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第4章 学園生活
第4話 オリエンテーション
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「みなさんおはようございます。このクラスを担当するシメール・ハリーです。」
「「「「「「おはようございます!!」」」」」」
教室に響く元気な生徒の声。
その声にハリーは感慨深い思いだった。
苦節13年……
やっとのことで担任になることが出来たのだ。
この学園では講師だけで200名を超える人数を抱えていた。
9学年5クラスあり、45名だけが担任になることが出来る。
そのため講師の中で選抜試験があり、その試験に合格した者だけがその資格を有する事が出来るのだ。
そして一度担任になれば9年間はそのクラスを受け持つこととなる。
基本的には毎年9名が新たに選出されるため、その席をめぐって熾烈な争いが講師間で行われていたのだ。
その争いを潜り抜け、晴れてハリーはこの教壇に立っていた。
———閑話休題———
「え~では出席を取ります。名前を呼ばれた子はその場で挙手をしてください。ではぁ~」
それから順に名前が呼ばれ、次々と生徒たちが元気な声と共に手を挙げていく。
その様子を窓側の席から見ていたルーズハルトは、なんだか懐かしい気持ちになっていた。
子供たちの声は年相応で、無邪気ともいえるモノだった。
まあ、中には貴族家に生まれたために小さいころから大人たちに囲まれたせいもあり、斜に構えていたり、素直ではない子供いた。
だが大半の子供は地方出身なだけあり、天真爛漫とまではいかないがそれなりに子供っぽさを残していた。
「では次、ルーズハルト君。」
「はい。」
ルーズハルトが手を挙げると、何やらじっとハリーに見つめられているように感じていた。
それが何なのか分からず首をかしげていると、不意にハリーが声を上げた。
「もしかして君は……〝聖女オーフェリア〟君のご子息かな?」
その言葉に教室中がざわついた。
なぜそんな反応を示すのかルーズハルトには分からなかった。
「えっと、〝聖女〟かどうかはわかりませんが、オーフェリアという名前は俺の母親と同じです。それがどうしたんですか?」
「そうですか。どこか面影を感じます。彼女は私の魔法工学の教え子でもあるのです。」
何かを懐かしむように語るハリー。
それによって生徒たちは確信した。
ルーズハルトが〝聖女〟の息子であると。
それが何を意味するのかルーズハルトは知らず、やはり首をかしげてしまった。
ルーズハルトにとってオーフェリアは母親であるとともに、魔法の師匠でもあった。
その教えを思い出し、つい身震いしてしまう。
それほどまでにきつい修行を行っていたともいえる。
「そんなわけあるか……。〝聖女オーフェリア〟と言えば聖属性魔法の申し子。その子供がなぜEクラスなんだよ。」
ざわざわと浮足立つ教室に冷水を浴びせたのは、先ほどルーズハルトに絡んできた男子生徒であった。
納得がいかないとありありとその表情に浮かんでいた。
「イーラロマン君。どうしましたか?」
「いえ、先生。自分は思ったことを口にしたまでです。」
どこか子供とは思えないような口ぶりに、ルーズハルトは訝しむ。
さっきほどといい、なぜ自分に突っかかってくるのか見当もつかなかった。
だが、イーラロマンから向けられる視線はどこか敵愾心を持っており、ルーズハルトとしてはあまりいい気持はしなかった。
「はいはい、話はここまでです。すみませんルーズハルト君。私が余計な質問をしたばかりに。」
「いえ。」
イーラロマンからの視線は気になるものの、ハリーの謝罪を受け頭を下げて返した。
そのやり取り事態9歳の子供だと言われたら、誰しもが疑いたくなるものであった。
「それではカリキュラムについての説明です。」
そう言うとハリーは手元の機材を操作していく。
ハリーの後には現代で言うところのモニターのようなものが設置たれていた。
大きさは縦3メートル横5メートルほどだ。
それと合わせて手伝いに来ていた講師陣が、生徒一人ひとりに何かを手渡していく。
ルーズハルトも受け取ったが、それはどっからどう見てもタブレットとスマホであった。
まさかここに来てこれに出会うとは思わなかったルーズハルトは、驚きを隠せなかった。
正直な話、実家での暮らしでも家電のようなものはちらほら確認していた。
トイレも水洗で、キッチンは魔導具のコンロ。
テレビはないもののラジオのようなものも存在していた。
バイトとも話をしたことがあったが、この世界は〝電気〟のかわりに〝魔力〟が存在していて、〝科学〟は〝魔法工学〟という形になったのではないかという結論に達していた。
ただそれは昭和後期から平成前期くらいの水準だろうと思っていた。
だがここに来てタブレットとスマホが登場したことにより、その水準はルーズハルトが現代日本で過ごした頃と遜色はないと思えてきた。
「それでは行き渡りましたね。今渡したのは今後授業で使う魔導具です。貸与となりますので丁寧に扱うこと。それぞれの学生証と指紋・網膜によってロックされていますので、基本的には安全です。ですので、もし仮に無理やりロックを解除させて場合は、停学または退学処分も有り得ますので十分に注意をするように。いいですね?」
ハリーの言葉に息を呑む生徒たち。
その反応にハリーは優しく微笑む。
