起った現象は、決して同じものとは思えないものであった。
威力が抑えられた〝炎剣〟は、近くにある木を切り倒して見せた。
しかし、その切り口は焦げ跡一つつくことはなかった。
ただ、ゆっくりとずれていき、最後は大きな衝撃音を残して地面に倒れることなく突き刺さったのだった。
最初からその木がそうであったかのように。
「すさまじい切れ味だな。それでいて焦げ跡もない……普通はありえんだろうこんなこと。」
「そうですね。火属性魔法で似たことをすれば必ず燃えるか焦げるかが発生します。つまり既存の魔法とは違った物。そう考えるのが妥当でしょうか。」
ルーズハルトが起こした現象に頭を悩ませるウェルズ。
だが、これ以上考えても仕方がないのではないかと思えてきた。
何せルーズハルトは〝神の使徒〟なのだからと。
そう考えればこの異常な状況も納得のいくものであった。
実際には〝神の使徒〟だからと言うわけではなく、この世界の理とは違う理の中にルーズハルトがいる為に起こりえた〝バグ〟なのだが、それはこの世界の人間には知りえないことでもあった。
「では陛下。魔物の片付けもあらかた終わりましたので、再度出発いたします。」
「分かった。ではルーズハルトよ、馬車に戻るとするか。」
そう言ってウェルズは元居た馬車に乗り込んでいった。
ルーズハルトも支持されるがまま乗り込んだが、チラリと周りを見ると魔物との戦闘の痕跡を見ることが出来た。
そこには血だまりがいくつもできており、それが魔物の血なのか騎士の血なのかは分からなかった。
ただ自分の戦闘跡とは全く違っていることに、違和感を覚えたのであった。
そのあとは魔物も現れることはなく、順調に旅の工程をこなすことが出来た。
そして馬車の車列は王都へと帰還したのであった。
「ではルーズハルトよ、また会えるのを楽しみにしているぞ?」
「はい、その時はよろしくお願いします。」
ルーズハルトは魔法学園のそばの大通りで馬車から降り、ウェルズたちに別れを告げた。
その際に手渡された学園長への手紙。
どちらにせよ挨拶にはいかなければならないので、特に気にすることもなく学園長室へ向かったのだった。
コンコンコン
「学園長、ルーズハルト君が来ました。」
「うむ、入りなさい。」
学園長に会うために声をかけた秘書官に連れられ、学園長室にやってきたルーズハルト。
すでに来ることが伝わっていたのか、問答する間もなく入室の許可が下りた。
「失礼します。」
「待って居ったぞ。で、どうであった?」
学園長のサイファはそう言うと、ルーズハルトに手でソファーに座るよう促す。
そしてサイファも対面のソファーに腰を下ろした。
ルーズハルトはその前にとウェルズから託された手紙をサイファに手渡した。
その手紙の封蝋を見るなり、一瞬動揺を見せたサイファだったがその動揺がどういった意味だったのかまではルーズハルトは読み取ることが出来なかった。
サイファは嫌な予感がしていた。
学園始まって以来、最速での騎士団への入団。
それは学園にとって誇らしいことであった。
その為、ルーズハルトの両親から入団の許可が下りることを心待ちにしていたのだ。
だがしかし、ここにきてウェルズからの手紙。
何か良からぬことが書かれているのではないかと訝しんでいたのだ。
人間は時として直感が最善の結果をもたらすことがある。
しかし、この時ばかりはサイファの意に反した結果となってしまったのであった。
———
王立魔導学園【アグニス】学園長、サイファ・グルーラント殿。
此度は貴殿の推薦した少年について感謝する。
我が国始まって以来の逸材になるやもしれぬ事を喜ばしく思う。
しかしながら少年の行く末を鑑み、少年・ルーズハルトの素性を隠匿するものとした。
したがって下記にあるように取り計らってほしい。
①学園を自主退学したこととする。
②自主退学後実家に戻り地方の冒険者として登録したこととする。
以上、よろしく頼む。
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