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第4章 学園生活
第9話 一年次のカリキュラム
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「次にの説明に入ります。」
ハリーはそう言うと再度手元を操作し、後方のモニターに資料を映し出した。
今度の内容はカリキュラムの詳しい説明であった。
「まずはD・Eクラスは各クラスの担任が座学を担当します。A~Cクラスはそれぞれの専門講師が担当します。これも君たちが学習するのが基礎であって、他のクラスが学習するのが応用編だということが起因します。」
一瞬差別なのではとざわつき始めたが、ハリーの説明に一応の納得を示した。
ルーズハルトはこの時思ったが、幼いんだか大人びているのか反応がいまいちわからなかった。
かくいうルーズハルトはその典型であったが、当の本人は分かっていないようだった。
「1つ目の科目は魔法基礎理論……といっても難しいことは行いません。この基礎理論を分かり易く解説した資料を基に行います。」
ハリーは手にした資料を見せていた。
一つは極厚で絶対に読みたいとは思えないような本だった。
もう一つはそれよりもかなり薄く、これだったら何とかと思えるものだ。
だが、極厚の本に比べたら薄く見えるだけであって、それなりの厚さがあった。
「二つ目は言語基礎講座。これは他国との兼ね合いもあり私たちが使っている王国語以外も覚えるようにとのことで学んでもらいます。」
「先生いいですか?」
手を挙げたのはルーズハルトに声をかけてきたバッカスだった。
「バッカス君どうしました?」
「俺田舎生まれだし他国に行くことなんてないんだけど、それでも必要なんですか?」
バッカスの質問はもっともで、ここに集まっている生徒の大半は地方の生まれだ。
その為国外に行くという発想自体持ち合わせていなかった。
ルーズハルトも同様で、ゆったりまったり父ルーハスの手伝いをして生活するんだろうなと考えていた。
「そうですね。今まではそれでよいのですが、あなたたちは魔法という資質を備えています。魔導騎士団を目指すことも容易なのです。魔導騎士団になれば他国とのかかわりあいもあります。むしろ国としてはあなたたちに期待をしているのです。」
「でもならなくてもいいんですよね?俺、ここで魔法を学んで農業に役立てたいって思ってるんです。俺土属性魔法の資質があるから、家の畑を直したり、川を直したりいろいろできるって思って……」
バッカスの言葉尻が徐々に弱くなっていく。
自分が思い描いていた未来図とはだいぶ違う世界の話になってしまっていたからだ。
だがルーズハルトはバッカスを少し見直していた。
朝の会話ぶりからするとまだまだ幼い子供だと思っていた。
だがこうやって話を聞くと、きちんと将来を見据え何をするべきか考えていたからだ。
自分の9歳の頃を考えたら雲泥の差だった。
それだけにルーズハルトは衝撃を受けたのだった。
「それも一つの選択肢です。ここでは魔法を学び、その使い方を学びます。あなた方はそれをこれから先どう生かしていくのか、この学園生活できちんと考えてください。バッカス君、素晴らしい考えです。私はあなたの考えを支持し、あなたと共に成長していくことを望みます。」
ハリーから素直に褒められたバッカスは照れ臭そうに笑みを浮かべていた。
その目には灯が宿り、やる気に満ち溢れていた。
だがそれを冷ややかな目で見る者もいた。
ルーズハルトにはそれが気がかりでならなかった。
ルーズハルトの席から反対側になる一番奥の席に座る生徒。
一時限目からその眼に力はなく、やる気が全く感じられなかったのだ。
何をするにもやる気を見せることはなく、ただ言われていることをこなす。
機械のように感じていた。
「では続きです。三つめが王国史についてです。これについてはある程度知っていると思いますので、おさらい程度だと思ってください。最後に4つ目が算術です。これはあなた方がこれから生きていくうえで必ず必要となるモノですので、まじめに受けるように。いいですね?」
「「「はい!!」」」
ハリーの念押しに、生徒たちは力強く答えた。
だがやはりここでもその生徒はやる気を見せることはなかった。
ただ流されるままに返事をしている、そのようにルーズハルトには見えたのだ。
一時になりだすとどうも視線が言ってしまい、終始ちらちらと横目で確認するほどにまでなっていた。
「座学はこのくらいですね。あとは実技ですが、D・Eクラスは冒険者に講師をお願いしています。これは基礎訓練をするということと、戦うということを学んでもらうためです。いくら訓練をしたからといって実戦で使えなければ使えないのと同じことです。ですので実戦経験豊富な冒険者の方々から学び、それを活かしてください。講師の方々の紹介は実技が始まってからになりますので、まだ先ですがね。」
そう言うとおどけて見せるハリー。
ルーズハルトはその講師が誰なのか気になって仕方がなかった。
できればマクスウェルたち【赤の隔壁】だったらいいなと少しだけ思ったのだった。
「では本日のオリエンテーションはこれで終わりです。細かなことは配布した資料に書かれていますので、各自読んでおくように。分からない点は明日また確認しますので、それまでにまとめておくように。それではお疲れさまでした。」
入学初日のバタバタとした学園生活は前途多難だろうなと深いため息をついていたルーズハルトだった。
ハリーはそう言うと再度手元を操作し、後方のモニターに資料を映し出した。
今度の内容はカリキュラムの詳しい説明であった。
「まずはD・Eクラスは各クラスの担任が座学を担当します。A~Cクラスはそれぞれの専門講師が担当します。これも君たちが学習するのが基礎であって、他のクラスが学習するのが応用編だということが起因します。」
一瞬差別なのではとざわつき始めたが、ハリーの説明に一応の納得を示した。
ルーズハルトはこの時思ったが、幼いんだか大人びているのか反応がいまいちわからなかった。
かくいうルーズハルトはその典型であったが、当の本人は分かっていないようだった。
「1つ目の科目は魔法基礎理論……といっても難しいことは行いません。この基礎理論を分かり易く解説した資料を基に行います。」
ハリーは手にした資料を見せていた。
一つは極厚で絶対に読みたいとは思えないような本だった。
もう一つはそれよりもかなり薄く、これだったら何とかと思えるものだ。
だが、極厚の本に比べたら薄く見えるだけであって、それなりの厚さがあった。
「二つ目は言語基礎講座。これは他国との兼ね合いもあり私たちが使っている王国語以外も覚えるようにとのことで学んでもらいます。」
「先生いいですか?」
手を挙げたのはルーズハルトに声をかけてきたバッカスだった。
「バッカス君どうしました?」
「俺田舎生まれだし他国に行くことなんてないんだけど、それでも必要なんですか?」
バッカスの質問はもっともで、ここに集まっている生徒の大半は地方の生まれだ。
その為国外に行くという発想自体持ち合わせていなかった。
ルーズハルトも同様で、ゆったりまったり父ルーハスの手伝いをして生活するんだろうなと考えていた。
「そうですね。今まではそれでよいのですが、あなたたちは魔法という資質を備えています。魔導騎士団を目指すことも容易なのです。魔導騎士団になれば他国とのかかわりあいもあります。むしろ国としてはあなたたちに期待をしているのです。」
「でもならなくてもいいんですよね?俺、ここで魔法を学んで農業に役立てたいって思ってるんです。俺土属性魔法の資質があるから、家の畑を直したり、川を直したりいろいろできるって思って……」
バッカスの言葉尻が徐々に弱くなっていく。
自分が思い描いていた未来図とはだいぶ違う世界の話になってしまっていたからだ。
だがルーズハルトはバッカスを少し見直していた。
朝の会話ぶりからするとまだまだ幼い子供だと思っていた。
だがこうやって話を聞くと、きちんと将来を見据え何をするべきか考えていたからだ。
自分の9歳の頃を考えたら雲泥の差だった。
それだけにルーズハルトは衝撃を受けたのだった。
「それも一つの選択肢です。ここでは魔法を学び、その使い方を学びます。あなた方はそれをこれから先どう生かしていくのか、この学園生活できちんと考えてください。バッカス君、素晴らしい考えです。私はあなたの考えを支持し、あなたと共に成長していくことを望みます。」
ハリーから素直に褒められたバッカスは照れ臭そうに笑みを浮かべていた。
その目には灯が宿り、やる気に満ち溢れていた。
だがそれを冷ややかな目で見る者もいた。
ルーズハルトにはそれが気がかりでならなかった。
ルーズハルトの席から反対側になる一番奥の席に座る生徒。
一時限目からその眼に力はなく、やる気が全く感じられなかったのだ。
何をするにもやる気を見せることはなく、ただ言われていることをこなす。
機械のように感じていた。
「では続きです。三つめが王国史についてです。これについてはある程度知っていると思いますので、おさらい程度だと思ってください。最後に4つ目が算術です。これはあなた方がこれから生きていくうえで必ず必要となるモノですので、まじめに受けるように。いいですね?」
「「「はい!!」」」
ハリーの念押しに、生徒たちは力強く答えた。
だがやはりここでもその生徒はやる気を見せることはなかった。
ただ流されるままに返事をしている、そのようにルーズハルトには見えたのだ。
一時になりだすとどうも視線が言ってしまい、終始ちらちらと横目で確認するほどにまでなっていた。
「座学はこのくらいですね。あとは実技ですが、D・Eクラスは冒険者に講師をお願いしています。これは基礎訓練をするということと、戦うということを学んでもらうためです。いくら訓練をしたからといって実戦で使えなければ使えないのと同じことです。ですので実戦経験豊富な冒険者の方々から学び、それを活かしてください。講師の方々の紹介は実技が始まってからになりますので、まだ先ですがね。」
そう言うとおどけて見せるハリー。
ルーズハルトはその講師が誰なのか気になって仕方がなかった。
できればマクスウェルたち【赤の隔壁】だったらいいなと少しだけ思ったのだった。
「では本日のオリエンテーションはこれで終わりです。細かなことは配布した資料に書かれていますので、各自読んでおくように。分からない点は明日また確認しますので、それまでにまとめておくように。それではお疲れさまでした。」
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