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第4章 学園生活
第11話 それぞれのルームメイト
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「いらっしゃいバイト君。君を待っていたよ?」
「どうしてここにいるんです?ルンデルハイム・フォン・ラスアータ……」
バイトが自室のドアを開けた先にいたのはルンデルハイムだった。
本来ルンデルハイムは別の寮のはずで、ここでは解放されると思っていたバイトにとってまさに青天の霹靂であった。
「つれないね。それにここではただのルンデルハイムだよ?バイト君。」
「で、そのルンデルハイム・フォン・ラスアータ様がなぜここに?」
バイトは敢えてフルネームで呼び、拒否感を示した。
それにやれやれ分かってないなとでも言いたげな態度で、首を横に振るルンデルハイム。
すでに二人の会話は成立していなかった。
「それにここにはルームメイトが居るはずですが?」
「あぁ、彼なら別な寮に行ってもらったよ。先生方にも話は通してある。それに近くにいた方が分かりあえるだろ?」
ルンデルハイムは窓枠に腰かけバイトにウィンクをして見せた。
それが余計にわざとらしいのに、なぜか様になっているので怒る気持ちが霧散していくバイト。
大きくため息をつき、あきらめた様子をうかがわせた。
「こうしてルームメイトになったんだ。これから一緒に食事でもどうだい?」
「なぁ、ルンデルハイム。君はいったい何歳なんだい?同じ9歳には見えないんだけど?」
はてと不思議そうな表情を浮かべるルンデルハイム。
会話の齟齬がバイトの思考を混乱させていく。
「おや?聞いていないのかい?イザベルは何をしてるんだか……まぁいいや。その方が面白いかな?」
「イザベル……って確か教会の……」
久々に聞いた名前にさらに混乱するバイト。
その様子をどこか愉快そうに見つめるルンデルハイム。
はたから見れば追い詰められるバイトをいじめているルンデルハイムの絵面である。
「さてひとしきり楽しんだし本題に入ろうかな?蓮田 伊織君。」
「なっ⁈」
父親の教育の賜物か、心許した者以外にはポーカーフェイスで接しているバイト。
バイトの表情に焦りの色が色濃く映る。
自分の元の名を知る者はそう多くはない。
ルーズハルトやエミリアが漏らすとも思えない。
ならば必然として答えは見えてきた。
「神様の使い……ってわけかな?」
「ご明察。では改めて自己紹介を。僕は主神【エルネス】の使い、【ルイン】。以後お見知り置きを。ここではルンデルハイムと名乗っているよ。役割は君のサポート役としてだね。イザベルはルーズハルトの。エミリアさんには……ってまだ到着してないな。転入生として入ってくるみたいだ。というわけで、君たち3人には神様からサポート役が付いているから安心してほしい。」
いきなり突拍子のない話になんとも言えないバイト。
だが少しだけはっきりしたのは、主神【エルネス】はとても心配症であるということだった。
「これから俺たちはどうしたらいいんだ?自由にっては聞いていたけど、俺は〝賢者〟、エミリアは〝聖女〟の資質持ちだ。どう考えたって〝勇者〟の資質持ちが絡んできて、面倒になるのは目に見えているだろう?」
「そうだね。間違いなく君とエミリアさんは巻き込まれるだろうね。でもそう悲観しないでいいよ。戦うはずの魔王がまだ誕生していないからね。」
一瞬転びかけたバイト。
呆れと諦めと色々言いたいことはあったが、それを飲み込んだバイト。
ルインはニコニコとした表情を崩すことはなかった。
「ところで学園内ではどっちで呼べばいいんだ?」
「もちろんルンデルハイムでお願いするよ。こう見えても僕は一応公爵家の人間だからね。」
気を取り直したバイトは、自分の那覇絵の札がぶら下げられた机に荷物を置くと、その椅子に腰掛ける。
一瞬ギジリと軋む音がして、建付けが悪いのではと思ってしまった。
「こんな場所にお貴族様が住むのはどうかと思うんだけど?」
バイトの棘満載のこ言葉にルンでルハイムは大して気にした様子はなかった。
「大丈夫さ。明後日にはこの間の家具の殆どは入れ替え予定だからね。」
呆れてものも言えないとはこの事だろうか……
バイトはこめかみを伝う汗を感じ、この学園のルールが形骸化している事実を身に沁みて感じていた。
「戻る気はないってことね。」
「よろしく頼むよバイト君。」
ルンでルハイムはそう言うと、窓枠から優雅に足を下ろしバイトへと近づき、手を差し伸べる。
バイトは一瞬ためらうも、深いため息をついたあとその手を握り返した。
なんとも不思議な友人関係の出来上がりであった。
その頃エミリアはというと……
「エミリアお姉様!!」
「お姉様!?私に妹なんて居ないよ!?」
自室に入るなり、いきなりルームメイトからお姉様呼びをされてしまった。
何がなんだかわからないエミリアは、まさに混乱の境地であった。
「いえ!!お姉様と呼ばせてくださいまし!!朝のお姉様の回復魔法の使い方、尊敬に値します!!ですので私のお姉様になってくださいまし!!」
なおも畳み掛けるルームメイトの圧にたじたじになり、最終的には〝お友達〟という形で収めることに成功はしていた。
