68 / 97
第4章 学園生活
第26話 〝纏い・戦技〟
しおりを挟む
「確か師匠は手に魔力を……ってうわ⁈」
ルーズハルトは見様見真似で〝纏い・戦技〟を試したものの、体中に張り巡らされた魔力の鎧を移動させるのはかなり難しかった。
やろうとしても途中で魔力が霧散してしまい、腕に集中させることが出来なかったのだ。
「お、早速やってみたな。そんなに簡単に出来たらだれも苦労はしないさ。これが出来てやっと初心者を脱せられるんだからな。」
自慢げに反り返りながら高笑いをするリリック。
ルーズハルトはその態度が癇に障ったのか、何度もトライしては失敗を繰り返していた。
徐々に集中力が切れてきたのか、全身に張り巡らされていた魔力もすでにままならない状況になっていた。
「さて今日はこれで終わりだね。これ以上はやってもだめだ。体力以上に魔力の消費が激しいのがこの〝纏い・戦技〟だからね。」
「師匠、さすがにピーキー過ぎです。」
ついには根を上げたルーズハルトは、地面にへたり込み愚痴をこぼしていた。
肩で息をするほど疲れていたルーズハルトは、リリックに抗議する事すらままならない状況にまで陥っていた。
「だからいったろうに……今からでも遅くない、剣に変えてみないか?」
心配そうにしていたマクスウェルは、たまらず声をかけるが、ルーズハルトは無言で首を振る。
ルーズハルトは自分にとって〝纏い〟は、これ以上ない程に心地よいものに感じていた。
〝纏い〟そのものは非常に効率の良いものであった。
しかし〝纏い・戦技〟に至ってはその真逆を行くものであった。
纏う魔力を更に加速させ、一点に集中させる。
それが拳なのか腕なのか。
言葉にしてしまえば何の事はない、魔力操作の技法の一つであった。
ルーズハルトもそれに気が付き、模倣に至ったのだが、その先が簡単ではなかった。
〝纏い・剛〟を維持したまま〝纏い・戦技〟を行わないと、体中にダメージを蓄積させてしまうのだった。
つまり、ルーズハルトが感じたピーキーさは、魔力操作の難易度が極端に難しい技術だったからであった。
その為無駄な魔力消費を起こしてしまい、本来効率重視のはずの〝纏い〟で魔力欠乏を起こしかけたのだった。
マクスウェル自身そのことをリリックから聞いていただけに、ルーズハルトが心配となって声をかけていた。
リリックの言う魔力消費が激しいというのは〝纏い〟の言う技術の中でという前提条件付きの話であった。
現に何度かリリックは〝纏い・戦技〟を見本として使ってみせたが、ケロッとしていた。
ルーズハルトはそのことを理不尽と感じたが、リリックは修行不足という一言とともに豪快に笑ってみせたのだった。
それから数週間がすぎる頃、なんとか魔力の移動ができるようになりつつあるものの、未だ属性を乗せるまでは至っていなかった。
「師匠……本当にできるようになるんですか?」
「なる!!……と言いたいところだけど、1年経たずに出来るようになられたら、師匠としてメンツが立たないって。」
深いため息とともにそう漏らしたのはルーズハルトだった。
来る日も来る日もリリックの指導下のもと鍛錬を続けるルーズハルト。
だが一向に成功の兆しも見えず、不安と苛立ちだけが募っていっていたのだ。
それを慰めるかのように豪快に笑い飛ばすリリック。
何ら事態の解決にならないことで更にため息をつくルーズハルトであった。
「息抜きに自分が得意なことをしてみたらどうだい?」
「得意なこと?」
リリックはルーズハルトが何か行き詰まりを感じているように思い、軽い気持ちで言葉を発した。
ふと自分の得意なことと言われ、ルーズハルトは現代日本でのことを思い返していた。
そしてルーズハルトは一度深く息を吐きだし、再度ゆっくりと吸い込む。
周囲の音は消え始め、己に意識が集中していく。
「師匠……」
「どうした?」
意識の先にある〝何か〟に気がついたルーズハルト。
リリックもルーズハルトの変化に気が付き、仁王立ちをしたままニヤリと口角を上げた。
「そうだ!!ルーズハルト!!よく気がついた!!」
リリックは嬉しそうに声を上げる。
ルーズハルトはさらに深く集中していく。
自らの身体の中を巡るその〝何か〟の流れに意識をさらに集中させていく。
