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第4章 学園生活
第39話 秘密の共有
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「それじゃあ父さん、母さん、行ってきます。」
「あぁ、言ってらっしゃい。ウェルズ……いや、国王陛下……何卒愚息を宜しくお願い致します。」
ルーズハルトは名残惜しくも両親に別れの挨拶を行った。
ルーハスもまた同じ思いであった。
ルーズハルトに声をかけたあと、ルーハスはウェルズに片膝を付いて頭を垂れる。
此処から先は友人としてではなく、一人の臣民としての対応であった。
ウェルズもそれを理解したのか尊大な態度でそれを受け取っていた。
「あい分かった。貴殿の息子を丁重に扱おう。カイエル、行くとしようか。」
「はっ!!皆のもの出発だ!!」
カイエルの号令に一斉に反応を示す騎士たち。
既に出発の準備は完了しており、数台の馬車と騎馬に別れ乗り込んでいく。
ルーズハルトも今一度両親に頭を下げ、馬車へと乗り込んだ。
「出発!!」
再度カイエルの号令が響くとその車列はゆっくりと動き始めた。
流石に昨日と今日で騎士たちが来ていたともなれば街中で噂となっており、街のあちこちでヒソヒソと会話があったり、騎士たちに憧れる子どもたちがキラキラとした目で元気よく手を降ったりしていた。
騎士たちはそんな子どもたちに手をふると、子どもたちはさらに元気よく手を振り返していた。
「良かったのか?」
「そう……ですね……。これもまた運命なのかも知れません。…………陛下、お話があります。」
馬車から外を見ていたウェルズは、ルーズハルトに問いかける。
ルーズハルトもまた何かとはあえて答えなかった。
あの場所であえて誰も言わなかったこと。
そしてそれが暗黙の了解である事実。
第0大隊に所属する意味。
全てにおいてルーズハルトは〝運命だった〟と答えたのだ。
そしてルーズハルトはある決断を下した。
「なるほどな……流石にあの二人……いや、周囲には漏らせない内容だな。」
「はい。ですのでこのことを知るのは陛下のみです。」
ついにルーズハルトは事の真相を打ち明けたのだ。
隠したままでも良かったはずであった。
しかしルーズハルトはそう決断したのだ。
おそらくこの先〝今のルーズハルト〟として生きていくことは難しくなる。
騎士として、兵士として、〝神の使徒〟としてのルーズハルトの人生となる。
そのための後ろ盾が必要だと考えてのことであった。
「つまり、ルーズハルトは俺より偉いってことじゃないか?これからはルーズハルト様とお呼びしたほうが?」
「や、やめてください!!」
ウェルズは一瞬思考すると、恭しい態度でルーズハルトに頭を垂れた。
その突然の行動にルーズハルトは慌てふためくも、ウェルズはクスクスと笑いをこらえていた。
それにより自分がからかわれたと理解したルーズハルトは、顔を赤らめて抗議したのだった。
「さて、そうなれば君をきちんとした形で保護せざるを得ないだろうな。それについては王城に戻り次第考えるとして……君は一度魔法学院に戻って荷物を整理しなさい。その後第13騎士団の宿舎に顔を出しなさい。」
「わかりました。」
するとウェルズは馬車の幌を少しめくると、横につけていたカイエルになにか声をかけていた。
小声だったためにルーズハルトには聞こえなかったが、何かしらの指示を与えたようであった。
カイエルはその指示に従い、すぐに部下に指示を出した。
すると一人の騎士が突如として騎馬を加速させたのだ。
どうやら早馬を飛ばしたようで、ウェルズの通信手段や、転移系魔法以外ではこの世界で最速の通信手段のうちの一つとも言える方法であった。
「そうだルーズハルトよ。騎士団宿舎到着次第お前の能力を確認させてほしいのだがいいかな?」
「はい構いませんが……」
馬車に揺られて2日が過ぎた頃だった。
唐突に思いついたようにそう話すウェルズ。
このときルーズハルトは一瞬嫌な予感がした。
仮にも少し前まで王国最強の魔導師と呼ばれていたウェルズ。
どう考えても〝アレ〟しか思い付かなかったのだ。
「陛下……まさかと思いますが……」
「ん?何だそのまさかっていうのは?なに、ちょっと手合わせするだけだ。」
やはりかとうなだれるルーズハルトをよそに、楽しみたと言わんばかりな微笑むウェルズ。
本心としては今すぐに……といったところであろうか。
おもちゃを目の前にして我慢している子供のような表情になっていた。
どう見ても断りきれる雰囲気ではないと悟ったルーズハルトは、飽きれつつも了承の意を示さざるを得なかったのであった。
「全体止まれ!!」
急に外が慌ただしくなった。
ウェルズも何事かと馬車の幌を少しめくると、騎士たちが臨戦態勢になっていた。
「陛下……魔物の襲撃にございます。我々にお任せください。即座に制圧いたします。」
「そうか、つまらんな……無理するなよカイエル。命あっての物種だ。」
カイエルがウェルズを嗜めると、つまらなそうに顔を引っ込めたウェルズ。
だが、戦いたくてウズウズしているのが手に取るような分かったルーズハルトであった。
そして頭に浮かんだのは、まさに〝戦闘狂〟。
それを証明するように、ウェルズの表情はその言葉が似合う戦士の顔に変わっていたのだ。
それから程なくして、外での戦闘が開始された。
「あぁ、言ってらっしゃい。ウェルズ……いや、国王陛下……何卒愚息を宜しくお願い致します。」
ルーズハルトは名残惜しくも両親に別れの挨拶を行った。
ルーハスもまた同じ思いであった。
ルーズハルトに声をかけたあと、ルーハスはウェルズに片膝を付いて頭を垂れる。
此処から先は友人としてではなく、一人の臣民としての対応であった。
ウェルズもそれを理解したのか尊大な態度でそれを受け取っていた。
「あい分かった。貴殿の息子を丁重に扱おう。カイエル、行くとしようか。」
「はっ!!皆のもの出発だ!!」
カイエルの号令に一斉に反応を示す騎士たち。
既に出発の準備は完了しており、数台の馬車と騎馬に別れ乗り込んでいく。
ルーズハルトも今一度両親に頭を下げ、馬車へと乗り込んだ。
「出発!!」
再度カイエルの号令が響くとその車列はゆっくりと動き始めた。
流石に昨日と今日で騎士たちが来ていたともなれば街中で噂となっており、街のあちこちでヒソヒソと会話があったり、騎士たちに憧れる子どもたちがキラキラとした目で元気よく手を降ったりしていた。
騎士たちはそんな子どもたちに手をふると、子どもたちはさらに元気よく手を振り返していた。
「良かったのか?」
「そう……ですね……。これもまた運命なのかも知れません。…………陛下、お話があります。」
馬車から外を見ていたウェルズは、ルーズハルトに問いかける。
ルーズハルトもまた何かとはあえて答えなかった。
あの場所であえて誰も言わなかったこと。
そしてそれが暗黙の了解である事実。
第0大隊に所属する意味。
全てにおいてルーズハルトは〝運命だった〟と答えたのだ。
そしてルーズハルトはある決断を下した。
「なるほどな……流石にあの二人……いや、周囲には漏らせない内容だな。」
「はい。ですのでこのことを知るのは陛下のみです。」
ついにルーズハルトは事の真相を打ち明けたのだ。
隠したままでも良かったはずであった。
しかしルーズハルトはそう決断したのだ。
おそらくこの先〝今のルーズハルト〟として生きていくことは難しくなる。
騎士として、兵士として、〝神の使徒〟としてのルーズハルトの人生となる。
そのための後ろ盾が必要だと考えてのことであった。
「つまり、ルーズハルトは俺より偉いってことじゃないか?これからはルーズハルト様とお呼びしたほうが?」
「や、やめてください!!」
ウェルズは一瞬思考すると、恭しい態度でルーズハルトに頭を垂れた。
その突然の行動にルーズハルトは慌てふためくも、ウェルズはクスクスと笑いをこらえていた。
それにより自分がからかわれたと理解したルーズハルトは、顔を赤らめて抗議したのだった。
「さて、そうなれば君をきちんとした形で保護せざるを得ないだろうな。それについては王城に戻り次第考えるとして……君は一度魔法学院に戻って荷物を整理しなさい。その後第13騎士団の宿舎に顔を出しなさい。」
「わかりました。」
するとウェルズは馬車の幌を少しめくると、横につけていたカイエルになにか声をかけていた。
小声だったためにルーズハルトには聞こえなかったが、何かしらの指示を与えたようであった。
カイエルはその指示に従い、すぐに部下に指示を出した。
すると一人の騎士が突如として騎馬を加速させたのだ。
どうやら早馬を飛ばしたようで、ウェルズの通信手段や、転移系魔法以外ではこの世界で最速の通信手段のうちの一つとも言える方法であった。
「そうだルーズハルトよ。騎士団宿舎到着次第お前の能力を確認させてほしいのだがいいかな?」
「はい構いませんが……」
馬車に揺られて2日が過ぎた頃だった。
唐突に思いついたようにそう話すウェルズ。
このときルーズハルトは一瞬嫌な予感がした。
仮にも少し前まで王国最強の魔導師と呼ばれていたウェルズ。
どう考えても〝アレ〟しか思い付かなかったのだ。
「陛下……まさかと思いますが……」
「ん?何だそのまさかっていうのは?なに、ちょっと手合わせするだけだ。」
やはりかとうなだれるルーズハルトをよそに、楽しみたと言わんばかりな微笑むウェルズ。
本心としては今すぐに……といったところであろうか。
おもちゃを目の前にして我慢している子供のような表情になっていた。
どう見ても断りきれる雰囲気ではないと悟ったルーズハルトは、飽きれつつも了承の意を示さざるを得なかったのであった。
「全体止まれ!!」
急に外が慌ただしくなった。
ウェルズも何事かと馬車の幌を少しめくると、騎士たちが臨戦態勢になっていた。
「陛下……魔物の襲撃にございます。我々にお任せください。即座に制圧いたします。」
「そうか、つまらんな……無理するなよカイエル。命あっての物種だ。」
カイエルがウェルズを嗜めると、つまらなそうに顔を引っ込めたウェルズ。
だが、戦いたくてウズウズしているのが手に取るような分かったルーズハルトであった。
そして頭に浮かんだのは、まさに〝戦闘狂〟。
それを証明するように、ウェルズの表情はその言葉が似合う戦士の顔に変わっていたのだ。
それから程なくして、外での戦闘が開始された。
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