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第4章 学園生活
第10話 【緑の館】
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「ようこそ新入生諸君。私はこの寮の代表で9年生のマクレガンだ。よろしく頼む。」
これがルーズハルトが衝撃を受けた第一声だった。
講義が終わり、入寮するために訪れたのがここ【緑の館】だった。
古い洋館を思わせるような建物に、ルーズハルトたちは感嘆の息を漏らす。
レンガ造りの4階建ての建物には乱雑に巻き付くツタが印象的だった。
だがよく見ると、きちんと手入れが行き届いているようで、枯れた葉や朽ちたツタなどは一切見当たらなかった。
「ザ・ファンタジー世界って感じだな。」
「そうだね。魔女の館……とまではいかないけど、賢者とかが住んでそうだよな。」
ルーズハルトとバイトの感想は、現代日本で暮らしていた時の感覚であり、この世界ではレンガ造りの建物は割と一般的だった。
田舎では木造建築もあるが、基本コンクリートに似た建材などもあり、多種多様な建物が存在している。
「なかなか鋭いね。」
バイトの言葉に反応した声があった。
洋館の入り口から数人の生徒らしき人物が姿を現した。
「すみません。驚かせましたね。私は副寮長のチャールズと言います。」
そう声をかけてきたのは小柄な生徒だった。
薄い赤色の髪が日を浴びてキラキラと輝き、その中世的な顔立ちもあり、その生徒の美に拍車をかける。
細めの体つきだが、その声から男性だというのは察することが出来た。
「バイトです。こっちがルーズハルト。後ろにいるのがエミリアです。」
「始めまして。それからその後ろにいるのは今回の入寮性で間違いないね?」
バイトと握手を交わしたチャールズは、視線をルーズハルトとエミリアを飛び越して更に後ろで並んていた生徒に向けられた。
その視線はなかなかに鋭く、小柄で中性的中を立ちには似つかわしくないものであった。
「チャールズ……品定めしないの。ごめんねみんな。副寮長のミリアよ、よろしくね?」
萎縮してしまった新入生を気遣う女性。
青味がかった銀髪がチャールズとは正反対であった。
背丈も正反対で、チャールズが不満そうにミリアを見上げていた。
性格も気さくそうで、ごめんねと向けた表情は少しこまり顔を浮かべていた。
「そんな言い方はないだろミリア。それでは私が悪者みたいに思われてしまうでしょ……」
チャールズからのジトリとした視線もお構いなしに、屈託のない笑顔を見せるミリア。
不思議とその場の空気が弛緩していくのを感じたルーズハルトであった。
「ようこそ新入生諸君。私はこの寮の代表で9年生のマクレガンだ。よろしく頼む。」
最後に声を上げたのは、寮から出てきた3人の人物の中で一際目立つ存在の男性であった。
まさに筋骨隆々。
制服を突き破らんばかりに隆起した筋肉が、存在感を猛アピールしていた。
背丈はミリアよりも更に高く、チャールズと並び立つと大人と子供といったようにも見えた。
そう考えてしまったルーズハルトにを射貫くように飛ばされた鋭い視線。
その出元は間違いなくチャールズからのものであった。
「ん?チャールズどうした?」
「何度もありません……」
チャールズの異変に気がついたマクレガンが、視線をおろしてチャールズに声をかける。
不機嫌全開でそっぽを向くチャールズは今一度ルーズハルトに視線を送り、すぐに周囲に視線を戻した。
その視線はものすごく鋭いもので、入寮早々不好を買ってしまったと肩を落とすルーズハルトであった。
それからは3人に案内されるがまま【緑の館】についての説明を受けた新入生たち。
バイトが言葉にした通り、【緑の館】はかつての〝賢者〟が住んでいた建物であった。
住んでいたと言っても、居住地としていたわけではなく、当時の国王から賜ったものであった。
賢者亡き後、【緑の館】の扱いについて色々あり、最終的には学園の拡張に伴い〝賢者〟の弟子により学園に寄贈されることとなった。
そのせいもあり、建物の至る所に見たこともないような魔導具が処々に配置されていた。
「この辺りにある魔導具には触れないようにね。って言っても、起動できた人はいないんだけどね。」
そう言って戯けていたのはミリアだった。
どうやら個人認証されており〝賢者〟以外起動すらできなかったようであった。
「なぁバイト……」
「うん……、あれには触らないようにしておく……」
さすがのルーズハルトもこれについてはまずいと感じていた。
〝洗礼の儀〟の際にもたらされた結果は〝賢者〟。
まさにこの時のために用意されていたとばかりに二人の脳裏をよぎる。
おそらくではあったがバイトが触れた場合起動していしまう恐れがあったのだ。
そう確信した二人は絶対に近づかないと心に誓ったのだった。
「とまあ、こんな感じの寮だけど気に入ってもらえたかな?」
終始案内役を務めたミリアは新入生たちを見回していた。
案内された内容に疑問点はほとんどなかったようで、質問などは出なかった。
それを確認したチャールズはほかの上級生が準備してくれていた紙の資料を新入生に配り始めた。
「今渡した資料はこの寮に関する注意事項が記載されています。各自きちんと読んで理解するように。もし分からない点があれば私たちに確認して、決して自己判断をしないように。いいですね?」
少し脅すかのような口調で話すチャールズだったが、その幼顔のせいで迫力は感じられなかった。
だがルーズハルトに向けられた視線は、いまだに鋭いものがあり深いため息をつくルーズハルトであった。
「ではその資料に載っている部屋割りを確認して各自自室へ戻ってね。それから夕食はさっきも案内した大広間に集合。では解散!!」
ルーズハルトたち三人は部屋割りを確認し、それぞれの部屋へと向かったのであった。
これがルーズハルトが衝撃を受けた第一声だった。
講義が終わり、入寮するために訪れたのがここ【緑の館】だった。
古い洋館を思わせるような建物に、ルーズハルトたちは感嘆の息を漏らす。
レンガ造りの4階建ての建物には乱雑に巻き付くツタが印象的だった。
だがよく見ると、きちんと手入れが行き届いているようで、枯れた葉や朽ちたツタなどは一切見当たらなかった。
「ザ・ファンタジー世界って感じだな。」
「そうだね。魔女の館……とまではいかないけど、賢者とかが住んでそうだよな。」
ルーズハルトとバイトの感想は、現代日本で暮らしていた時の感覚であり、この世界ではレンガ造りの建物は割と一般的だった。
田舎では木造建築もあるが、基本コンクリートに似た建材などもあり、多種多様な建物が存在している。
「なかなか鋭いね。」
バイトの言葉に反応した声があった。
洋館の入り口から数人の生徒らしき人物が姿を現した。
「すみません。驚かせましたね。私は副寮長のチャールズと言います。」
そう声をかけてきたのは小柄な生徒だった。
薄い赤色の髪が日を浴びてキラキラと輝き、その中世的な顔立ちもあり、その生徒の美に拍車をかける。
細めの体つきだが、その声から男性だというのは察することが出来た。
「バイトです。こっちがルーズハルト。後ろにいるのがエミリアです。」
「始めまして。それからその後ろにいるのは今回の入寮性で間違いないね?」
バイトと握手を交わしたチャールズは、視線をルーズハルトとエミリアを飛び越して更に後ろで並んていた生徒に向けられた。
その視線はなかなかに鋭く、小柄で中性的中を立ちには似つかわしくないものであった。
「チャールズ……品定めしないの。ごめんねみんな。副寮長のミリアよ、よろしくね?」
萎縮してしまった新入生を気遣う女性。
青味がかった銀髪がチャールズとは正反対であった。
背丈も正反対で、チャールズが不満そうにミリアを見上げていた。
性格も気さくそうで、ごめんねと向けた表情は少しこまり顔を浮かべていた。
「そんな言い方はないだろミリア。それでは私が悪者みたいに思われてしまうでしょ……」
チャールズからのジトリとした視線もお構いなしに、屈託のない笑顔を見せるミリア。
不思議とその場の空気が弛緩していくのを感じたルーズハルトであった。
「ようこそ新入生諸君。私はこの寮の代表で9年生のマクレガンだ。よろしく頼む。」
最後に声を上げたのは、寮から出てきた3人の人物の中で一際目立つ存在の男性であった。
まさに筋骨隆々。
制服を突き破らんばかりに隆起した筋肉が、存在感を猛アピールしていた。
背丈はミリアよりも更に高く、チャールズと並び立つと大人と子供といったようにも見えた。
そう考えてしまったルーズハルトにを射貫くように飛ばされた鋭い視線。
その出元は間違いなくチャールズからのものであった。
「ん?チャールズどうした?」
「何度もありません……」
チャールズの異変に気がついたマクレガンが、視線をおろしてチャールズに声をかける。
不機嫌全開でそっぽを向くチャールズは今一度ルーズハルトに視線を送り、すぐに周囲に視線を戻した。
その視線はものすごく鋭いもので、入寮早々不好を買ってしまったと肩を落とすルーズハルトであった。
それからは3人に案内されるがまま【緑の館】についての説明を受けた新入生たち。
バイトが言葉にした通り、【緑の館】はかつての〝賢者〟が住んでいた建物であった。
住んでいたと言っても、居住地としていたわけではなく、当時の国王から賜ったものであった。
賢者亡き後、【緑の館】の扱いについて色々あり、最終的には学園の拡張に伴い〝賢者〟の弟子により学園に寄贈されることとなった。
そのせいもあり、建物の至る所に見たこともないような魔導具が処々に配置されていた。
「この辺りにある魔導具には触れないようにね。って言っても、起動できた人はいないんだけどね。」
そう言って戯けていたのはミリアだった。
どうやら個人認証されており〝賢者〟以外起動すらできなかったようであった。
「なぁバイト……」
「うん……、あれには触らないようにしておく……」
さすがのルーズハルトもこれについてはまずいと感じていた。
〝洗礼の儀〟の際にもたらされた結果は〝賢者〟。
まさにこの時のために用意されていたとばかりに二人の脳裏をよぎる。
おそらくではあったがバイトが触れた場合起動していしまう恐れがあったのだ。
そう確信した二人は絶対に近づかないと心に誓ったのだった。
「とまあ、こんな感じの寮だけど気に入ってもらえたかな?」
終始案内役を務めたミリアは新入生たちを見回していた。
案内された内容に疑問点はほとんどなかったようで、質問などは出なかった。
それを確認したチャールズはほかの上級生が準備してくれていた紙の資料を新入生に配り始めた。
「今渡した資料はこの寮に関する注意事項が記載されています。各自きちんと読んで理解するように。もし分からない点があれば私たちに確認して、決して自己判断をしないように。いいですね?」
少し脅すかのような口調で話すチャールズだったが、その幼顔のせいで迫力は感じられなかった。
だがルーズハルトに向けられた視線は、いまだに鋭いものがあり深いため息をつくルーズハルトであった。
「ではその資料に載っている部屋割りを確認して各自自室へ戻ってね。それから夕食はさっきも案内した大広間に集合。では解散!!」
ルーズハルトたち三人は部屋割りを確認し、それぞれの部屋へと向かったのであった。
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