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第4章 学園生活
第26話 〝纏い・戦技〟
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「確か師匠は手に魔力を……ってうわ⁈」
ルーズハルトは見様見真似で〝纏い・戦技〟を試したものの、体中に張り巡らされた魔力の鎧を移動させるのはかなり難しかった。
やろうとしても途中で魔力が霧散してしまい、腕に集中させることが出来なかったのだ。
「お、早速やってみたな。そんなに簡単に出来たらだれも苦労はしないさ。これが出来てやっと初心者を脱せられるんだからな。」
自慢げに反り返りながら高笑いをするリリック。
ルーズハルトはその態度が癇に障ったのか、何度もトライしては失敗を繰り返していた。
徐々に集中力が切れてきたのか、全身に張り巡らされていた魔力もすでにままならない状況になっていた。
「さて今日はこれで終わりだね。これ以上はやってもだめだ。体力以上に魔力の消費が激しいのがこの〝纏い・戦技〟だからね。」
「師匠、さすがにピーキー過ぎです。」
ついには根を上げたルーズハルトは、地面にへたり込み愚痴をこぼしていた。
肩で息をするほど疲れていたルーズハルトは、リリックに抗議する事すらままならない状況にまで陥っていた。
「だからいったろうに……今からでも遅くない、剣に変えてみないか?」
心配そうにしていたマクスウェルは、たまらず声をかけるが、ルーズハルトは無言で首を振る。
ルーズハルトは自分にとって〝纏い〟は、これ以上ない程に心地よいものに感じていた。
〝纏い〟そのものは非常に効率の良いものであった。
しかし〝纏い・戦技〟に至ってはその真逆を行くものであった。
纏う魔力を更に加速させ、一点に集中させる。
それが拳なのか腕なのか。
言葉にしてしまえば何の事はない、魔力操作の技法の一つであった。
ルーズハルトもそれに気が付き、模倣に至ったのだが、その先が簡単ではなかった。
〝纏い・剛〟を維持したまま〝纏い・戦技〟を行わないと、体中にダメージを蓄積させてしまうのだった。
つまり、ルーズハルトが感じたピーキーさは、魔力操作の難易度が極端に難しい技術だったからであった。
その為無駄な魔力消費を起こしてしまい、本来効率重視のはずの〝纏い〟で魔力欠乏を起こしかけたのだった。
マクスウェル自身そのことをリリックから聞いていただけに、ルーズハルトが心配となって声をかけていた。
リリックの言う魔力消費が激しいというのは〝纏い〟の言う技術の中でという前提条件付きの話であった。
現に何度かリリックは〝纏い・戦技〟を見本として使ってみせたが、ケロッとしていた。
ルーズハルトはそのことを理不尽と感じたが、リリックは修行不足という一言とともに豪快に笑ってみせたのだった。
それから数週間がすぎる頃、なんとか魔力の移動ができるようになりつつあるものの、未だ属性を乗せるまでは至っていなかった。
「師匠……本当にできるようになるんですか?」
「なる!!……と言いたいところだけど、1年経たずに出来るようになられたら、師匠としてメンツが立たないって。」
深いため息とともにそう漏らしたのはルーズハルトだった。
来る日も来る日もリリックの指導下のもと鍛錬を続けるルーズハルト。
だが一向に成功の兆しも見えず、不安と苛立ちだけが募っていっていたのだ。
それを慰めるかのように豪快に笑い飛ばすリリック。
何ら事態の解決にならないことで更にため息をつくルーズハルトであった。
「息抜きに自分が得意なことをしてみたらどうだい?」
「得意なこと?」
リリックはルーズハルトが何か行き詰まりを感じているように思い、軽い気持ちで言葉を発した。
ふと自分の得意なことと言われ、ルーズハルトは現代日本でのことを思い返していた。
そしてルーズハルトは一度深く息を吐きだし、再度ゆっくりと吸い込む。
周囲の音は消え始め、己に意識が集中していく。
「師匠……」
「どうした?」
意識の先にある〝何か〟に気がついたルーズハルト。
リリックもルーズハルトの変化に気が付き、仁王立ちをしたままニヤリと口角を上げた。
「そうだ!!ルーズハルト!!よく気がついた!!」
リリックは嬉しそうに声を上げる。
ルーズハルトはさらに深く集中していく。
自らの身体の中を巡るその〝何か〟の流れに意識をさらに集中させていく。
この時既にルーズハルトには周囲の声など聞こえれおらず、己の心拍の音と血液が流れる音、そしてその〝何か〟が流れる音のみの世界へと入り込んでいた。
「つか……ま……え……た!!」
突如として巻き起こる爆発的な圧力の渦。
それはルーズハルトを中心として周囲に暴力的な圧となり撒き散らされる。
「良し!!そのまま流れを感じるんだ!!その流れを自分の魔力の流れに重ねるんだ!!」
叫ぶリリックの声が聞こえたルーズハルトは、その〝何か〟に魔力を練り込んでいく。
この時不意にルーズハルトは、己の中に有るものの違和感に気がつくことができた。
違和感としては捨て置くことはできないものだったが、今は自分の魔力に反応して動き始めた〝何か〟に手一杯であり、頭の隅に追いやることにした。
その〝何か〟は徐々にルーズハルトの魔力と同調し、ゆっくりとルーズハルトの身体を覆っていった。
