33 / 97
第3章 いざ王都へ!!
第8話 すべての子らは平等である。そこには格は存在せず
しおりを挟む
ルーズハルトは先程の出来事を気にする様子はなく、すでに頭の済からすら追い出していた。
周囲を見渡す余裕さえあった。
周囲の子どもたちは時間が迫ってきていることもあり、浮つく気持ちのまま参考書などに目をどうしていた。
(あれ?皆参考書とか読んでるの?俺筆記用具しか持ってきてないや……)
と、心の声が漏れそうなほどルーズハルトは一瞬焦りを感じていた。
しかしその焦りも一瞬で、まぁいっかとばかりに、また外の景色をゆったりと眺めていた。
ところで何故ルーズハルトがここまで余裕があるかというと、ひとえにバイトの存在が大きかった。
〝本の虫〟〝貪欲〟そんな言葉がルーズハルトの中で定着してしまうほど、バイトはこの世界にのめり込んでいた。
バイトの知識欲は〝魔法学〟に留まらず〝王国史〟や〝世界史〟、はては古代語を学ぶために〝言語学〟まで及んていた。
その知識欲にエルモンドが用意した家庭教師も舌を巻くほどであった。
それに巻き込まれるように、ルーズハルトとエミリアもまた、その知識を深めていく形となったのだった。
そのお陰か、家庭教師からは「初期教育課程なら3人でトップ独占できるかもしれない」と言わせるほどであった。
「皆さん、本日は試験に来てくれて、本学園を選んでくれてありがとう。試験官を務める、基礎属性主任講師のグラム・ハラムです。」
試験時間が迫る頃、一人の男性が試験会場へ入室してきた。
恰幅もよく少し頭部が後退しているように見えるが、教師用の黒の羽織を身に纏っていた。
人懐っこそうな笑顔と片目にかけるモノクルが温和そうな空気を醸し出していた。
だがルーズハルト他数人は気がついていた。
そのモノクルの下から覗かせる視線が何かを探るように鋭いものであると。
それとこれはエルモンドのおかげであったが、そのモノクルが魔道具であることにルーズハルトは気がついていた。
魔道具【観測眼】。
その効果は唯一、魔力を観測する。
だがそれだけに効果高く、微小な魔力の動きすら感知してしまうのだ。
なぜそんな物を着けているのか不思議でならなかったルーズハルトだった。
「では本日の日程の確認です。午前は基礎学力を確認するテストを受けてもらいます。科目は〝基礎魔法学〟〝王国史〟〝言語学〟の3科目。各科目100点満点の採点です。」
家庭教師の言っていた通りの出題に少しだけ安堵してみせたルーズハルトだったが、グラハムの次の一言ですべてがぶっ飛んでしまった。
「ただし成績は各教科の最高点数で評価します。これはそれぞれの得意不得意の把握とともに、これだけは他に負けないという者への配慮も兼ねています。」
つまり、満遍なく中途半端な成績を取るより、一芸に秀でている方を取るという表れであった。
そのためか教室内からざわめきが起こる。
「質問の許可を願います。」
ざわついた教室の雰囲気をものともしない少年が挙手をしていた。
グラムはにこやかに首肯で許可を出した。
「これでは満遍なく頑張ってきた人に不公平ではありませんか?」
少年の疑問は最もであった。
むしろその質問を待っていたとさえ思えるほどグラムは更に破顔してみせた。
「うむ、君の思慮深さとリーダーとしてのお気質が見られて嬉しいよ。それについて補足しましょう。まずはこの学園……国の法として存在しています。そこには身分関係なくという文言が随所に含まれます。この入学試験も例外ではないのです。」
ますます意味がわからないと首を傾げる少年。
「つまり、砕けいていってしまえば、今試される基礎学力においてはスタートラインが違えど大した差ではないということです。農村の生まれだろうと、貴族の生まれであろうと。この学園では銅貨一枚の価値もないのです。」
これに反応を示したのは貴族出身者たちだった。
自分に価値がないと言われたように感じてしまったのだろうか、こともあろうか貴族であることを振りかざし始めたのだ。
「納得いただかなくて結構。ここはそういう場所だと理解してもらう他ないのです。君たちのお父上方もどこかの学園出身のはず。すべての学園共通の事柄であるのです。」
一部の子供以外ハッとして顔を青ざめさせていた。
初期教育で〝王国法〟を学んだものならばグラムが言っていることを理解したようだった。
〝王国教育法〟には次の事柄が記載されていた。
《すべての子らは平等である。そこには格は存在せず》
これにより学園内では身分は秘匿とされており、現に受験生の胸元の名札には名前以外記載されていなかったのだ。
「どうやら理解していただけたようだね。では続けて午後の試験について説明します。午後は魔力測定及び資質測定を行います。その後男女に分かれての身体検査を行い本日の日程は終了です。何か質問はありますか?」
グラムの話をどれほどの子どもたちがきちんと聞いていることができたのだろうか。
それほどまでに同様を隠せない様子であった。
(恐らくこれも試験ないようなんだろうな……。うん、何人かは気がついているみたいだ。なんていうか、9歳相手に意地悪すぎないか?)
