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第4章 学園生活

第21話 〝英雄〟の卵

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「皆さんすみません。本日の講義はこれで終了いたします。おそらく魔力欠乏に陥った子もいるでしょう。皆さんで医務室への搬送をお願いします。」

 ハリーは自分もギリギリの状態にも関わらず、生徒の身を案じ補助講師たちに指示を出していく。
 ルーズはるととバッカスは話について行けない状況で、身動きが取れずにいた。

「バッカス君……それとルーズハルト君も、私に付いてきてください。」

 ハリーの声はいつにも増して真剣みがあった。
 その有無を言わせぬ迫力に、バッカスもルーズハルトも頷くことしかできなかった。



 ハリーが向かった先は、魔法学園の一階の職員室と1学年の教室との間付近にある生徒相談室であった。
 この学園は上から見た場合ロの字の造りとなっている。
 玄関口を入って向かって左側が生徒たちの教室。
 右側に職員室並びに上階は専門教室となっている。
 生徒相談室は玄関から見て中庭を挟んだ反対側に位置していた。
 ちなみに、ルーズハルトたちが実技訓練を行っていた訓練施設は、校舎裏にある広い敷地に数か所点在しているうちの一つだ。
 数は10か所。
 それぞれに特徴ある訓練施設となっている。

———閑話休題———

「こちらへ。」

 ハリーに促されるように生徒相談室へ入る二人。
 相談室の中央にはテーブルをはさんでソファーが設置されている。
 壁際には自動配膳システムもあり、食事や軽食、飲み物なども購入可能である。
 あくまでも購入可能。
 ハリーは二人が腰かけたのを確認すると、自信のPOINTポイントを操作し自動配膳システムからスポーツドリンクを購入してくれた。
 さすがに訓練終えて疲れていたのか、二人はありがたくそれを受け取っていた。

「まずはルーズハルト君。何があったのか教えてくれますか?」
「さっきの事ですよね?」

 ルーズハルトはバッカスとの訓練内容を説明した。
 それはバッカスが横目で確認していた内容とおおよそ違いはなく、問題が発生するようなことはなかった。
 だが一点だけ不可解なことがあった。

「気になることはありました。バッカスが魔力励起した後、魔力を循環させたんですが、その時に俺の魔力がバッカスの方に引き寄せられたんです。最初は小さい物でしたが、徐々にそれが強くなっていました。」
「やはりですか……」

 それはハリーが感じたことへの答えでもあった。
 つまり、バッカスは新たな特性を開花させた可能性があったのだ。

「今度はバッカス君に聞きます。何か変わったことはありませんでしたか?」
「え?う~ん……。あ、そうだ。途中からみんなの動きが遅くなった気がしたんですが、気のせいですよね?」

 そしてハリーの懸念は確信に変わった。
 その新たな特性についても。

「バッカス君。明日あなたには検査室に行ってもらいます。いいですね?」
「あ、え、あ、わ、わかりました……。でも先生、何を調べるんですか?」

 バッカスの疑問は当然だった。
 検査室はその名の通り、学園に関わる全ての人を対象にした検査を行う施設である。
 健康診断は言うに及ばず、普通は教会で受ける〝洗礼の儀〟すらも可能としていた。
 学園には常駐で神官職が滞在していることで可能となっていた。

「バッカス君には今一度〝洗礼の儀〟を受けてもらいます。そこで資質についても再検査を行うのです。おそらく私の考えていることが証明されるでしょう。バッカス君……君の魔法資質は【蓄魔】と【制魔】その二つのはずです。これについてはルーズハルト君は分かっていますね。」
「父さんと同じ……」

 それはルーズハルトの父親であり、〝勇者ウェルズ〟と並び称される〝英雄ルーハス〟と同じ特性だ。
 だが、一番驚きを隠せなかったのはバッカスであった。
 バッカス自身田舎の生まれで、特に何か特筆すべきことがあるはずもない、普通の人間であった。
 だがここにきて覚醒とでもいえばいいのか、新たな特性に目覚めてしまった。
 これで驚くなというほうがおかしい話でもある。

「せ、せ、先生……お、お、れ……」
「大丈夫です。それを確定させるために明日検査を行うのです。」

 あまりにも動揺しすぎて目の焦点が合っていないバッカス。
 その眼はきょろきょろと落ち着きがなく、頬には意味の分からない汗が流れ落ちていた。

「ではバッカス君は朝食後に職員室に来てください。二人とも今の話はまだ内密にしてください。無用な詮索をされるのは得策ではありません。いいですね?」
「「はい……」」

 ハリーは二人の退室を促し、話はこれで終わりとなった。
 二人は二人で違った意味で心ここにあらずといった面持ちであった。
 ルーズハルトはバッカスの心配を。
 バッカスは、これからについての心配を。
 互いに顔を見合わせてはなぜか深いため息をつく二人であった。



「まさかここで……ですが、すでに〝聖女〟と〝賢者〟二人がそろいました。ここにきて〝英雄〟……ならば〝剣聖〟と〝流星〟……それと……〝勇者〟も……。さすがに考えすぎですね。私も少し疲れているようですね。」

 一人相談室に残っていたハリーは、自分の考えを否定するように頭を振っていた。
 四半世紀前に行われた〝勇者一行〟の物語。
 〝魔王〟との闘い。
 それらすべて事実であり、現実であった。
 そしてそれらはすべて、この世界の〝理〟の一部にしか過ぎないのだ。
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