この時既にルーズハルトには周囲の声など聞こえれおらず、己の心拍の音と血液が流れる音、そしてその〝何か〟が流れる音のみの世界へと入り込んでいた。
「つか……ま……え……た!!」
突如として巻き起こる爆発的な圧力の渦。
それはルーズハルトを中心として周囲に暴力的な圧となり撒き散らされる。
「良し!!そのまま流れを感じるんだ!!その流れを自分の魔力の流れに重ねるんだ!!」
叫ぶリリックの声が聞こえたルーズハルトは、その〝何か〟に魔力を練り込んでいく。
この時不意にルーズハルトは、己の中に有るものの違和感に気がつくことができた。
違和感としては捨て置くことはできないものだったが、今は自分の魔力に反応して動き始めた〝何か〟に手一杯であり、頭の隅に追いやることにした。
その〝何か〟は徐々にルーズハルトの魔力と同調し、ゆっくりとルーズハルトの身体を覆っていった。
「そう、それが本当の〝纏い〟だ!!」
嬉々としたリリックの声が訓練場に響いたのだった。
ルーズハルトは見様見真似で〝纏い・戦技〟を試したものの、体中に張り巡らされた魔力の鎧を移動させるのはかなり難しかった。
やろうとしても途中で魔力が霧散してしまい、腕に集中させることが出来なかったのだ。
「お、早速やってみたな。そんなに簡単に出来たらだれも苦労はしないさ。これが出来てやっと初心者を脱せられるんだからな。」
自慢げに反り返りながら高笑いをするリリック。
ルーズハルトはその態度が癇に障ったのか、何度もトライしては失敗を繰り返していた。
徐々に集中力が切れてきたのか、全身に張り巡らされていた魔力もすでにままならない状況になっていた。
「さて今日はこれで終わりだね。これ以上はやってもだめだ。体力以上に魔力の消費が激しいのがこの〝纏い・戦技〟だからね。」
「師匠、さすがにピーキー過ぎです。」
ついには根を上げたルーズハルトは、地面にへたり込み愚痴をこぼしていた。
肩で息をするほど疲れていたルーズハルトは、リリックに抗議する事すらままならない状況にまで陥っていた。
「だからいったろうに……今からでも遅くない、剣に変えてみないか?」
心配そうにしていたマクスウェルは、たまらず声をかけるが、ルーズハルトは無言で首を振る。
ルーズハルトは自分にとって〝纏い〟は、これ以上ない程に心地よいものに感じていた。
〝纏い〟そのものは非常に効率の良いものであった。
しかし〝纏い・戦技〟に至ってはその真逆を行くものであった。
纏う魔力を更に加速させ、一点に集中させる。
それが拳なのか腕なのか。
言葉にしてしまえば何の事はない、魔力操作の技法の一つであった。
ルーズハルトもそれに気が付き、模倣に至ったのだが、その先が簡単ではなかった。
〝纏い・剛〟を維持したまま〝纏い・戦技〟を行わないと、体中にダメージを蓄積させてしまうのだった。
つまり、ルーズハルトが感じたピーキーさは、魔力操作の難易度が極端に難しい技術だったからであった。
その為無駄な魔力消費を起こしてしまい、本来効率重視のはずの〝纏い〟で魔力欠乏を起こしかけたのだった。
マクスウェル自身そのことをリリックから聞いていただけに、ルーズハルトが心配となって声をかけていた。
リリックの言う魔力消費が激しいというのは〝纏い〟の言う技術の中でという前提条件付きの話であった。
現に何度かリリックは〝纏い・戦技〟を見本として使ってみせたが、ケロッとしていた。
ルーズハルトはそのことを理不尽と感じたが、リリックは修行不足という一言とともに豪快に笑ってみせたのだった。
それから数週間がすぎる頃、なんとか魔力の移動ができるようになりつつあるものの、未だ属性を乗せるまでは至っていなかった。
「師匠……本当にできるようになるんですか?」
「なる!!……と言いたいところだけど、1年経たずに出来るようになられたら、師匠としてメンツが立たないって。」
深いため息とともにそう漏らしたのはルーズハルトだった。
来る日も来る日もリリックの指導下のもと鍛錬を続けるルーズハルト。
だが一向に成功の兆しも見えず、不安と苛立ちだけが募っていっていたのだ。
それを慰めるかのように豪快に笑い飛ばすリリック。
何ら事態の解決にならないことで更にため息をつくルーズハルトであった。
「息抜きに自分が得意なことをしてみたらどうだい?」
「得意なこと?」
リリックはルーズハルトが何か行き詰まりを感じているように思い、軽い気持ちで言葉を発した。
ふと自分の得意なことと言われ、ルーズハルトは現代日本でのことを思い返していた。
そしてルーズハルトは一度深く息を吐きだし、再度ゆっくりと吸い込む。
周囲の音は消え始め、己に意識が集中していく。
「師匠……」
「どうした?」
意識の先にある〝何か〟に気がついたルーズハルト。
リリックもルーズハルトの変化に気が付き、仁王立ちをしたままニヤリと口角を上げた。
「そうだ!!ルーズハルト!!よく気がついた!!」
リリックは嬉しそうに声を上げる。
ルーズハルトはさらに深く集中していく。
自らの身体の中を巡るその〝何か〟の流れに意識をさらに集中させていく。
この時既にルーズハルトには周囲の声など聞こえれおらず、己の心拍の音と血液が流れる音、そしてその〝何か〟が流れる音のみの世界へと入り込んでいた。
「つか……ま……え……た!!」
突如として巻き起こる爆発的な圧力の渦。
それはルーズハルトを中心として周囲に暴力的な圧となり撒き散らされる。
「良し!!そのまま流れを感じるんだ!!その流れを自分の魔力の流れに重ねるんだ!!」
叫ぶリリックの声が聞こえたルーズハルトは、その〝何か〟に魔力を練り込んでいく。
この時不意にルーズハルトは、己の中に有るものの違和感に気がつくことができた。
違和感としては捨て置くことはできないものだったが、今は自分の魔力に反応して動き始めた〝何か〟に手一杯であり、頭の隅に追いやることにした。
その〝何か〟は徐々にルーズハルトの魔力と同調し、ゆっくりとルーズハルトの身体を覆っていった。
「そう、それが本当の〝纏い〟だ!!」
嬉々としたリリックの声が訓練場に響いたのだった。
36
お気に入りに追加
304
あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

加護とスキルでチートな異世界生活
どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる
初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜
赤井水
ファンタジー
クロス伯爵家に生まれたケビン・クロス。
神に会った記憶も無く、前世で何故死んだのかもよく分からないが転生した事はわかっていた。
洗礼式で初めて神と話よく分からないが転生させて貰ったのは理解することに。
彼は喜んだ。
この世界で魔法を扱える事に。
同い歳の腹違いの兄を持ち、必死に嫡男から逃れ貴族にならない為なら努力を惜しまない。
理由は簡単だ、魔法が研究出来ないから。
その為には彼は変人と言われようが奇人と言われようが構わない。
ケビンは優秀というレッテルや女性という地雷を踏まぬ様に必死に生活して行くのであった。
ダンス?腹芸?んなもん勉強する位なら魔法を勉強するわ!!と。
「絶対に貴族にはならない!うぉぉぉぉ」
今日も魔法を使います。
※作者嬉し泣きの情報
3/21 11:00
ファンタジー・SFでランキング5位(24hptランキング)
有名作品のすぐ下に自分の作品の名前があるのは不思議な感覚です。
3/21
HOT男性向けランキングで2位に入れました。
TOP10入り!!
4/7
お気に入り登録者様の人数が3000人行きました。
応援ありがとうございます。
皆様のおかげです。
これからも上がる様に頑張ります。
※お気に入り登録者数減り続けてる……がむばるOrz
〜第15回ファンタジー大賞〜
67位でした!!
皆様のおかげですこう言った結果になりました。
5万Ptも貰えたことに感謝します!
改稿中……( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )☁︎︎⋆。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる