近接魔導騎士の異世界無双~幼馴染の賢者と聖女を護る為、勇者を陰から支えます!!~

華音 楓

文字の大きさ
上 下
76 / 97
第4章 学園生活

第34話 ごめんみんな……

しおりを挟む
「というわけなんだ。明日朝一で一回実家に戻ることになった。」
「えぇ!?なんでルー君だけ?私も帰りたいよ!!」

 ルーズハルトは夕食の際にサイファとのやり取りをざっくりと説明した。
 ただし神様との取引についてと転生者としての内容は伏せたままで。
 説明内容についてはサイファとリリックの両名と打ち合わせ済みで、両親にもそう伝えることとなっていた。
 〝リリックの推薦で魔法騎士見習いとして騎士団に所属することになった。〟というものだ。
 実際に後日騎士団の使いのものが来ることにもなっており、展開の速さにルーズハルトはついていけなかった。

「わがままを言わないよエミリアー。」
「だって~。」

 エミリアは憮然とした態度を示すのも無理はなかった。
 実家を離れてから半年以上が経過し、ホームシックになりつつあったからである。
 それでも周囲の生徒たちに比べ、実年齢20歳を超えた女性であるエミリアは普段は表に出すことはなかった。
 しかしルーズハルトが一時帰宅をすると聞き、それが表に現れたのだ。
 ここに居る気心知れたいつものメンバーだからというのもあるが。

「エミー、別に遊びに帰るわけじゃないからね?騎士団の件は両親に了承を貰わないといけないんだ。しかも騎士団からも同行者がいるし。」
「むぅ~。ルー君の意地悪!!」

 更に機嫌を損ねたエミリアはプイッとそっぽを向いてしまった。
 ルーズハルトは苦笑いを浮かべつつも、バイトに対して視線を送っていた。
 バイトもその意図に気が付いたのか、そっと何かをエミリアに呟くと、エミリアは憮然とした態度はくずさな、少しだけ態度を軟化させてくれたのであった。

「ルー君!!帰ってきたらスイーツ巡りに付き合ってよね!!」
「え?!なんでそうなるの!ちょっ、バイト!?エミーに何言ったんだよ!?」

 不貞腐れた表情は変わらないものの、ルーズハルトに向かってビシッと指差すエミリア。
 この時ルーズハルトは、その内容に戦律を覚えた。
 なぜならばエミリアは大のカワイイアンド甘い物好きなのである。
 ルーズハルトは学生時代……と言っても今は幼少期だが……現代日本に居た頃も度々エミリアに捕まり、その都度スイーツ巡りにつきあわされていた。
 いくら好きな女性であったとしても、この辺りは辟易せざるを得なかったのだ。

———閑話休題———

 思い出したくない記憶が鮮明に蘇ったルーズハルトは、身体を身震いさせ、慌てる様子でバイトに詰め寄った。
 バイトはニヤリと笑みを浮かべるも助ける様子はなく、周りのメンバーも微笑ましく見守るだけであった。

「……わかったよ……分かりました!!エミリアお嬢様、お付き合いさせていただきます……」
  
 状況的に積んだと判断したルーズハルトは、観念したようにエミリアの提案を渋々受け入れることにしたのだった。
 ルーズハルトから了承の返事を得たエミリアは、先程までの態度とは打って変わって満面の笑みで勝ち誇ったような態度を見せていた。
 このとき初めてルーズハルトは悟った。
 いつからかは分からないが、エミリアの手のひらに乗っていたことを。
 そう言えば、実家にいたときも父ルーハスとともに、母オーフェリアとエミリアには頭が上がらなかった事を思い出したルーズハルトなのであった。

「ところでいつ戻る予定なんだい?」

 ルンデルハイムはあらかた食事を終えたと判断し、本題に入ることにした。

「どうだろ?騎士団の馬車の移動速度次第だけど、おおよそ1週間から10日くらいじゃないかな?」

 今のルーズハルトであれば、3日もあれば行って帰ってこれる距離となっていた。
 しかし今回は事情説明のため騎士団からも数人同行することになり、馬車換算の日程となってしまったのだ。
 
「それは寂しくなるね。その間エミリア嬢は僕に任せてくれたまえ。」
「それが一番心配事でしかないんだが……。バイト……責任を持って止めてくれ。」

 いつになく真剣なルーズハルトの視線に、バイトは首肯しそれに答えた。
 エミリアは未だ諦めてくれないルンデルハイムに深いため息をつくも、嫌ってる様子は見られなかった。
 だが一番噛み付いたのはほかでもないリリアナであった。

「ルンデルハイム様!!この状況であわよくばと口説こうとするのは紳士としていかがなものでしょう?」
「ん?どうしたんたい、リリアナ嬢。僕はいつもどおりだと思うけど?」

 リリアナはエミリアを守るように手を伸ばすと、ルンデルハイムに向かってガルルと言わんばかりに不快感をあらわにした。
 と言っても実際には子犬が牙を剥く程度の可愛らしさであり、周囲も微笑ましこ思えていた。

「ルンデルハイムも揶揄うのはやめるんだ。リリーも淑女としてどうかと思うよ?」
「おっと、つい可愛らしいものでね。」
「あわわっわわ!!す、す、すみません!!あぁんもう、私ったら……ついお姉様のことになると……」

 バイトが諫めるように二人を止めると、ルンデルハイムは肩をすくめてみせた。
 一方のリリアナは、自身の行動があまりにも恥ずかしかったのか、赤面でゆでダコ状態。
 いつもの日常を取り戻していたのだった。



「ごめんみんな……」

 そんな中つぶやかれたルーズハルトの言葉は誰の耳にも届くことはなかったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ2つスキルを持っていたので異端認定されました

七鳳
ファンタジー
いいね&お気に入り登録&感想頂けると励みになります。 世界には生まれた瞬間に 「1人1つのオリジナルスキル」 が与えられる。 それが、この世界の 絶対のルール だった。 そんな中で主人公だけがスキルを2つ持ってしまっていた。 異端認定された主人公は様々な苦難を乗り越えながら、世界に復讐を決意する。 ※1話毎の文字数少なめで、不定期で更新の予定です。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売です!】 早ければ、電子書籍版は2/18から販売開始、紙書籍は2/19に店頭に並ぶことと思います。 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。 だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。 無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。 人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。 だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。 自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。 殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。

処理中です...