しかしそのルームメイトの瞳には〝お友達〟に向けるものではない、何が熱い眼差しが混じり込んでいたのであった。
「どうしてここにいるんです?ルンデルハイム・フォン・ラスアータ……」
バイトが自室のドアを開けた先にいたのはルンデルハイムだった。
本来ルンデルハイムは別の寮のはずで、ここでは解放されると思っていたバイトにとってまさに青天の霹靂であった。
「つれないね。それにここではただのルンデルハイムだよ?バイト君。」
「で、そのルンデルハイム・フォン・ラスアータ様がなぜここに?」
バイトは敢えてフルネームで呼び、拒否感を示した。
それにやれやれ分かってないなとでも言いたげな態度で、首を横に振るルンデルハイム。
すでに二人の会話は成立していなかった。
「それにここにはルームメイトが居るはずですが?」
「あぁ、彼なら別な寮に行ってもらったよ。先生方にも話は通してある。それに近くにいた方が分かりあえるだろ?」
ルンデルハイムは窓枠に腰かけバイトにウィンクをして見せた。
それが余計にわざとらしいのに、なぜか様になっているので怒る気持ちが霧散していくバイト。
大きくため息をつき、あきらめた様子をうかがわせた。
「こうしてルームメイトになったんだ。これから一緒に食事でもどうだい?」
「なぁ、ルンデルハイム。君はいったい何歳なんだい?同じ9歳には見えないんだけど?」
はてと不思議そうな表情を浮かべるルンデルハイム。
会話の齟齬がバイトの思考を混乱させていく。
「おや?聞いていないのかい?イザベルは何をしてるんだか……まぁいいや。その方が面白いかな?」
「イザベル……って確か教会の……」
久々に聞いた名前にさらに混乱するバイト。
その様子をどこか愉快そうに見つめるルンデルハイム。
はたから見れば追い詰められるバイトをいじめているルンデルハイムの絵面である。
「さてひとしきり楽しんだし本題に入ろうかな?蓮田 伊織君。」
「なっ⁈」
父親の教育の賜物か、心許した者以外にはポーカーフェイスで接しているバイト。
バイトの表情に焦りの色が色濃く映る。
自分の元の名を知る者はそう多くはない。
ルーズハルトやエミリアが漏らすとも思えない。
ならば必然として答えは見えてきた。
「神様の使い……ってわけかな?」
「ご明察。では改めて自己紹介を。僕は主神【エルネス】の使い、【ルイン】。以後お見知り置きを。ここではルンデルハイムと名乗っているよ。役割は君のサポート役としてだね。イザベルはルーズハルトの。エミリアさんには……ってまだ到着してないな。転入生として入ってくるみたいだ。というわけで、君たち3人には神様からサポート役が付いているから安心してほしい。」
いきなり突拍子のない話になんとも言えないバイト。
だが少しだけはっきりしたのは、主神【エルネス】はとても心配症であるということだった。
「これから俺たちはどうしたらいいんだ?自由にっては聞いていたけど、俺は〝賢者〟、エミリアは〝聖女〟の資質持ちだ。どう考えたって〝勇者〟の資質持ちが絡んできて、面倒になるのは目に見えているだろう?」
「そうだね。間違いなく君とエミリアさんは巻き込まれるだろうね。でもそう悲観しないでいいよ。戦うはずの魔王がまだ誕生していないからね。」
一瞬転びかけたバイト。
呆れと諦めと色々言いたいことはあったが、それを飲み込んだバイト。
ルインはニコニコとした表情を崩すことはなかった。
「ところで学園内ではどっちで呼べばいいんだ?」
「もちろんルンデルハイムでお願いするよ。こう見えても僕は一応公爵家の人間だからね。」
気を取り直したバイトは、自分の那覇絵の札がぶら下げられた机に荷物を置くと、その椅子に腰掛ける。
一瞬ギジリと軋む音がして、建付けが悪いのではと思ってしまった。
「こんな場所にお貴族様が住むのはどうかと思うんだけど?」
バイトの棘満載のこ言葉にルンでルハイムは大して気にした様子はなかった。
「大丈夫さ。明後日にはこの間の家具の殆どは入れ替え予定だからね。」
呆れてものも言えないとはこの事だろうか……
バイトはこめかみを伝う汗を感じ、この学園のルールが形骸化している事実を身に沁みて感じていた。
「戻る気はないってことね。」
「よろしく頼むよバイト君。」
ルンでルハイムはそう言うと、窓枠から優雅に足を下ろしバイトへと近づき、手を差し伸べる。
バイトは一瞬ためらうも、深いため息をついたあとその手を握り返した。
なんとも不思議な友人関係の出来上がりであった。
その頃エミリアはというと……
「エミリアお姉様!!」
「お姉様!?私に妹なんて居ないよ!?」
自室に入るなり、いきなりルームメイトからお姉様呼びをされてしまった。
何がなんだかわからないエミリアは、まさに混乱の境地であった。
「いえ!!お姉様と呼ばせてくださいまし!!朝のお姉様の回復魔法の使い方、尊敬に値します!!ですので私のお姉様になってくださいまし!!」
なおも畳み掛けるルームメイトの圧にたじたじになり、最終的には〝お友達〟という形で収めることに成功はしていた。
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