それがルーズバルドの試験に対する第一印象であった。
周囲を見渡す余裕さえあった。
周囲の子どもたちは時間が迫ってきていることもあり、浮つく気持ちのまま参考書などに目をどうしていた。
(あれ?皆参考書とか読んでるの?俺筆記用具しか持ってきてないや……)
と、心の声が漏れそうなほどルーズハルトは一瞬焦りを感じていた。
しかしその焦りも一瞬で、まぁいっかとばかりに、また外の景色をゆったりと眺めていた。
ところで何故ルーズハルトがここまで余裕があるかというと、ひとえにバイトの存在が大きかった。
〝本の虫〟〝貪欲〟そんな言葉がルーズハルトの中で定着してしまうほど、バイトはこの世界にのめり込んでいた。
バイトの知識欲は〝魔法学〟に留まらず〝王国史〟や〝世界史〟、はては古代語を学ぶために〝言語学〟まで及んていた。
その知識欲にエルモンドが用意した家庭教師も舌を巻くほどであった。
それに巻き込まれるように、ルーズハルトとエミリアもまた、その知識を深めていく形となったのだった。
そのお陰か、家庭教師からは「初期教育課程なら3人でトップ独占できるかもしれない」と言わせるほどであった。
「皆さん、本日は試験に来てくれて、本学園を選んでくれてありがとう。試験官を務める、基礎属性主任講師のグラム・ハラムです。」
試験時間が迫る頃、一人の男性が試験会場へ入室してきた。
恰幅もよく少し頭部が後退しているように見えるが、教師用の黒の羽織を身に纏っていた。
人懐っこそうな笑顔と片目にかけるモノクルが温和そうな空気を醸し出していた。
だがルーズハルト他数人は気がついていた。
そのモノクルの下から覗かせる視線が何かを探るように鋭いものであると。
それとこれはエルモンドのおかげであったが、そのモノクルが魔道具であることにルーズハルトは気がついていた。
魔道具【観測眼】。
その効果は唯一、魔力を観測する。
だがそれだけに効果高く、微小な魔力の動きすら感知してしまうのだ。
なぜそんな物を着けているのか不思議でならなかったルーズハルトだった。
「では本日の日程の確認です。午前は基礎学力を確認するテストを受けてもらいます。科目は〝基礎魔法学〟〝王国史〟〝言語学〟の3科目。各科目100点満点の採点です。」
家庭教師の言っていた通りの出題に少しだけ安堵してみせたルーズハルトだったが、グラハムの次の一言ですべてがぶっ飛んでしまった。
「ただし成績は各教科の最高点数で評価します。これはそれぞれの得意不得意の把握とともに、これだけは他に負けないという者への配慮も兼ねています。」
つまり、満遍なく中途半端な成績を取るより、一芸に秀でている方を取るという表れであった。
そのためか教室内からざわめきが起こる。
「質問の許可を願います。」
ざわついた教室の雰囲気をものともしない少年が挙手をしていた。
グラムはにこやかに首肯で許可を出した。
「これでは満遍なく頑張ってきた人に不公平ではありませんか?」
少年の疑問は最もであった。
むしろその質問を待っていたとさえ思えるほどグラムは更に破顔してみせた。
「うむ、君の思慮深さとリーダーとしてのお気質が見られて嬉しいよ。それについて補足しましょう。まずはこの学園……国の法として存在しています。そこには身分関係なくという文言が随所に含まれます。この入学試験も例外ではないのです。」
ますます意味がわからないと首を傾げる少年。
「つまり、砕けいていってしまえば、今試される基礎学力においてはスタートラインが違えど大した差ではないということです。農村の生まれだろうと、貴族の生まれであろうと。この学園では銅貨一枚の価値もないのです。」
これに反応を示したのは貴族出身者たちだった。
自分に価値がないと言われたように感じてしまったのだろうか、こともあろうか貴族であることを振りかざし始めたのだ。
「納得いただかなくて結構。ここはそういう場所だと理解してもらう他ないのです。君たちのお父上方もどこかの学園出身のはず。すべての学園共通の事柄であるのです。」
一部の子供以外ハッとして顔を青ざめさせていた。
初期教育で〝王国法〟を学んだものならばグラムが言っていることを理解したようだった。
〝王国教育法〟には次の事柄が記載されていた。
《すべての子らは平等である。そこには格は存在せず》
これにより学園内では身分は秘匿とされており、現に受験生の胸元の名札には名前以外記載されていなかったのだ。
「どうやら理解していただけたようだね。では続けて午後の試験について説明します。午後は魔力測定及び資質測定を行います。その後男女に分かれての身体検査を行い本日の日程は終了です。何か質問はありますか?」
グラムの話をどれほどの子どもたちがきちんと聞いていることができたのだろうか。
それほどまでに同様を隠せない様子であった。
(恐らくこれも試験ないようなんだろうな……。うん、何人かは気がついているみたいだ。なんていうか、9歳相手に意地悪すぎないか?)
それがルーズバルドの試験に対する第一印象であった。
37
お気に入りに追加
304
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる