近接魔導騎士の異世界無双~幼馴染の賢者と聖女を護る為、勇者を陰から支えます!!~

華音 楓

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第4章 学園生活

第18話 魔力循環

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「では講義を始めます。皆さん、魔力励起についてはできるようになりましたね。これは基礎を行うための基礎。言わばできることが前提で魔導師としての訓練があります。次に皆さんに挑戦してもらうのが〝魔力循環〟です。ではイーラロマン君、その効果はわかりますか?」

 次の講義が始まり、ハリーの説明にバッカスは肩を落としていた。
 隣りにいたルーズハルトの耳にやっと届くかの声で『マジか……』の呟き、今にも崩れ落ちそうなほど悲壮感を漂わせていた。

 ハリーに指名されたイーラロマンとルーズハルトは一瞬視線があった。
 イーラロマンはルーズハルトをひと睨みすると、ハリーに向き直った。

「魔力励起によって高められた魔力を魔力循環によって肉体を巡らせる。その効果は2つです。一つは体を強くすること。もう一つは高速循環させることで魔法の威力・効果を高めます。」
「はい、正解です。ただし一つだけ皆さんに伝えておくことがあります。それはその説はということです。おおよそ間違いではないでしょう。魔法師の先人たちがその説を実行し、そして効果を得ていますからね。それを踏まえた上で皆さんにお願いです。今までの常識を。常に疑い、常に思考し、常に自分実行する。それが魔導師の本質です。」

 正解と言われ一瞬喜色ばんだ顔を、今度は一転して落胆の顔にしたイーラロマン。
 何をそんなに焦っているのかルーズハルトには分からなかった。
 それについて理解しているのは、教師であるハリーだけであった。

「では理論についての説明です。特に難しいことはありません。みなさんは魔力励起を行ったとき、どこからその魔力が湧いてきたか感じたはずです。その魔力を身体の内か外どちらでもいいので渦を作るイメージをしてみてください。」

 いまいち抽象的な説明に困惑する生徒たち。
 こればかりは本人の感覚でしかないため、ハリーもこう説明せざるを得なかった。
 
 そんな中一番に魔力循環をしてみせたのは、意外にもルーズハルトであった。
 これもオーフェリアとの特訓の賜物で、コントロールが上手く行かない中で試行錯誤した末、なんとかギリギリ形にできていた。
 それがハリーから制御用魔導具を受け取ったことで、容易に魔力コントロールができるようになっていたのだ。
 ただし出力そのものは大幅に下がっており、以前フェンガーを圧倒したときのような身体能力強化などは難しくなっていた。

「うん、無駄のない良い循環です。試しにそのまま足に集中させてみてください。」

 ルーズハルトはハリーに促されるように魔力循環を下半身に集中させる。
 今までの無理矢理感があった制御も、かなりスムーズにでき、ルーズハルト本人が驚いてしまった。

「そのままその場飛びを。」

 ルーズハルトは軽くのつもりで地面を蹴った。
 ダガ本人のイメージとは違い、優に2メートルは足が地面から離れていた。

「え?」

 驚きを隠せないルーズハルト。
 周りを見回しても、クラスメートたちも驚いた表情を浮かべていた。

「このように、魔力循環を制御できれば魔法を使わずとも、このくらいのことが出来るようになります。」

 百聞は一見に如かずとはこのことであろうか。
 現実を目の当たりにした生徒たちの目の色が変わった。
 我先にと魔力励起を始め、魔力循環に移行していく。
 しかし言うが易し行うは難し。
 試行錯誤するもなかなかうまく行かなかった。
 数名の生徒は成功したようで、その中には当然のようにイーラロマンも含まれていた。
 意外なところではリンドも成功していたようであった。
 成功した本人も驚いたようで、ハリーの助言を受けてその循環速度のコントロールを行っていた。



「なぁ……」
「わかってるって。」

 バッカスは例に漏れず魔力循環に失敗していた。
 ルーズハルトも乗りかかった船と、バッカスの面倒を見ていたのであった。

「バッカス、一番魔力を感じる場所はどこなんだ?」

 ルーズハルトに言われた通り魔力励起を行うと、バッカスはその出処に集中していく。
 幾分経った頃だろうか……
 やっとその場所が掴めたようで、バッカスは嬉しそうにしていた。

「やっと見つけたぁ~。丁度この辺りだね。」

 そう言って指さしていたのは胸骨の中央辺りであった。

「じゃあ、そこから体中に魔力が流れているのは感じる?」
「あぁ、それはなんとなくわかる。」

 手をグーパーと動かしたら足を動かしたり、バッカスは何故か奇妙な動きをしていた。

「じゃあ、〝螺旋〟とか〝渦巻〟のイメージはできる?」
「いや、俺はそれ知らない。」

 ルーズハルトはこのとき初めて気がついた。
 知識量の差が魔法を使うのにこれほどまで影響を与えるということに。
 どうやって伝えればいいかと悩んでいると、ハリーが助け舟を出してくれた。

「バッカス君。ルーズハルト君が言いたいことは、君がよく知るネジの形のことですよ。」
「あぁ~あれか!!あのグルグルしたやつ!!」

 ハリーのヒントにイメージが湧いたのか、バッカスはすぐに魔力の供給速度を上昇させてみせた。

「そうそう、それ。あとはその行ったきりの魔力を体に沿ってまた元の場所に戻すんだ。」
「ちょっと待って……こう……か?」

 体の端まで行き届いた魔力が、一気に戻っくる感覚。
 バッカスはこれまでに経験したことの無い感覚に戸惑いを覚えたのだった。
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