上 下
27 / 97
第3章 いざ王都へ!!

第2話 【赤の隔壁】

しおりを挟む
「う、ううぉほん‼今日は喉の調子があまり良くないようだ。それじゃあ皆、出発の時間だ。王都まではおおよそ三日間の道程だ。まぁ、問題はないとは思うが護衛を頼んである。」

 そう言うと、商隊の後ろに並んでいた幌馬車と4頭の馬の世話をしていた男女に声をかけたエルモンド。
 その呼びかけに答えるように、その者たちは世話の手を一旦止めて、小走りで近寄ってきた。

「どうしたんですハウエルの旦那。」
「お前たちに私の息子とその友達を紹介しようと思ってな。」

 そう言われ納得したようで、一人の男性が最初に声を上げる。
 
「【赤の隔壁】リーダーのマクスウェルだ。よろしくな坊っちゃんたち。まあ、名前の通り農村産まれなもんでな、礼儀とかは必要最低限だが許してほしい。」

 マクスウェルと名乗った青年はそう言うとキラリと白い歯を見せて爽やかな笑みを浮かべた。
 その髪色は燃えるように紅く、昇り始めた陽の光に照らされ、一段と際立って見えた。
 旅装束の上からでもわかるほどに鍛え上げられた身体は、見た目からもその力量が垣間見られた。
 何よりも腕や顔に刻まれた傷などが、戦いをくぐり抜けた証のように見えた。

 ルーズハルトとバイトはその容姿に魅入られていた。
 いかにも冒険者然とした佇まいが、二人の心に火を付けてしまったのだ。
 目を輝かせ興奮気味の二人に、若干引き気味になってしまったマクスウェル。
 引きつった表情をなんとか誤魔化し、握手を交わす。
 
「もうマクスウェルは……。私はサブリーダーで魔法拳士のルリよ、よろしくね。あとの4人も紹介するわね。」

 ルリと名乗った女性は後ろの4人に向けて手招きをしていた。
 ルリは拳士と言う割に身体の線は細く、華奢に見えてしまう。
 その点は本人も気にしているようで、体型のことは半ば禁句になっていた。
 ソレに合わせたように小顔にタレ目が印象的で、小動物を思わせる空気感であった。
 しかしルリ的には母親譲りの青味がかった紫色の髪が自慢で、戦闘に邪魔にならないようにショートで切りそろえられていた。
 手入れの行き届いているようです、艶のある髪が女性らしさを演出していた。

「斥候のサウザーだ。」

 サウザーと名乗った男性は黒の旅装束を身にまとい、黒髪で前髪を垂らしておりその目を見ることは叶わなかった。
 一瞬でも気を抜くとその存在が希薄になりそうで、ルーズハルトは一瞬警戒をしてしまった。
 それに気がついたサウザーはニヤリと笑いルーズハルトの頭を撫でた。

「少年……、今の反応はよかった。励め。」

 近付かれることは分かっていたが、やはり反応ができなかったルーズハルト。
 だが悔しがるわけではなく、どこか嬉しさを溢れさせていた。
 冒険者の力の一端に触れられて嬉しさが爆発してしまっていたのだ。
 
「私は水魔道士のヤルラよ。よろしくね。」

 水魔道士のヤルラは、ルリとは対象的に女性としての特徴を全面に押し出していた。
 背丈はルリよりも高く、スラリと伸びた四肢は少し長めであった。
 旅装束ということもありパンツルックだったことが余計に際立たせていた。
 淡い青色の髪と知的さを演出するような黒縁メガネが、ヤルラの性格を物語っていた。

 バイトはヤルラに目を奪われていた。
 その視線の先には……
 ヤルラが下げていた一本の細い剣があった。

「あぁ、この剣が気になるの?」
「その剣……魔導具ですよね?しかもかなり精巧に造られている。」

 バイトの答えに目を丸くするヤルラ。
 そして、ヤルラはおもむろに腰から剣を外し、バイトに見せてくれた。

「君、中々目がいいわね。お察しの通りこのレイピアは魔導剣よ。ここ見てごらんなさい。」

 そう言うと剣の柄部分にハメ込まれた宝石を指さした。

「ここには魔晶石が埋め込まれているの。つまりこれも立派な魔導兵器ってわけよ。」

 初めて見る武器に興味津々といった様子のバイト。
 そんなバイトに頭を抱えそうになっていたのは、父親であるエルモンドであった。
 どうやらバイトは魔導具や魔導兵器、果ては魔方陣と、魔法に関することに興味を抱き、常日頃エルモンドにせがんでは図書を取り寄せていたようだった。
 末っ子の頼みということもあり、買い与えたことによりそれが拍車がかかり、今では9歳という年齢ながら、魔導具師の真似事まで始めてしまっていた。
 だからこそ今ではきちんと魔法を学んでほしいと、あきらめたように魔導学園への入学を許可したのだった。
 
「弓士のミッシェル。」

 ミッシェルはそう言うとすぐにマクスウェルの影に隠れてしまった。
 身長差もあり、マクスウェルと比較すると幼女に見えてしまいそうであった。
 さらには薄金髪のセミロングの髪の毛を再度ツインにまとめているせいもあり、幼さがより強調されていた。
 幼さの見え隠れするその容姿に、引っ込み思案な性格も相まって、毎回年齢を誤解されるのが当人の悩みであった。
 年齢もマクスウェルとあまり変わらない。
 そのせいもあり他のパーティーから「違法に幼女を連れまわしてる冒険者」とマクスウェルは言われることがあり、そのたびにギルド会員証ライセンスカードとドックタグを見せることことになっていた。
 
「神官のライヤットいいます。よろしゅうにな。」

 最後に名乗ったのは、どっからどう見ても神官に見えない青年だった。
 旅装束を着ていてもわかるほどに、現代日本の言葉で言い表すなら〝チャラい〟……
 誰しもがそう思ってしまうほどであった。
 鮮やかな金髪ロングと細面につり目。
 身長もマクスウェルと同等で鍛えられてはいたがガッチリとしているというより、均整がとれているという表現がしっくるくるよだった。
 そのせいもあり、大概の人間の第一印象は〝信用ならん〟であった。
 マクスウェルたちとは私立冒険者育成機関【ニュービーズ】の同期という異色の経歴の持ち主だった。
 基本的には王立魔導学園【アグニス】で魔法を習うのが神官としての基本的な流れであった。
 しかし、ライヤットは昔であった〝冒険者の神官〟にあこがれを抱き、同じ道をたどることにしたのだ。

「というわけで、よろしく頼むよマクスウェル。」

 そう言うとエルモンドはマクスウェルの腰を何度かバンバンとたたいて見せた。
 いつもの挨拶という感じでそこには信頼感が見え隠れしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

黙示録戦争後に残された世界でたった一人冷凍睡眠から蘇ったオレが超科学のチート人工知能の超美女とともに文芸復興を目指す物語。

あっちゅまん
ファンタジー
黙示録の最終戦争は実際に起きてしまった……そして、人類は一度滅亡した。 だが、もう一度世界は創生され、新しい魔法文明が栄えた世界となっていた。 ところが、そんな中、冷凍睡眠されていたオレはなんと蘇生されてしまったのだ。 オレを目覚めさせた超絶ボディの超科学の人工頭脳の超美女と、オレの飼っていた粘菌が超進化したメイドと、同じく飼っていたペットの超進化したフクロウの紳士と、コレクションのフィギュアが生命を宿した双子の女子高生アンドロイドとともに、魔力がないのに元の世界の科学力を使って、マンガ・アニメを蘇らせ、この世界でも流行させるために頑張る話。 そして、そのついでに、街をどんどん発展させて建国して、いつのまにか世界にめちゃくちゃ影響力のある存在になっていく物語です。 【黙示録戦争後に残された世界観及び設定集】も別にアップしています。 よければ参考にしてください。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...