近接魔導騎士の異世界無双~幼馴染の賢者と聖女を護る為、勇者を陰から支えます!!~

華音 楓

文字の大きさ
上 下
32 / 97
第3章 いざ王都へ!!

第7話 入学試験当日

しおりを挟む
「うぅ~、緊張するよぉ~。どうしようルー君……」

 エミリアは朝からこの調子であった。
 本日は王立魔導学園【アグニス】に入学を目指し子どもたちにとって、運命の日と言っても過言ではなかった。
 入学試験当日。
 3人はエルモンドに伴われ、【アグニス】の門の前にやって来ていた。

「すまないが引率できるのはここまでだ。この門を超えられるのは子どもたちだけ。大人は入ることができないからね。」

 すまないという空気を纏うエルモンド。
 そんな思いを察したのか、バイトが爽やかな笑顔をエルモンドに向けた。

「父さん、気にしないで。ここからは僕たちの戦場だから。」
「そうか……そうだな。がんばれ!!」

 バイトの気遣いを感じたエルモンドは、憂う心を抑え込み真剣な面持ちで激励の言葉を口にした。
 ルーズハルトたちは気の引き締まる思いだった。
 浮ついた心は落ち着きを取り戻し、地に足がつく……そんな感覚が体中を駆け巡っていた。

「「「行ってきます!!」」」

 三人は元気良くその一歩を踏み出した。



 魔導学園の校内は、現代日本の学校とは少し違っていた。
 照明ははランタンのようなものがいくつも等間隔で壁沿いの高い位置に並んび、窓は縦にスライドしてあげるようになっている。
 ガラス自体はこの世界でも普通に普及しております、透明度は現代日本とさして変わらないレベルであった。
 
 そんな校舎の廊下の先は、いくつかの教室に分かれていた。
 教室の中や廊下には受験生らしき子どもたちが、ソワソワとした様子で話をしていた。

「じゃあ二人とも頑張って。」

 ルーズハルトはバイトとエミリアを激励する。

「うん、ルー君もね。」
「ルーズハルト、エミー頑張ろうね。」

 エミリアとバイトもそれに答えるように真剣な面持ちで頷き返した。

 今回は3人とも別々の教室での試験となった。
 試験会場に入るために校舎入り口のエントランスにデカデカと部屋割表が張り出されていた。
 各自試験番号を確認し部屋に移動していた。
 ルーズハルトたちも部屋割を確認すると、見事3人バラバラだったのだ。
 


 エミリアたちと別れたルーズハルトは、一人教室の中にいた。
 中も中で廊下同様に浮ついた空気が流れる。
 それも当たり前かとルーズハルトは感じていた。
 いま周りにいてのは9歳の子どもたちだけだ。
 そんな中で18年多く生きてきているルーズハルトは、少し浮いた感じになってしまっていた。
 リヒテルの妙に落ち着いた雰囲気に興味を示す者たちがチラホラと現れ始める。
 チラチラと横目で見る者。
 ジロリと凝視する物。
 中には薄っすらと黄色い声を漏らす者もいた。
 ルーズハルト本人は無自覚だが、あのエミリアの双子の兄である。
 見た目は確実に上位。
 そして、その落ち着いた雰囲気。
 その出自を気にするものが現れたとしても何ら不思議ではなかった。
 
「すまない。気を悪くされたら先に謝ろう。名前を教えてもらえませんか。」
 
 ルーズハルトが浮つく空気にどうしたものかと考えていた時、不意に話しかけてくる声が聞こえる。
 あまりに唐突だったものでルーズハルトは反射的に考えることなく返事をしてしまった。

「あ、ルーズハルトです。【ルイン】という農村から来ました。」
「はん、なんだ下民じゃないか。あまりの堂々とした態度に、どこぞの貴族かと心配したが……間際らしい。」

 ルーズハルトは開いた口がふさがらなかった。
 いきなりの質問といきなりの態度の急変に、思考が付いていかなかったのだ。
 本来であれば第一声から警戒し、観察するはずのルーズハルトだったが、それを怠った弊害が一瞬で現れてしまった形となったのだ。

「下民かどうかは知りませんが、初対面で失礼ではないですか?」

 ルーズハルトの言葉はもっともであった。
 だがそれは相手によりけりである。

「貴様……貴族に対して礼儀がなってないぞ?」

 いかにも〝怒ってます〟という空気を出した男の子。
 凄んでいるようではあったが、ルーズハルトには可愛らしく映ってしまった。
 これは18年の差が、悪い方に出てしまった状況だった。
 ここで少しでも怯えた空気を表に出していれば、相手のメンツも保たれたのかもしれない。
 しかしルーズハルトには微笑ましく思えてしまい、怯えるどころか和んでしまっていたのだ。
 そんな空気を察してか、その男の子のこめかみに青筋が浮かんでいるようであった。

「ほう……僕を次期【フェンガー子爵家】当主のフリードリッヒ・フォン・フェンガーと知っての態度か?」
「そうでしたか……【フェンガー子爵家】ですか……。知らなかったとは言え失礼しました。」

 ルーズハルトの余裕を持った態度が崩れることはなかった。
 それに比例してフリードリッヒは顔を真っ赤にしていた。
 〝家名〟まで持ち出して威圧しているというのに、全く響いている様子が見られなかったからだ。

 周囲からはクスクスと笑い声を必死で抑えている声が漏れ聞こえてくる。
 そのせいもありフリードリッヒはますます機嫌を悪くしてしまった。
 それに比例してルーズハルトに対する敵愾心も向上していった。

「ルーズハルト……名は覚えた。覚悟しておくことだ!!」

 そう捨て台詞を吐いたフリードリッヒは踵を返すとそのまま教室を出ていった。
 取り巻きと思われる子供たちも慌てて後追うように教室を後にした。

「なんだったんだ?」

 ルーズハルトは首をかしげるしかなかった…… 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】平民聖女の愛と夢

ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

処理中です...