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第4章 学園生活

第36話 【勇者】ウェルズ

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「では本題に入らせてもらってもよろしいでしょうか?」
「あぁ、頼む。」

 ルーズハルトが落ち着くのを見計らい、カイエルが3通の封筒を取り出した。
 一つは学園の封蝋付き。
 一つはリリックの署名付き。
 そして最後は……

「なぁ、カイエル。この封蝋……王家の物だと思うんだが、俺の気のせいか?」
「いえ、間違いなく陛下のものです。陛下より直々に賜りましたので。」

 その瞬間ルーハスは愕然としてしまった。
 つまりそれは〝王命〟が記載されたものに間違いはないからだ。

「父さん……?」
「あなた……」

 何度も読み直すルーハスに不安を覚えるルーズハルト。
 オーフェリアも嫌な予感を募らせていく。

 読み終えた手紙を手にルーハスはカイエルに問いかけた。

「ここに書かれている内容は知っているのか?」
「はい、掻い摘んでの説明は受けています。」

 ルーハスはそうかと一言つぶやくと、黙り込んでしまったの。
 俯いたためにその表情は見て取れないが、フルフルと体が震えていることで、更に不安を掻き立てられたルーズハルトだったが……

「でかしたルーズハルト!!さすが俺の息子だ!!」

 突如立ち上がるとルーハスは叫びだし、隣りに座っているルーズハルトを椅子から無理やり引き起こし、抱きしめたのだった。
 何がなんだかわからないルーズハルトは混乱の局地に陥ったのだった。

「あなた!?ちょっとどうしたのよ!!なんて書いてあったの!?」

 オーフェリアは慌ててルーハスを静止しようとするも、魔法の無駄遣いと言えば良いのか、ルーハスを止めることは叶わなかった。
 あまりの喜びように内容が気になったオーフェリアも手紙に目を通す。

「ルー君すごいじゃない!!大抜擢よ大抜擢!!」

 オーフェリアも喜びを爆発させる。
 やんややんやの王騒ぎとなった室内で、ルーズハルトはもみくちゃにされていたのだった。

「おっほん。話の続きをいいですか?」

 一人冷静なカイエルに二人は諌められ、気恥ずかしそうに席に座り直したのだった。

「た、助かりましたカイエルさん……」
「いえ、では続きと参りましょう。」

 けほりと咳き込むルーズハルトをよそに、カイエル騎士団長モードでの対応となっていた。
 同行中の優しい青年とは打って変わった表情に少しカッコいいと感じたルーズハルトであった。

「ルーズハルト君は出生の秘密も含めて陛下預かりとなります。所属は私の隊にとなります。」
「え?魔導騎士見習いじゃないんですか?」

 聞いていた内容と若干のニュアンス違いを感じたルーズハルトは驚きを見せた。
 ルーズハルトとしては魔導騎士見習いとして修行を積むものだと思っていたからだ。

「いえ、9歳での採用は行っていないので、王属騎士という立場です。階級はありません。なので平時は一般人と同じ権限です。」

 変な階級がついたりしないとしり、ほっと胸をなでおろしたルーズハルト。
 ここで変な階級や権限が附帯されれば、望まぬ争いに巻き込まれること必須であったからだ。
 だがしかしカイエルの説明には続きがあった。
 
「ですが一度王命が下れば騎士団総隊長並びに軍師・元帥と同等。場合によってはそれよりも上の権限となります。」

 追加権限についての話を聞き、顔を青ざめさせたルーズハルト。
 あまりに重い責に押しつぶされそうな思いであった。

「流石に陛下もやりすぎだろ……」
「そうね……」

 カイエルの説明に呆れる二人。
 さすがに言い過ぎたかとはっとするも、ここには特に気にした様子を見せるものはいなかった。
 これがこの国の国王の普通だと上に立つ者たちは知っていたからであった。
 一人を除いては……

「なかなか言ってくれるな二人とも。」
「ウェルズ!?」

 部屋の端に控えていた一人の騎士が、兜を外しながらルーズハルトたちに近づく。
 からからと笑いながら近づく美丈夫に驚く二人。

「どうしたんですかウェルズさん?」

 話に割って入ってきたウェルズを不審に思ったルーズハルト。
 両親の驚いた様子に知り合いだというのは理解できたが、そこまで驚くほどのことなのかと疑問に感じていた。

「久しいなルーハス。オーフェリア。」
「〝陛下〟におかれましても、ご健勝のこととお慶び申し上げます。」

 ルーハスとオーフェリアは椅子から立ち上がると、ウェルズの前で片膝をつく。
 その姿にすべて合点の行ったルーズハルトは思わず叫んでしまった。

「えぇ!?ウェルズさんが国王陛下!?どどどうしよう、俺肩車とかしてもらっちゃったよ!?ふふ不敬罪!?俺死刑確定?!」

 大パニックに陥ったルーズハルトはオロオロとするしかなかった。

「ルーハスもオーフェリアもそのようなことはいい。ここにいるのは君たちの戦友【勇者】ウェルズだ。それにルーズハルト君も座りなさい。」

 そう言うとウェルズはオロオロとするルーズハルトをヒョイッと抱えもと居た椅子に座らせた。
 ルーハスたちは顔を見合わせると深いため息を付き立ち上がった。

「相変わらずで安心したよウェルズ。」
「そうね……あの頃のままね……」
「たかだか20年、そんなに人はかわりはしないよ。」

 そういうと3人は、昔を懐かしむように抱擁を交わしたのだった。
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