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第2章 転生したらしい
第13話 聖女の卵
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「それで司祭様、この子の資質はどうだったんでしょうか。」
ケイトは本来の目的である、バイトの資質についてクルセウスに確認を求めた。
この世界で魔法を使えるのは当たり前すぎる事だった。
すべての生活の基盤が魔法で成り立っていると言っても過言ではなかった。
〝水を出す〟〝火をつける〟〝明かりを灯す〟
そういったすべての基礎的な部分で魔力を使い、魔導具を稼働させる。
それがのこ世界の常識であった。
つまり、魔法が使えないとなるとその生活基盤そのものに支障をきたしてしまうのだ。
これは子を持つ親としては大問題だ。
その点この3人は親から基礎教育を受けるだけあり、問題はないとオーフェリアもケイトも心配はしていなかった。
問題はその資質の部分である。
その資質如何によって、9歳から入学する学校が変わってしまうからだ。
この世界にはいくつかの属性が存在しており、〝火〟〝風〟〝水〟〝土〟の基礎4元素を基本としている。
そのほかに〝聖〟〝闇〟〝光〟〝邪〟の特化属性と呼ばれるものや、〝氷〟〝雷〟〝重力〟等と基本4属性に含まれない特殊属性も存在していた。
『魔法とは千差万別であり、人が存在し続ける限り、その人にあった属性が存在する』と偉い魔法学者が語るほど、多岐にわたっていた。
だからこそ、この国ではその教育に力を入れ〝魔導王国〟との異名を得るまでに成長していたのだ。
———閑話休題———
「バイト君は素晴らしい素質の持ち主であることは間違いないであろうな。基礎4属性はもとより、特化属性以外はほぼ使えると思っていいだろう。あとは当人の努力次第。大いに楽しみだ。」
クルセウスはニコリと微笑むと、壇上から降りていたバイトの頭を優しく撫でる。
「しかしだ、バイト君。その素質に溺れてはいけない。おそらく君は魔法でやりたいことはほぼ全てにおいて可能であろう。だが、そのせいで傷付くものもおるかもしれん。しかと心に刻み、日々を過ごすように。」
「はい!!」
自身の素質を聞いたバイトは浮かれたように目を輝かせていた。
現代日本で伊織として生きていた頃、思い描いていた世界が目の前にあるのだ。
浮かれるなという方が難しい話であった。
それを良しとしないクルセウスからの助言に、バイトは今一度気を引き締め直していた。
「次はエミリアさんかな。壇上へ上がりなさい。」
エミリアもまたバイトと同じように祈りを捧げる儀式を行う。
その様子を見ていたバイトはルーズハルトの後ろで何やら呟いていた。
母親二人はエミリアの儀式に夢中で気がついていなかったが、ルーズハルトは気が付いていた。
バイトがこの儀式の解析を行っていることに。
だがそんなことすら霞むようなことが起こり始めた。
バイトと同じようにステンドグラスが姿を変え、そしてそこには白い修道服を身にまとった女性が祈りを捧げる姿を映し出していた。
「これはこれは……蛙の子は蛙といったところか。」
「……不味いわね……」
オーフェリアの表情は暗く沈んでいた。
その理由が分からなかったルーズハルトは、なにか問題が起こったのかと気が気ではなかった。
「まさか聖女の卵の誕生も見られるとは。オーフェリアよ、世界とは因果なものだな。」
「冗談にしては笑えないわね……」
にこやかなクルセウスとは反対に優れない表情のオーフェリア。
壇上から降りてきたエミリアもまた心配になってしまった。
「エミリアさんの素晴らしい素質を持っている。聖属性は右に出るものはいないだろう。誰かを癒やし救う道を歩むかは君次第だ。だが気をつけなさい、それは自分を犠牲にしていいということではないんだ。君が傷つけはきっと誰かが悲しむ。君のお母さんのようにな。だからこそ力をつけなさい。誰も悲しませないように。それを傲慢という者も居るだろう。それすらも救ってやるという気概を持ちなさい。そうすれば君は誰よりも強い人間になれる。いいね?」
「はい!!」
クルセウスはそう言うと、バイトの時と同様に頭を撫でた。
ただ違うのはオーフェリアに視線を向けたことだった。
オーフェリアはクルセウスの視線の意味を誰よりも理解していた。
それは自分ができなかったことで、その重圧に押し潰されてしまったことだから。
だからこそステンドグラスに写った絵姿にショックを受けたのだ。
その絵姿こそ、過去の自分自身だったから。
「確かに……、因果は巡るのかもしれませんね……」
なにか憑き物が落ちたように笑みを浮かべるオーフェリア。
未だ心配そうにオーフェリアを見上げるエミリア。
オーフェリアは優しく微笑むとエミリアの頭をなでつけていた。
「エミー、明日から少しお勉強の時間を増やしましょうか。これからのあなたのためにね。ママが知っていることをあなたに伝えていかなくちゃね。」
「わたしがんばるね!!」
エミリアの満面の笑みに薄っすらと涙をこぼしたオーフェリア。
過去に何が起こったかは知らないが、その涙に答えるために、エミリアは頑張ろうと心に誓ったのだった。