「そう、それが本当の〝纏い〟だ!!」
嬉々としたリリックの声が訓練場に響いたのだった。
ルーズハルトは見様見真似で〝纏い・戦技〟を試したものの、体中に張り巡らされた魔力の鎧を移動させるのはかなり難しかった。
やろうとしても途中で魔力が霧散してしまい、腕に集中させることが出来なかったのだ。
「お、早速やってみたな。そんなに簡単に出来たらだれも苦労はしないさ。これが出来てやっと初心者を脱せられるんだからな。」
自慢げに反り返りながら高笑いをするリリック。
ルーズハルトはその態度が癇に障ったのか、何度もトライしては失敗を繰り返していた。
徐々に集中力が切れてきたのか、全身に張り巡らされていた魔力もすでにままならない状況になっていた。
「さて今日はこれで終わりだね。これ以上はやってもだめだ。体力以上に魔力の消費が激しいのがこの〝纏い・戦技〟だからね。」
「師匠、さすがにピーキー過ぎです。」
ついには根を上げたルーズハルトは、地面にへたり込み愚痴をこぼしていた。
肩で息をするほど疲れていたルーズハルトは、リリックに抗議する事すらままならない状況にまで陥っていた。
「だからいったろうに……今からでも遅くない、剣に変えてみないか?」
心配そうにしていたマクスウェルは、たまらず声をかけるが、ルーズハルトは無言で首を振る。
ルーズハルトは自分にとって〝纏い〟は、これ以上ない程に心地よいものに感じていた。
〝纏い〟そのものは非常に効率の良いものであった。
しかし〝纏い・戦技〟に至ってはその真逆を行くものであった。
纏う魔力を更に加速させ、一点に集中させる。
それが拳なのか腕なのか。
言葉にしてしまえば何の事はない、魔力操作の技法の一つであった。
ルーズハルトもそれに気が付き、模倣に至ったのだが、その先が簡単ではなかった。
〝纏い・剛〟を維持したまま〝纏い・戦技〟を行わないと、体中にダメージを蓄積させてしまうのだった。
つまり、ルーズハルトが感じたピーキーさは、魔力操作の難易度が極端に難しい技術だったからであった。
その為無駄な魔力消費を起こしてしまい、本来効率重視のはずの〝纏い〟で魔力欠乏を起こしかけたのだった。
マクスウェル自身そのことをリリックから聞いていただけに、ルーズハルトが心配となって声をかけていた。
リリックの言う魔力消費が激しいというのは〝纏い〟の言う技術の中でという前提条件付きの話であった。
現に何度かリリックは〝纏い・戦技〟を見本として使ってみせたが、ケロッとしていた。
ルーズハルトはそのことを理不尽と感じたが、リリックは修行不足という一言とともに豪快に笑ってみせたのだった。
それから数週間がすぎる頃、なんとか魔力の移動ができるようになりつつあるものの、未だ属性を乗せるまでは至っていなかった。
「師匠……本当にできるようになるんですか?」
「なる!!……と言いたいところだけど、1年経たずに出来るようになられたら、師匠としてメンツが立たないって。」
深いため息とともにそう漏らしたのはルーズハルトだった。
来る日も来る日もリリックの指導下のもと鍛錬を続けるルーズハルト。
だが一向に成功の兆しも見えず、不安と苛立ちだけが募っていっていたのだ。
それを慰めるかのように豪快に笑い飛ばすリリック。
何ら事態の解決にならないことで更にため息をつくルーズハルトであった。
「息抜きに自分が得意なことをしてみたらどうだい?」
「得意なこと?」
リリックはルーズハルトが何か行き詰まりを感じているように思い、軽い気持ちで言葉を発した。
ふと自分の得意なことと言われ、ルーズハルトは現代日本でのことを思い返していた。
そしてルーズハルトは一度深く息を吐きだし、再度ゆっくりと吸い込む。
周囲の音は消え始め、己に意識が集中していく。
「師匠……」
「どうした?」
意識の先にある〝何か〟に気がついたルーズハルト。
リリックもルーズハルトの変化に気が付き、仁王立ちをしたままニヤリと口角を上げた。
「そうだ!!ルーズハルト!!よく気がついた!!」
リリックは嬉しそうに声を上げる。
ルーズハルトはさらに深く集中していく。
自らの身体の中を巡るその〝何か〟の流れに意識をさらに集中させていく。
この時既にルーズハルトには周囲の声など聞こえれおらず、己の心拍の音と血液が流れる音、そしてその〝何か〟が流れる音のみの世界へと入り込んでいた。
「つか……ま……え……た!!」
突如として巻き起こる爆発的な圧力の渦。
それはルーズハルトを中心として周囲に暴力的な圧となり撒き散らされる。
「良し!!そのまま流れを感じるんだ!!その流れを自分の魔力の流れに重ねるんだ!!」
叫ぶリリックの声が聞こえたルーズハルトは、その〝何か〟に魔力を練り込んでいく。
この時不意にルーズハルトは、己の中に有るものの違和感に気がつくことができた。
違和感としては捨て置くことはできないものだったが、今は自分の魔力に反応して動き始めた〝何か〟に手一杯であり、頭の隅に追いやることにした。
その〝何か〟は徐々にルーズハルトの魔力と同調し、ゆっくりとルーズハルトの身体を覆っていった。
「そう、それが本当の〝纏い〟だ!!」
嬉々としたリリックの声が訓練場に響いたのだった。
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