「心配せずともそれをしなければいいだけです。では継に説明に入ります。」
そして、オリエンテーションは進んでいったのだった。
「「「「「「おはようございます!!」」」」」」
教室に響く元気な生徒の声。
その声にハリーは感慨深い思いだった。
苦節13年……
やっとのことで担任になることが出来たのだ。
この学園では講師だけで200名を超える人数を抱えていた。
9学年5クラスあり、45名だけが担任になることが出来る。
そのため講師の中で選抜試験があり、その試験に合格した者だけがその資格を有する事が出来るのだ。
そして一度担任になれば9年間はそのクラスを受け持つこととなる。
基本的には毎年9名が新たに選出されるため、その席をめぐって熾烈な争いが講師間で行われていたのだ。
その争いを潜り抜け、晴れてハリーはこの教壇に立っていた。
———閑話休題———
「え~では出席を取ります。名前を呼ばれた子はその場で挙手をしてください。ではぁ~」
それから順に名前が呼ばれ、次々と生徒たちが元気な声と共に手を挙げていく。
その様子を窓側の席から見ていたルーズハルトは、なんだか懐かしい気持ちになっていた。
子供たちの声は年相応で、無邪気ともいえるモノだった。
まあ、中には貴族家に生まれたために小さいころから大人たちに囲まれたせいもあり、斜に構えていたり、素直ではない子供いた。
だが大半の子供は地方出身なだけあり、天真爛漫とまではいかないがそれなりに子供っぽさを残していた。
「では次、ルーズハルト君。」
「はい。」
ルーズハルトが手を挙げると、何やらじっとハリーに見つめられているように感じていた。
それが何なのか分からず首をかしげていると、不意にハリーが声を上げた。
「もしかして君は……〝聖女オーフェリア〟君のご子息かな?」
その言葉に教室中がざわついた。
なぜそんな反応を示すのかルーズハルトには分からなかった。
「えっと、〝聖女〟かどうかはわかりませんが、オーフェリアという名前は俺の母親と同じです。それがどうしたんですか?」
「そうですか。どこか面影を感じます。彼女は私の魔法工学の教え子でもあるのです。」
何かを懐かしむように語るハリー。
それによって生徒たちは確信した。
ルーズハルトが〝聖女〟の息子であると。
それが何を意味するのかルーズハルトは知らず、やはり首をかしげてしまった。
ルーズハルトにとってオーフェリアは母親であるとともに、魔法の師匠でもあった。
その教えを思い出し、つい身震いしてしまう。
それほどまでにきつい修行を行っていたともいえる。
「そんなわけあるか……。〝聖女オーフェリア〟と言えば聖属性魔法の申し子。その子供がなぜEクラスなんだよ。」
ざわざわと浮足立つ教室に冷水を浴びせたのは、先ほどルーズハルトに絡んできた男子生徒であった。
納得がいかないとありありとその表情に浮かんでいた。
「イーラロマン君。どうしましたか?」
「いえ、先生。自分は思ったことを口にしたまでです。」
どこか子供とは思えないような口ぶりに、ルーズハルトは訝しむ。
さっきほどといい、なぜ自分に突っかかってくるのか見当もつかなかった。
だが、イーラロマンから向けられる視線はどこか敵愾心を持っており、ルーズハルトとしてはあまりいい気持はしなかった。
「はいはい、話はここまでです。すみませんルーズハルト君。私が余計な質問をしたばかりに。」
「いえ。」
イーラロマンからの視線は気になるものの、ハリーの謝罪を受け頭を下げて返した。
そのやり取り事態9歳の子供だと言われたら、誰しもが疑いたくなるものであった。
「それではカリキュラムについての説明です。」
そう言うとハリーは手元の機材を操作していく。
ハリーの後には現代で言うところのモニターのようなものが設置たれていた。
大きさは縦3メートル横5メートルほどだ。
それと合わせて手伝いに来ていた講師陣が、生徒一人ひとりに何かを手渡していく。
ルーズハルトも受け取ったが、それはどっからどう見てもタブレットとスマホであった。
まさかここに来てこれに出会うとは思わなかったルーズハルトは、驚きを隠せなかった。
正直な話、実家での暮らしでも家電のようなものはちらほら確認していた。
トイレも水洗で、キッチンは魔導具のコンロ。
テレビはないもののラジオのようなものも存在していた。
バイトとも話をしたことがあったが、この世界は〝電気〟のかわりに〝魔力〟が存在していて、〝科学〟は〝魔法工学〟という形になったのではないかという結論に達していた。
ただそれは昭和後期から平成前期くらいの水準だろうと思っていた。
だがここに来てタブレットとスマホが登場したことにより、その水準はルーズハルトが現代日本で過ごした頃と遜色はないと思えてきた。
「それでは行き渡りましたね。今渡したのは今後授業で使う魔導具です。貸与となりますので丁寧に扱うこと。それぞれの学生証と指紋・網膜によってロックされていますので、基本的には安全です。ですので、もし仮に無理やりロックを解除させて場合は、停学または退学処分も有り得ますので十分に注意をするように。いいですね?」
ハリーの言葉に息を呑む生徒たち。
その反応にハリーは優しく微笑む。
「心配せずともそれをしなければいいだけです。では継に説明に入ります。」
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