「それじゃあ待たせたね。ルーズハルト君、壇上に上がりなさい。」
そしてついにルーズハルトの順番が回ってきたのだった。
ケイトは本来の目的である、バイトの資質についてクルセウスに確認を求めた。
この世界で魔法を使えるのは当たり前すぎる事だった。
すべての生活の基盤が魔法で成り立っていると言っても過言ではなかった。
〝水を出す〟〝火をつける〟〝明かりを灯す〟
そういったすべての基礎的な部分で魔力を使い、魔導具を稼働させる。
それがのこ世界の常識であった。
つまり、魔法が使えないとなるとその生活基盤そのものに支障をきたしてしまうのだ。
これは子を持つ親としては大問題だ。
その点この3人は親から基礎教育を受けるだけあり、問題はないとオーフェリアもケイトも心配はしていなかった。
問題はその資質の部分である。
その資質如何によって、9歳から入学する学校が変わってしまうからだ。
この世界にはいくつかの属性が存在しており、〝火〟〝風〟〝水〟〝土〟の基礎4元素を基本としている。
そのほかに〝聖〟〝闇〟〝光〟〝邪〟の特化属性と呼ばれるものや、〝氷〟〝雷〟〝重力〟等と基本4属性に含まれない特殊属性も存在していた。
『魔法とは千差万別であり、人が存在し続ける限り、その人にあった属性が存在する』と偉い魔法学者が語るほど、多岐にわたっていた。
だからこそ、この国ではその教育に力を入れ〝魔導王国〟との異名を得るまでに成長していたのだ。
———閑話休題———
「バイト君は素晴らしい素質の持ち主であることは間違いないであろうな。基礎4属性はもとより、特化属性以外はほぼ使えると思っていいだろう。あとは当人の努力次第。大いに楽しみだ。」
クルセウスはニコリと微笑むと、壇上から降りていたバイトの頭を優しく撫でる。
「しかしだ、バイト君。その素質に溺れてはいけない。おそらく君は魔法でやりたいことはほぼ全てにおいて可能であろう。だが、そのせいで傷付くものもおるかもしれん。しかと心に刻み、日々を過ごすように。」
「はい!!」
自身の素質を聞いたバイトは浮かれたように目を輝かせていた。
現代日本で伊織として生きていた頃、思い描いていた世界が目の前にあるのだ。
浮かれるなという方が難しい話であった。
それを良しとしないクルセウスからの助言に、バイトは今一度気を引き締め直していた。
「次はエミリアさんかな。壇上へ上がりなさい。」
エミリアもまたバイトと同じように祈りを捧げる儀式を行う。
その様子を見ていたバイトはルーズハルトの後ろで何やら呟いていた。
母親二人はエミリアの儀式に夢中で気がついていなかったが、ルーズハルトは気が付いていた。
バイトがこの儀式の解析を行っていることに。
だがそんなことすら霞むようなことが起こり始めた。
バイトと同じようにステンドグラスが姿を変え、そしてそこには白い修道服を身にまとった女性が祈りを捧げる姿を映し出していた。
「これはこれは……蛙の子は蛙といったところか。」
「……不味いわね……」
オーフェリアの表情は暗く沈んでいた。
その理由が分からなかったルーズハルトは、なにか問題が起こったのかと気が気ではなかった。
「まさか聖女の卵の誕生も見られるとは。オーフェリアよ、世界とは因果なものだな。」
「冗談にしては笑えないわね……」
にこやかなクルセウスとは反対に優れない表情のオーフェリア。
壇上から降りてきたエミリアもまた心配になってしまった。
「エミリアさんの素晴らしい素質を持っている。聖属性は右に出るものはいないだろう。誰かを癒やし救う道を歩むかは君次第だ。だが気をつけなさい、それは自分を犠牲にしていいということではないんだ。君が傷つけはきっと誰かが悲しむ。君のお母さんのようにな。だからこそ力をつけなさい。誰も悲しませないように。それを傲慢という者も居るだろう。それすらも救ってやるという気概を持ちなさい。そうすれば君は誰よりも強い人間になれる。いいね?」
「はい!!」
クルセウスはそう言うと、バイトの時と同様に頭を撫でた。
ただ違うのはオーフェリアに視線を向けたことだった。
オーフェリアはクルセウスの視線の意味を誰よりも理解していた。
それは自分ができなかったことで、その重圧に押し潰されてしまったことだから。
だからこそステンドグラスに写った絵姿にショックを受けたのだ。
その絵姿こそ、過去の自分自身だったから。
「確かに……、因果は巡るのかもしれませんね……」
なにか憑き物が落ちたように笑みを浮かべるオーフェリア。
未だ心配そうにオーフェリアを見上げるエミリア。
オーフェリアは優しく微笑むとエミリアの頭をなでつけていた。
「エミー、明日から少しお勉強の時間を増やしましょうか。これからのあなたのためにね。ママが知っていることをあなたに伝えていかなくちゃね。」
「わたしがんばるね!!」
エミリアの満面の笑みに薄っすらと涙をこぼしたオーフェリア。
過去に何が起こったかは知らないが、その涙に答えるために、エミリアは頑張ろうと心に誓ったのだった。
「それじゃあ待たせたね。ルーズハルト君、壇上に上がりなさい。」
そしてついにルーズハルトの順番が回ってきたのだった。
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